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『解体屋ゲン』 #27 ミンチ解体(後編)

この連載を始めるに当たって、前回のMさんをはじめ何人かの業者に話を聞きましたが、ちょっと前の世代なら間違いなく暴力団や政治団体との付き合いの話を聞かされました。ほぼ毎回、聞いた話の9割以上は使えません。そもそも編集部の了解が取れないし、建設・解体業のイメージを悪くするような話はできる限り避けようと決めていたからです。でも、時には避けて通れない場合もあります。

前編はこちら

産業廃棄物処分に関しては、暴力団やその他団体の利権争いが必ずつきまといます。それだけお金になるということでしょう。

今回の話は、ゲンの昔の仕事仲間、トシが穴屋(違法産廃処分業者)との付き合いから足を洗う話です。内容は読んでいただければすぐに分かると思います。

取材を進めるうちに一つ分かってきたことがあります。これも何度か取り上げることになるのですが、よくテレビの事件報道などでどうして犯罪者に元解体業者や元建設業者といった肩書が多いのか、という問題です。

ここでは端的に結論だけ書きますが、要は建設・土木・解体業が社会からドロップアウトしてしまった人たちの受け皿になっているからだと思います。小売業、サービス業、製造業、公務員、その他なんでもいいですが、前科者を雇ってくれる会社がどれほどあるでしょうか。

肉体労働はキツくてなり手が少なく、かつ一般の人と接する機会が少ないので、そういった人たちを雇うだけの懐の深さが(良くも悪くも)あるのだと思います。うまく説明できないのですが、明文化されてないシステムとネットワークの存在を感じます。

今回の話は、そのシステムの負の部分から抜け出そうとする話です。なので上記のゲンの台詞が出てきます。法を破ることはいけない、犯罪はいけない、でももしも自分がその立場になってしまったら……トシは自分と仲間の生活を守るために法を犯しています。それはミンチ解体という目に見える分かりやすい犯罪です。

でも例えば大企業は、サービス残業という分かりづらい形で法を犯し、労働者から搾取をして莫大な利益を上げています。今日もパリッとスーツを着こなし、大手を振って歩いている役員や管理職の人たちは、自分たちが犯罪を犯している自覚はあるでしょうか。   <続く>





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