マガジンのカバー画像

帰り道などない

157
奇々怪々な怪談配信「禍話」にて語られている怖い話を、さまざまな書き手の方々がリライト(文章に再構成)しています。それらを、完全に個人の主観で「これは怖い!!」となったものだけまと… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【禍話リライト】運ぶ音の記録

 Aさんは大学生の頃、ディスカウントショップでアルバイトをしていた。業務としては倉庫内の整理・棚卸が主なのだが、その店は飲食店からの注文が非常に多く、中々に忙しかったらしい。そのためバイトの人数もかなり多く、シフトも完全な固定制だったため、一部のバイト以外とはほとんど面識がなかった。

 ある時。

 バイトから帰宅して一息ついていると、上着の胸ポケットにボイスレコーダーが入っていることに気付いた

もっとみる

【禍話リライト】第七公園

 廃墟に泊まりに行くのが趣味というKさんの体験談。

*********

 とある地域に、山の一部を切り崩して作られた団地があった。いや、山の一部だけを残して切り崩した、というのがより正確な表現かもしれない。それほど半端な部分が小山のような形で残っており、どうせなら残りの部分も切り開いてしまって団地を拡張すればいいのに、そう思う人も居たそうだ。

 その山の残った部分に、神社だかなんだかの何かを

もっとみる
【禍話リライト】『怪談手帖』より「星泥棒」

【禍話リライト】『怪談手帖』より「星泥棒」

「余寒さんの集めたお話って、片親の話がかなり多いですよね?」

聞き取りの席で、F君はいきなりそう言った。

面食らったが、言われてみればその通りである。
僕自身(怪談手帖の筆者 余寒氏)、母子家庭で育ったから、知らず共感して採用が多くなってしまうものか。
或いは、怪異の出現に心理的な不安状態が関係しているとすれば、ある程度は必然的な傾向であるかもしれない。

そんなことを小難しく並び立てていると

もっとみる
風呂場で吊るしてあるならそれは鳥よけではない話(禍話リライト/忌魅恐NEO)

風呂場で吊るしてあるならそれは鳥よけではない話(禍話リライト/忌魅恐NEO)

僕が学生の頃なんで、二〇〇〇年くらいの話ですよ。
あの頃ってまだ、カメラ付きケータイも出てきたばっかだったじゃないですか。画質も全然で。
どっか行って写真撮るときって、まだまだ普通のカメラが主流でしたよね。

同じサークルにA君って子がいて。ちょっと気が弱いタイプだったんです。
僕ら写真系のサークルで。
写真「部」じゃないってところがミソなんですよ。わかるでしょ。
要するにゆるい、半分飲みサーみた

もっとみる

禍話リライト「女と子供のビデオ」

 本当にあの、嫌がらせの可能性…誰かが悪戯で作った可能性があるんで、これ。そういう動画。



 Uさんには「本番に弱い」性質があるのだという。
 試験会場の空気にあてられて知らず知らずの間にアガってしまう。そのせいで、どんなに予習をしていても本番の試験で必ず普段ではやらないようなケアレスミスを犯してしまう。試験後に自己採点をしてみると、「どうしてこんな間違えをするんだ…?」と自分で首を傾げてし

もっとみる
禍話「祖父の隠しもの」(猟奇人)

禍話「祖父の隠しもの」(猟奇人)

 山本浩一さんは生まれも育ちも関東で、今年で40歳になる。某企業で事務の仕事をしていて、最近になって子供が小学校を卒業した。山本さんは子煩悩で、出世には興味がない。それより子供の側にいたいと周囲に明言している。しかし実は、

「これには、はっきりとした理由があるんですよ」

そう言ってこんな話をしてくれた。

 山本さんは小学生の頃、自然があふれる田舎で暮らしていた。夏には森に入って虫を捕って仲間

もっとみる
【怖い話】 幽体離脱のあと 【「禍話」リライト108】

【怖い話】 幽体離脱のあと 【「禍話」リライト108】

 幽体離脱という体験がある。
 眠っている時に体から、半透明の肉体や意識だけが抜け出て、寝ている自分を眺めていたり、部屋を俯瞰で見下ろしていたりする。
 そういう体験である。

