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『解体屋ゲン』 #9 コンビ誕生

 この時期、やっきになって爆破解体について調べていました。もちろん次の爆破解体を行うためです。せっかくのゲンさんの特技、漫画としての最大の見せ場を作り、『解体屋ゲン』を世に売り出さなくちゃいけない。ところが、調べれば調べるほど、それが不可能なことが分かってくるのです…。



法律の壁や、日本のビルが爆破解体に向いていないこと、などは以前書きました。
https://note.mu/kotonakare/n/n738245928846
ただ、それ以前の問題としてゲンさんの会社の規模では大規模工事を請け負えないし、そもそも人員が足りないのです。ゲンさん一人ではせいぜい小さなマンションを爆破するのが精一杯、ですがそんな工事に爆破を使う意味がありません。

ではどうするか。ここまでの流れとして、ゲンと慶子が組み、すなわちゼネコンのメンバーとして爆破解体工事の指揮を取るやり方が考えられます。このアイデアは魅力的です。なにしろゼネコンの組織力、資金力、積み上げてきたノウハウや人材を活かせるので、グッと現実的になります。法律の壁だってゼネコンならなんとかできるかも知れないし、少なくとも漫画に説得力を持たせられる。でも……

長期連載の企業漫画と言えば「課長 島耕作」や、グルメものですが「美味しんぼ」などが思い浮かびます。彼らは反骨精神はあっても最初から大きな組織の一員です。ホワイトカラーのエリートと言ってもいい。それに対してゲンさんは…。

原点に立ち返ります。私が想定していた読者は、一週間の労働で疲れた身体を引きずり、缶ビールとツマミと週刊漫画雑誌を買って帰る労働者だった筈です。そんな人が爆破エリートの漫画を読みたいでしょうか。

ここまで取材してきて感じたのは、現場の人たちの不満です。建設業界のピラミッド構造(孫請けどころか第5次、第6次の下請までいる)、大手による談合、長時間労働と残業、少ない休みと搾取されるだけの日給月給。バブル崩壊後、建設業は毎年縮小を続けていて、この頃の景気はよくありませんでした。

ムクムクと反抗精神が頭をもたげてきます。そう、ゲンさんは絶対にエリート路線を選んではいけない。そういうのはモー◯ングやビッ◯コミックに任せておけばいい。ゲンさんが立つべきは労働者サイドです。

旗色は明確に。なのでこの話では悪徳政治家を持ってきました。連中は自分の利益に繋がること…金なのか票なのか出世なのかは分かりませんが…以外に興味はなく、自分たちは特権階級で、なんでも思う通りにできると思っています。

普通の人なら政治家を前にして萎縮するでしょう。でも、ゲンさんは違う。誰が相手だろうといいたいことを言い、自分が正しいと思えば相手が政治家だろうとなんだろうとぶっ飛ばす。でも、ゲンさんはただ暴力を振るうだけの粗暴な男ではないのです。

冒頭のセリフがどの場面で出てくるのか、ぜひご確認ください。   <続く>





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https://note.mu/kotonakare/m/me57e73e6ac7e









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