ちっとも謎めいてなくたっていいから、ずっと私だけのヒーローでいて。
私にとって、彼はヒーローだった。
つまんない日々を極彩色に染めてくれた、優しくて、謎めいたヒーロー。
「謎が多いほうが面白くない?知っていくのはゆっくりでいいんだよ」
そう言った彼は、本当に謎の多い人だった。
仕事もなかなか教えてくれなかったし、名前を聞いてもはぐらかされた。いつも飄々としていて、広い空を漂う雲みたいに掴みどころがなかった。
知りたくて、知りたくて、もっと知りたくて。
のめり込むように好きになっていったんだ。
少しずつ、少しずつ知っていき、何年も何年