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恋って、滑稽で利己的。私はセーヌ川で愛の南京錠は付けられないし。

恋多き乙女、恋に散る。

落とした消しゴムを拾って、埃を払ってから渡してくれた女の子
数学だけ得意な女の子
いつも笑っているのに、ふとした瞬間に遠くへ向かって悲しい目をする女の子

彼女達の心遣いとか、得意なもの、切なさに、いちいち心を奪われていたのよ。この世には、魅力的で可憐な女の子があまりにも多い。

■恋って綺麗だし滑稽だし
よく「恋をすると人は変わる」って言うじゃない。綺麗になったり魅力的になったりすると言われるじゃない。恋って魔法みたいに宣伝されてるじゃない。恋は映画にも小説にもなるし、美しく仕上がっているじゃない。パリはセーヌ川が似合う恋、東京の夜景が混じる恋、もう、そんなロマンチックな恋、どこに落ちてるの!え、降ってくるの?

ともかく、私は違う。恋をすると、おぞましい人間になる。相手の時間や唇を奪いたくなる。自分の都合のいい妄想の世界に相手を登場させて、相手を勝手に私の世界のプリンセスにする。そして私は無理やりプリンセスと結婚する。もう、そんなのほとんど犯罪。
そして一番最悪なのは、恋と深夜のコラボレーション。夜が更け、恋心が最高潮に達すると、嘘みたいに恥ずかしい文字の羅列…まあポエムというものを、書き始める。翌朝、赤より紅い色を顔に浮かべながら必死でポエムを消しているんだから。同じ人間のする行動じゃない。

もしかして私が思っている恋と世間の恋って違うのか。私の恋って、利己的だし、とっても滑稽。恋している時の私はあまり好きじゃない。恋しない時の自分の方が自由に飛ぶ羽を持っている。

■恋敗れて尚、滑稽
恋している時もそうだけど、失恋した時なんて最悪に滑稽。
人間は今を生きてるのに、ずっと別れた瞬間の事を思い出しては泣き叫ぶのよ。過去を想って泣いていいのは、その過去が美しい時だけだよ。悲惨な過去をほじくりかえして泣くだなんて、もうバカみたい。
挙句の果てに最悪だった彼女との思い出すら美化し始めるのよ。あの頃に戻りたいなんか思って彼女のSNSを見ては、新しい彼女のプリンスの気配にまた泣きわめくの。バカみたい。本当に失恋した時の私、バカみたい。

■恋なんて
恋なんてしなきゃいいのに。している間も気持ち悪いし、それが成就しなかったらもっと気持ち悪いモンスターになるのに。
私ったらなんで恋を繰り返す。私には映画のような恋は出来ない。せいぜい高円寺のガード下で好きな女の子と安酒飲むくらい。
笑いながら、赤提灯の灯る居酒屋で、ホッピー飲みながら言う。

「もっと飲みたい、林檎となら。」
「やだあんた、それってつまり、I LOVE YOUよ。」
「そう、高円寺安酒とあなた、それが私の愛してる。」

映画みたいに綺麗。セーヌ川も流れていなければ、川のせせらぎどころか、二人の会話を邪魔するくらいの電車の轟音がする。私達はセーヌ川に架かる橋の柵に、愛の南京錠で二人の秘密を封じ込め、その鍵をセーヌ川に捨てる事は出来ない。

でも今彼女は、高円寺の路地裏の落書きされつくした壁に、私の名と彼女の名を連ねて書いた。
「秘密だよ」
そう言って彼女は2件目の居酒屋を探す。

綺麗じゃない恋、私なりの恋、私の世界では一番輝く、高架下の愛してる。

恋心なんて人それぞれでいいんだ。これが私の恋。

これからもどんと来いや、いろんな恋。