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『解体屋ゲン』 #13 似た者同士

ここからはゲンが徐々に仲間を増やしてゆく段階です。でも、ただ増やせばいいって訳じゃなくて、読者にキャラを好きになってもらい、かつ覚えてもらわなくてはなりません。幸い石井氏のキャラのかき分けはバッチリ、見た目で混同することはありません(たまに見分けが難しい漫画家さんもいますからね)。あとはこっちがしっかりキャラクター付けをしなければ…。

この回はヒデがどんな人間なのかを読者に示さなければいけないけれど、ただの自己紹介じゃ面白くもなんともない。そこでリトマス試験紙としてロクさんに登場してもらうことにしました。二人の掛け合いでお互いの色をはっきりとさせるのです。ついでに次に出てくるキャラクターの伏線も張りつつ、罵り合って喧嘩して…。それぞれの専門が違っても職人同士、きっと分かりあえるはずです。

この頃、頭の中ではここから先の布陣を考えていました。主人公のゲン、ヒロインの慶子、ご意見番のロク、ゲンの右腕となるヒデ、あとはもう一人はじけたキャラ(次に出てくる光)、ここまでが五友爆破のメンバーで、次はライバルとその社員、同時に慶子の所属するゼネコンの社員、取引先のゼネコン会社の社員etc...、一体何人のキャラを作ればいいのか……。

もう発狂しそうです。企業モノをやろうと思ったらいきなり30人くらいキャラを作らなくてはなりません。ただでさえ毎週1本のシナリオを上げるのでいっぱいいっぱいです。当時は毎週本当にギリギリで、〆切前日は徹夜、下手すると2日間完徹、漫画家さんならともかく、原作者がこんなに遅くてどうするんだと情けなくなりますが、どうしても早く書けません。

それでもどうにかこうにか〆切をアップすると、翌日は虚脱状態で人としてまったく使い物になりません。〆切日に間に合わなくて翌日までズレこむと1日ロス、翌日は使い物にならなくて2日ロス、すると次の話は5日間しか持ち時間がなく、ここに取材が入り、新しいネタ探し、資料探しが入るとシナリオに掛けられる時間はせいぜい3日、とてもじゃないけど間に合わないので最初から徹夜……。こうなると負のデフレ・スパイラルです。

前回の疲れが抜けきれずスタミナドリンクに頼り、ストレスが溜まって煙草が増え(確かこの年まで喫煙してました)、気ばかり焦って空回りして、集中してるつもりなのに意識が朦朧としてまったく進みません。ついつい現実逃避してDVDに逃げたりして翌週は2日遅れ、持ち時間はさらに減り……ああこうやって週刊作家は身体を壊してゆくのか……真面目で繊細な人ほど耐えられないかも知れません。

でも、原作者は絶対に弱音は吐けないし、遅れられません。なにしろ世の中には話作りも作画も自分でする週刊連載作家さんもいるのです。本当にどんな強心臓してるんだと(これは今でも)思います。このままでは死んでしまう…。

                              <続く>






ちょっと余談ですが、確かこの頃にキャラの名前のリズムを大事にしようと決めた記憶があります。男性陣は覚えやすい2文字「ゲン、ヒデ、ロク、トシ、ゴン」、女性陣は柔らかい3文字「ケイコ、ユウカ、ヒカル、ヒデミ」…といった感じです。本名は長くても愛称は短くします。


ゲン「おいヒデ!」
こんな感じで、誰かに呼びかける時に座りがいいのです。







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