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夜は甘えたがり  主

ふわっと降りてきた夜が初めに触れるのは
こどもの小さなまぶた。
それから触れるのはそろそろ眠りたいと思っている
おとなのまぶた。


 ゜゜゜


真夜中なのに眠れなくて午前1時を過ぎ
2時を過ぎても眠れなくてほやほやしている。
夜中は怖いので声は出さない。
ほやほやするのはこっくりこっくりと舟を漕ぐ感じ。
眠れない夜に現れるわたしのなかのわたし。
ほやほやこっくりなほっくりさんだ。

夜はやんちゃに違いない。
いじわるされてもおちょくられても
捕まえることはできない。
おまけにほっくりさんのからだは
抑えの効かない風船のごとく
ふわふわ宙に浮いているんだ。
何かが起きそうなそんな時刻。
あるいは何かを悟るようなそんな時刻。
つーっつつと汗が首筋を伝うような
こそばゆさを感じ始めたら浮いたからだが降りてくる。
そうして徐々に使いなれたからだを取り戻してゆく。
ほっくりさんの唇は「ほらね、大丈夫だったよ」と
自慢気にかたどっている。

 
 ゜゜゜


彼の酸素濃度に目を向ける。
とろけるような顔をしばしうかがったら
吸引をして呼吸音を確かめる。
掛け布団をめくり淡い照明を頼りに
おむつを取り替える。
からだの向きを変えてクッションを挟み直す。
呼吸のリークがないことを確認したら
ほっくりさんは安心したように「少し、寝ようか。
いつでもそばにいるから、少し寝ようね」
そう言ってくれる。
彼は起きている。静かに目を開けて。

彼のおでことわたしのおでこをこつんする。
にこっと笑う。  笑ったように見える。
ほんの一瞬の表情だ。
ほっくりさんはその命ある姿を守りたい、幼いままの
忘れたくないものことを守りたい、と思ってしまう。
夢の中でも守れるのかなと思ってしまう。
ほやほや。。゜゜。こっくり。。。
               。
ほやほやこっくりこっくり。。゜ ゜。。。

それから狂いそうな時も狂った時も
倒れそうな時も倒れた時も、そこから立ち上がった時も
そんなことすべてを受け止めて日々を歩く時も
どこかにきっとある同じ人々のことを頭の片隅に
置いておきたいなと思う。
そして、わたしと君の生きる場所は
ほんとうにとてもきれいなんだ、愛が
あふれているからと思うより他はないことに
しあわせを感じているんだ。

 
 ゜゜゜


いつかくる。たしかにくるいつか。
ベッドの上に手を伸ばしてもどこにもいない夜がくる。
それは、君も同じこと。
母と子の抗えない未来。

どうか遠く、その未来が果てなく遠い
未来でありますように―


彼の傍には家族とドラえもん。
  いつでもどこでもいつまでも。


世界中のこどもたちが
健やかでしあわせであるよう
願って。
こどもの日に寄せて―


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