 幽体離脱の怖い話となると、
「布団の中にいる自分のそばに黒い影がいた」
 とか、
「抜け出た自分を引っ張る手が」
 などというのがよくあるパターン、なのだが。

「そういうのじゃないんッスよねぇ」
 Xくんは言う。
「あ

もっとみる

禍話リライト:忌魅恐NEO「お茶を出された話」

 これだ、もう忌魅恐NEOだ…。



 かあなっきさんが自分と同じように実話怪談を収集している人と会話をしているときに、こんな話題が上ったという。

「もしも取材した体験者が、嘘をついていたらどうする?」

 我々のような怪談を集める者は、結局のところ「取材者を信じる」しかない。
 その上で、我々は世の中の怪談を網羅などしていないが(そもそもそんな人は恐らくこの世にいないが)、それでも話を聞い

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

某大学のオカルトサークルが取材した当時、サバゲーを趣味としていた社会人、Aさんの話。

(※オカルトサークルについては『忌魅恐 序章』を参照)

ある時、仲間内で。
今度はどこでやろうか。どこかいい場所はないか。
と、そんな話をしていたそうだ。

サバゲー用の正規のフィールドを使用すればいいのだが、毎回となると料金もバカにならない。
それに、彼らの生活圏の近場ではフィールドもそう多くはない。
する

もっとみる

禍話リライト:忌魅恐NEO「図書館に置いてあった私小説の話」

 本は選びなしゃいっ!って話なんだよね。 



 加藤よしき氏とだいたい同い年…現在30代ぐらいのBさんの体験である。

 中学生の頃。
 Bさんは別段ワルというわけでもなかったが、一時の気の迷いか、あるいは未熟さ故のイキりか…一回だけ何かしらの「おイタ」をしてしまったことがあるという。

 それを受けて、Bさんは先生方に「図書室の業務の手伝いをやれば処罰を軽くしてやる」というようなことを言わ

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

Aさんという女性の、小学校の頃の体験。

ある年のこと。
Aさんのクラスの担任教師が、変な時期に、突然別の人に変わったそうだ。

普通、担任が変わる時期といえば、概ね、学年が上がって新学期になった時だ。

しかし、その先生は、夏休み前の中途半端なタイミングで、Aさんのクラスへやって来た。

もっとも、前任の先生は若い女性だったため、
(おめでたか何かで、急に休むことになったのかな?)
と、その時の

もっとみる
禍話:走るわたし

禍話:走るわたし

普段からお酒が好きで結構な量を飲むAさんは、悪酔いこそしないものの酔っ払うのを楽しめるタイプの酒豪だ。
ところがある時から節度ある飲み方に変わっていた。健康診断でやばい数値が出て生活を改めざるを得なくなったか、いよいよ翌日までアルコールが残り起きられなくなってきたのか。
聞くと、怖いことがあったからだと言う。

一人暮らしのAさんは酔って帰ってくると、玄関先で靴を脱ぐやいなや服も全部脱ぐのがデフォ

もっとみる
禍話リライト「埋女(うずめ)」【怪談手帖】

禍話リライト「埋女(うずめ)」【怪談手帖】

体験者Aさんが、「性別を明かさないで欲しい」という条件と共に、『怪談手帖』の綴り手である余寒さんへ語った体験談。

「私自身はそれを体験してもいないし見てもいないんですよ。
だから、私にとってこれはただの”噂”なんです」

Aさんはあらかじめそのように断ってから話を始めた。
Aさんが子供のころ、周囲のごく狭い範囲で「女のお化け」が噂になったことがあった。
噂が流布した当時は、あの口裂け女が社会現象

もっとみる
腕時計【禍話リライト】

腕時計【禍話リライト】

Dくんが、悪い仲間たちと、深夜に近所にある廃マンションを訪れた時のことだ。

その廃マンションは、特にいわく等があったわけでは無いのだが、老朽化が進んでいたため、近々取り壊されることに決まっていた。
Dくんたちはその情報を聞きつけて、取り壊される前にこのマンションで遊び尽くそう、と言うことで、夜、その廃マンションを訪れたのだそうだ。
どうせ壊されるんだからと、騒いだり、暴れたりなど、好き放題やって

もっとみる