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舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~ミライへの伝言』その3 キャスティングの章

『ミライへの伝言』のプロットを段階的に書きあげた、という話を前回はさせてもらった。プロットを書いたのだから、次は脚本執筆の話になるだろう……と思うかもしれないが、今回はキャスティングの章、とさせてもらうことにした。

ミライへの伝言時のヒロイン五名(とエト)

とはいっても、D.C.IIIの原作者はあくまでCIRCUSさんだし、劇団飛行船の制作さんや演出の市村啓二さんのようにオーディションに絡むわけでもない。演者さんに関して、僕は大して口出ししていない。
新キャストに関しては「こんな方が候補に挙がってます」という情報を制作さんから受けて、脚本担当および原作ゲームのメインライターとして、イメージに合うか合わないか、程度の意見を少々、述べさせてもらったくらいだ。

では、なぜ「キャスティングの章」なのか? と言えば、「配役」するためには「役」が必要だからだ。

前作『君と旅する時の魔法』の登場人物は影ナレの清隆も含めて11名、プラスアンサンブル1名で、出演者としては12名だった。
イアン・セルウェイは本来、当選時の演説をボイスのみで表現する予定だった。だから、美琴との絡みも黒木美紗子さんの一人芝居(美琴劇場)だったわけで、実際に演者が登場して演じるシーンになったのはひとえに篠原ありささんの実力やルックス、演出の市村さんの機転によるものだ。

君と旅する時の魔法の出演者12名

一方、『ミライへの伝言』では何人役者が必要なのか。当然のことながら、僕が執筆作業に入る前にそこが争点になった。

リッカ・グリーンウッド、葛木姫乃、シャルル・マロース、サラ・クリサリス、陽ノ本葵といったヒロイン5名と葛木清隆は確定。
風見鶏編をベースにすることが決まっていたので、江戸川耕助、江戸川四季、杉並といったおなじみの面々に加えて、五条院巴、メアリー・ホームズ、イアン・セルウェイは必要。
それに今作の狂言回し的キーパーソンとしてサクラギが必須。

この時点で既に13名。前作の12名を超えている。

そう。議題にあがったのは、エドワード・ワトスンと瑠璃香・オーデットを舞台上に登場させるべきか否か、という点だ。

『D.C.III~ダ・カーポIII~』本編である風見鶏編の特徴の一つとして、「耕助&四季」「メアリー&エドワード」「イアン&瑠璃香」といった具合にメインのサブキャラがツーマンセルになっていることが挙げられる。
この各二人組による掛け合いが、王立ロンドン魔法学園の日常パートを支えているといっても過言ではない。そういう意味では、風見鶏編を舞台上に忠実に再現するためには、エドワードも瑠璃香も不可欠な存在だ。
だが、出演者を増やせばそれだけ予算も跳ね上がる。ただでさえ前作より1人多い。さらに2人増やすとなればなおさらだ。
劇場的にも楽屋的にも、ニッショーホールや飛行船シアターの規模だとギリギリなのかも知れない(大きな劇場で風見鶏の一般生徒たちが大量にアンサンブルとして登場し歌って踊る、みたいなのも面白いかもしれないがw)。

予科1年B組と1年C組を表現するためには、メアリーとイアンがいれば物語の主筋的には事足りるかもしれない。余計な掛け合いも減り、ネックであった上演時間の短縮にも繋がるだろう。だが、それでD.C.IIIといえるだろうか?
あるいはC組という要素をマスターの巴一人に背負わせて、イアンと瑠璃香をオミットし、メアリーとエドワードをがっつり登場させるという手もなくはない。だが、前作を観てくれた人は篠原さんのイアンが本役として登場することを望んでいるに違いない。となるとやはり、15人。
できるなら、(犯人役などの兼ね役はさておき)15人で今回の舞台をまわしたい。
というわけで、侃々諤々の議論の結果、15人でいけることになった次第だ(劇団飛行船さん、本当にありがとうございます!)。

さて、イアン、篠原さんの話題も出たので、配役の話も少々。
前作『君と旅する時の魔法』の座組は理想的で、皆が舞台と原作作品のD.C.IIIを愛してくれて非常に質の高い舞台となった。
ゲームでも声を当ててくれている声優の「お姉さんチーム」以外の配役に公演当日まで懐疑的だったファンの方々も、舞台を実際に観ることで、新たに舞台版キャストのことを気に入ってくれた方が多かった。
なので、演者さんのスケジュールが取れるのであれば、基本的には座組はそのままで、という話に落ち着いていた。

だが、物語の関係上、『ミライへの伝言』には美琴とジルは登場しない。美琴役の黒木美紗子さんにはコメディリリーフとして、ジル役の北原知奈さんには物語の重要なキーパーソン(兼悪役)として、『君と旅する時の魔法』をそれぞれ支えてもらったので、こちらとしても、スケジュールが確保できるのであれば、新たな役をお願いしたかった。
葛木姫乃を中軸に据える以上、多くの台詞量が予想される巴役には、その台詞処理能力的に北原さんを想定。
黒木さんに関しては前作で美琴の精神が瑠璃香の身体に乗り移った関係で、瑠璃香でどうか、という声もあったのだが、個人的には彼女は瑠璃香のイメージではない。もちろん、役者さんなので求めれば演じてくれるのであろうが、いつの日か美琴vs瑠璃香(といっても瑠璃香に一方的に美琴がやられるだけだと思うが)の勝負を描いてみたい、という野望もあり、黒木さんに関してはメアリーをリクエストさせてもらった。

結果、エドワードと瑠璃香に関しては新キャストを募ることとなり、劇団さんや演出さんの慧眼により、北原侑奈さん、篠本桜さんに決まったというわけだ(これは時系列的にはまだ先の出来事だが)。

そして、問題はサクラギだ。
もちろん、プロットを提出した段階でサクラギという存在が何者であるか、その正体に関しては、CIRCUSさん、劇団さん、演出さんに共有済みである。それは良いのだが、CIRCUSの閣下からまず待ったがかかった。これはパンフレットのインタビューでも答えさせてもらったことなので知ってる方も多いと思うが、要は彼の「サクラギ」という名称に関してである。今後、発表されるD.C.の新作『D.C.5~ダ・カーポ5~』に「さくらぎ」の名を冠するヒロイン(桜来瑞花)が登場する、という情報が共有されたのだ。

「時を超えてやってくるサクラギ」と「世界を超えてやってくるさくらぎ」、奇妙なシンクロニシティが生まれてしまったわけだが、関係者ではないかと思われてしまうのではないか? との危惧だった。当初は「狙ったミスリードではなく偶然なので、サクラギの名前を考え直します」と言ってみたものの、なかなかいい名前が思い浮かばない。
逆に、ミスリードしてくれた方が「サクラギ」の正体を誰も想像しないのではないか、という意見も出て、相乗効果を狙う方向で舵が切られた次第だ。

サクラギ役候補として秋谷啓斗さんがあがってきたときには、CIRCUSさん側からも、『D.C.4~ダ・カーポ4~』で鷺澤正佳役を演じていることが良いミスリードになるのでは、的なアドバイスをもらえたので、結果、いい方向に作用したのではないかと思っている。

……と便宜上、配役が決定する先の先の時系列までの話も入れ込んでしまったが、まだ現時点ではプロット提出後、「登場人物15名でOKが出た」ところ。
エドワードも瑠璃香も出していい、とのお墨付きが出た!

これでようやく脚本が書けるというわけだ。
書くぞ!


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