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タオル一枚されど

デイサービスには、入浴に必要なタオルを持ってきてもらう。

全部で三枚。脱衣所で椅子に座るときお尻の下に敷くタオル。入浴中に体を洗うタオル。そして体を拭くバスタオル。このタオル3点セットは必ず持ってきてほしいもの。着替えなどは都度必要なときに入れてきてもらえば大丈夫だ。

このタオル。このごく普通のタオルたちが、大騒動に発展するのもデイサービスの特徴かもしれない。

特殊なタオルなのか。いや違う。新聞を契約したときに記念品でもらう白のタオル。百円均一で帰る白のタオル。皆同じようなタオルを持ってくるからややこしくなる。

施設の規模によるが、デイサービスのお風呂は銭湯のように同時に何人も入る大浴場の設計になっている場合がある。効率よく入浴介助をするために、椅子の配置や洗面台のつくり、動線設計がなされていている。
個浴でひとりの利用者さんに対しひとりの介護職員が対応できればいいのだが、大浴場の場合そうはいかない。
職員は役割が決められていて、誘導専門・着脱専門・体を洗う専門と人員配置が決められ、ある種流れ作業のような形、入浴のひとつの工程だけ関わるようなスタイルになっている。

利用者さんは浴室に体を洗うタオルを持って入ってもらうのだが、このタオルが行方不明になること、他の利用者さんのカバンに入ってしまうことが結構起こる。
体を洗った後、浴室に忘れて出て行ってしまったり、利用者さんが入れ替わった時に渡し間違えがあったりと、同じようなタオルばかりなので一度カバンにしまってしまうと、もうわけがわからなくなる。
タオル一枚一枚に名前を書いてもらっている。何度も確認する。しまった人と確認した人のダブルチェックを行なっている。

でも、

タオルが行方不明になってしまう。もう、タオルが意思を持って姿を隠したり、人のカバンに紛れ込んだりしているのではないかと思うほど。いや実際はヒューマンエラーでしかないのだが「このタオル誰の?」っていうやり取りは、いままで2万回ほど聞いてきた。ぼくも何回か言った。

たかがタオル。されどタオル。タオル一枚で無くすデイサービスの信用。タオル一枚で烈火のごとく鬼電クレーム。タオル一枚を届けに走り、タオル一枚の報告書を書く。タオル一枚で残業。タオル一枚、タオル一枚…。

警察犬を雇えばいいのかな。巨大扇風機で体を乾かせばいいのかも。南国リゾートのようにして服を着ないデイサービスっていうのはどうだろう。

勝手な妄想していたら汗をかいていた。ぼくは首に巻いたタオルで汗を拭いた。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。