活字を浴びる日。
年に数回かかる病がある。
「活字読まないと死ぬ病」とでも言おうか、とにかく本が読みたくて読みたくてたまらない状態に陥る。
今年は年始早々この病が1ヶ月続いた。
1月に読んだ本は17冊。
これは過去の私対比で相当多い冊数。
1冊しか読まない月もある中で、この数字はかなりの快挙だろう。
ジャンルもバラバラで、小説から子供向けの教育本、エッセイや日記、ZINEに絵本、自己啓発本から難民問題まで幅は広すぎるくらい広い。
目につく興味がある本、信頼できる方にお勧めいただいた本を片っ端から読んで読んで読み倒している。
ずっと本をめくっていると、目から入った活字たちがそのまま血管に溶けこんで心臓から肺までぐるりと循環するような感覚に陥る。
酸素と同じで、活字を吸収し続けないと身体が止まってしまうような錯覚。
月の中頃には腰を痛めて会社を一日半ほど休んだ。早退してベッドに倒れ込んだ私は、これ幸いとばかりにベッドサイドの積読タワーをいじり倒して過ごした。まるで本を読みたいがために身体が勝手に壊れたかのようで、病の深さに少し恐れ慄いた。
この状態だと、半分読んで残りは明日の楽しみに、ということができなくなる。
読み切らないと気持ちが悪い。
本が読みたい時はお酒の量も減る。健康だ。
私はアルコールが入ると読書ができない。記憶を失いやすいので、次の日にどこまで読んだのかわからなくなってしまう。栞のページを開いても、前後の内容がわからない。
時々バーなどでお酒片手に読書を楽しむ方の話も聞くけれど、羨ましいったらない。そんなかっこいい読書、私もしてみたい。できんけど。
そんなわけで家のベッドやカフェが主に読書の場だけれど、私にはもうひとつ大切な読書の時間がある。
3月クララさんの読書会「READING GHOSTS」。毎月どこかの金曜日に、TOUTEN BOOKSTOREで開催されているイベント。
いつも仕事のシフトが合うかドキドキしているのだけど、1月はぴったし早番の日だったので参加できる喜びで内心小躍りした。
読書会というと、みんなで同じ本を読んでそれについて語り合う…というのが多いイメージ。
でもクララさんの読書会は、みんな読みたい本をそれぞれが好きに読む。
まるまる2時間、自分と自分の本だけの時間を味わえる。読もう読もうと後回しにしていた本、一気に読むのを楽しみにしていた本、なんならTOUTENさんで今買いました、と言う本まで。
金曜の仕事終わりに扉をくぐると、店主の古賀さんが笑顔で迎えてくれる。
大好きなホットジンジャーエール、読書会の時だけ食べられるスパイシィなカレーパンを持って2階へ向かう。
ちょっと緊張する角度の階段を上がりきると、笑顔のやさしいクララさんが待っていてくれる。
好きな席で、好きな本を、好きなペースで読む。
時々パンを食べて、ジンジャーエールをちびちび飲む。時計を見ると、あっという間に針が進んでいることにびっくりしてしまう。
2時間の読書タイムが終わったら、参加した人みんなで自分が持ってきた本について話す。
知ってる本も知らない本もある。
全く興味のない本でも、それを紹介してくれる人の話を聞くと「ちょっと見てみよっかな…」という気がわいて、気づけばスマホにメモをとっている。
クララさんも、みんなも、どんな話をしても受け止めてくれる。話し下手でも、うまく言葉が出てこなくても、大丈夫。みんなが助けてくれる。みんなの話を聞くだけでもうきうきして、どきどきして、心があったまる。
なんてやさしい空間。笑いが止まらない空間。帰るのが惜しくなる空間。ほんとうは毎月行きたい。次回もどうか、休みか早番でありますようにと毎回願う。
早いものでもうカレンダーは2月。
病は少し落ち着いて、ペースは緩やかになったけど、また今日も1冊読み終わった。
願わくば、ずっと病に臥せっていたい。そしてこの世の本をなるべくなるべく読み尽くしてから召されたい。
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