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【文学賞の受賞者年齢はどのくらい?】各賞のデビュー年齢事情をまとめました(2013年5月号特集)


実年齢は問わない

 今回、主要文学賞の過去5年の受賞者の受賞年齢を調査しましたが、昨年はある意味、あたり年で、この5年で最高齢の受賞者を出している賞がかなりありました。
 内訳を見ると、文學界新人賞(44歳)、群像新人文学賞(40歳)、すばる文学賞(47歳)、文藝賞(52歳)、小説現代長編新人賞(57歳)、小学館文庫小説賞(60歳)、『このミステリーがすごい!』大賞(54歳)、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞(67歳)、日本ホラー小説大賞(56歳)、坊っちゃん文学賞(61歳)、ちよだ文学賞(60歳)と、実に23件中11件もありました。

 2012年の受賞者の年齢は、純文学系ではそれでも40代ですが、それ以外の賞では団塊の世代がこぞって応募してきたような印象すらあります。
 平均年齢は、純文学系6賞(文學界新人賞、新潮新人賞、群像新人文学賞、すばる文学賞、文藝賞、太宰治賞)では20代後半から30代前半で、中間小説系、エンターテインメント小説系となるにつれて年齢が上がっていっています。

 最高齢は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の第5回受賞者で67歳。同賞は過去5年の平均受賞年齢でも48.8歳と2位で、高齢者の躍進が目
立ちます。この稿の冒頭で、30歳でも遅咲きと言われた時代があったと書きましたが、当時はそう言われてしまうと、20代後半で芽が出ない人は焦り、40代の人は諦めムード、そして50代以降の人は絶望的な気持ちにならざるを得ませんでした。

 しかし、70代でもデビューできると考えれば、学生さんは焦らずじっくり5年は社会人経験を積もうという気になれますし、働き盛りの方は定年後を作家人生のスタートにしてもいいわけです。夢が広がります。

高齢者であればいいか

 綿矢りさが19歳で、金原ひとみが20歳で同時に芥川賞を受賞した2004年の新人文学賞には、あの子が書けるなら私だって、というような10代、20代からの応募が殺到したそうです。

 2013年は逆に、75歳でデビューするおばあちゃんがいるのなら私だって、と一念発起する高齢者が殺到するかもしれません。
 それはさておき、受賞する高齢者とそうでない高齢者は、どこが違うでしょうか。かつては、高齢で受賞する人はなんだかんだいって何かしら文章をずっと書いてきた人か、書かなくても、類まれな読書家といった人でした。
最近はそうでもありません。文学とは縁のない人も多い。ただし、頭脳明晰、好奇心旺盛という点は外せません。逆を返せば、そういう人にはチャンスがあると言ってもいいです。年齢を感じさせない、しかし、それでいて高齢だからこそ醸せるある種の〝新しさ〟も兼ね備えた作品をものせるかもしれません。

 一つ注意点を挙げると、高齢者が等身大の自分を描いた作品を書くのはあまり得策ではないでしょう。それだけではなかなか共感を得にくいです。
 もう一つ言うと、高齢者の方は知識が豊富なだけに、物語を逸脱して知識の披歴に終始してしまいがちのようです。結果、読者に、ご高説はごもっとも、でも、物語としてはちっともおもしろくないよと言われてしまうわけです。

 蛇足ながら、ついでにもう一つ言うと、横書きで書いたり、やたらひらがなを多めにしたりといったことをしても意味がありません。理由はお分かりですね。

主要文学賞別受賞者年齢をグラフで掲載!
特集「人は何歳まで作家デビューできるか」
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※本記事は「公募ガイド2013年5月号」の記事を再掲載したものです。