次世代の消費者行動AISKASモデルと理想の購買体験
企業は常に、消費者によって評価され、成り立つ。つまり、いかに消費者に受け入れられるサービスを提供できるかが企業行動の肝になるのです。
また、消費者の行動やニーズは外部環境によって変化します。最近ではコロナがそうです。コロナによって世界の消費者の価値観や目的意識が劇的に変化しました。具体的には、アクセンチュアの世界的な調査によるとパンデミックを機に自らの目的意識を見直し、人生で何が重要かを考え直したと回答した人が50%に上ります。これを消費者意識のパラダイムシフトと呼び、それに伴い、消費者の購買意思決定も変化いしています。これまでは、価格と品質を重視して決定していたものが、それ以上に、「健康と安全」、「パーソナルケア」、「簡便性と利便性」、「製品製造の背景」、「信頼」という、五つの新たな価値観が、消費者の購買意思決定に大きな影響を及ぼし始めています。これは、行動規制が強かった国であるほど顕著な影響を及ぼしていて、日本では、26%でした。ただ、潜在的に価値観を変えつつある消費者は52%にも及びます。また、この考え方は世代間における差も大きく現れており、バブル世代や団塊世代と比べて、「Z世代」と呼ばれる若年層はお金を使うことに慎重な傾向が強いと言われています。
このZ世代に合わせて今回は消費者体験を考えます。理由は、彼らはいずれ年をとり、マジョリティになっていきますので、彼らに受け入れらる消費者体験を提供することに価値があるからです。そして、その体験を基盤に新たな体験が必要とされるというサイクルが必要だと思います。
このような変化が起こっている現代において、ビジネスはどのような変化を遂げる必要があるのでしょうか。それは、「パラダイムシフトする消費者(顧客)の声を聴き、顧客体験を創り直す」というサイクルを素早く回すことです。
従来は、消費者の声を聞くのは難しかった。店頭でのアンケートなどを行なっていました。しかし、今は顧客との距離はスマホを通して縮まっています。これを利用して、いち早く顧客の声を聴き、求められている顧客体験を提供することが大事であるということです。なぜか?冒頭で言ったように、企業は消費者によってのみ評価され、成り立つ存在だからです。
顧客の価値観が変化すると、顧客の購買行動が変化します。
顧客の購買行動が変化すると、顧客への購買体験を変化させる必要があります。
顧客の価値観の変化に関しては、上記で記述しまいたので、ここからは購買行動の変化について記載します。
購買行動は、カスタマージャーニーであり、多くの分野で研究がされています。最近では、ジャーニーではなくパルス型というのも出てきましたが、今回の価値観の変化と衝動買いは相反するために今回は言及しません。
従来のカスタマージャーニーはこちらをご覧ください。
記事を見ていただくとわかりますが、100年近く前にできたAIDMAっていまだに使われててすごいですよね。
多少極端かもしれませんが、最後のコトラーが提唱している5Aとの比較をすると、推奨というのが最も変わった点であると思います。
昔は、モノを作れば売れた時代です。なので、認知さえ獲得することができれば物が売れました(マーケティングとしては、テレビや雑誌を駆使したマスマーケティングの手法が時流にあっていました)。しかし、現代はモノで溢れています。そのために認知されるだけでは売れず、推奨という新たな購買に対するトリガーが必要になったと考えるのが自然でしょう。
現代においては、スマホは当たり前になり、消費者が積極的に情報収集やコミュニケーションを行えるようになりました。マーケティング手法もデジタルを用いたパーソナライズが当たり前です。消費者に応じて表示される広告が切り替わり、可視化されたリアクションに基づき、1to1マーケティングの最適化が実現されています。
今回のカスタマージャーニーのゴールをどこにするのかをまず明確にする必要があります。それは「推奨」にします。理由は、先ほどの価値観の変化によって信頼や評判また、本当に必要なものを買うということだったので、満足した結果として推奨すると思います。まぁ平たく言うと「買ってよかった」と思ったらゴールです。
スタートは、兎にも角にも認知がないと始まらないので、「認知」です。
認知した後に、いくつかのプロセスを経て、購入に至り、最終的に推奨します。
我々は常日頃から数多くのモノに触れる機会があります。その中から、これだ!と思った物のみを購入検討すると思います。(だからこそパルス型が台頭しています。)つまり、「興味」を持ちます。「共感」というのは限定的な言い回しなので、興味を保つために共感も含んでいると考えていただきたいです。
そして、興味を持ったものに対して、人生で重要なのかを考えます。つまり、熟考する訳です。必要かどうかを精査する上で、何をするのかというと、「検索」をします。中には口コミを重要視する人もいるでしょう。
その後、十分な情報が収集できたら、すぐに購入には至らず、一度「保持」します。なぜなら、緊急性を伴わない場合はその場で買う必要がなく、緊急性を伴う場合は、すでに顕在化されたニーズに基づき購入すると考えられるからです。保持はオンラインでも実店舗でも当たり前です。
その後、保持していた商品が必要だと確信に変わったタイミングで納得して購入します。また、購入したものを消費し、最終的に評価します。評価されると、推奨します。
まとめると、
認知(Aware)
興味(Interest)
検索(Search):評判検索、情報収集
保持(Keep):カートに入れる
購入(Action)
推奨(Share)
AISKAS:アイスカスと覚えてくださいw
最後に、このアイスカスを利用して、顧客への購買体験を考えてみようと思います。
従来はO2O(Online to Offline)というオンラインで接触した消費者をオフライン(実店舗)に送客する考え方が台頭していましたが、消費者と複数の起点で接触することを目指すオムニチャネルの概念が注目され、企業に向けては主に在庫情報や会員ID、ロジスティクスを整備するといった形に文脈が変化し、それを発展させたOMO(Online Merges with Offline)が現代における命題となっています。実店舗の内外を隔てることなく、デジタルデバイスを通してユーザーとの接触面を保ち続ける取り組みが目指されています。
そこで、今回のモデルを用いて、実店舗での消費者行動とオンラインでの消費者行動の二つの側面から購買体験を考えてみようと思います。
購買体験を考えるにあたって重要になるのは、価値観の変化にもあった利便性と簡便性です。簡単にいうと、簡単で便利なものです。また、購買体験を行う最終的な目的は、売上を向上させることです。
そのアプローチをマーケティングといいます。小売には、小売ミックスというマーケティング手法の考え方があります。それは、5つの要素で構成されます。下記に示します。
品揃え:品揃えの豊かさと魅力度を高めることで顧客のニーズに対応する
立地:利便性の高い立地は集客アップにつながる
店舗施設:レイアウト、BGM、トイレ、照明など、顧客の購買意欲に大きく関わる
プロモーション:販促、販売員活動、広告、配送など買い物に伴う顧客の不便さや問題を解消して、購入に対する意欲を醸成するサービス全般
価格:価格戦略によって顧客の購買意欲に多大な影響を与える
このように購買体験とは多くの要素が作用していきます。今回は、既存のマーケティングは割愛して消費者体験を再構築したいと思います。
現代の消費者の価値観と行動から理想の消費者体験を考えてみます。
それは、”自分にとって必要なものを必要な時に、適切な価格で簡単に手に入れることができる状態”です。
この理想と現実の乖離を埋めるのことが消費者体験を考えるにあたって有効です。
では、理想状態をいくつかの要素の分解していきたいと思います。
「自分にとって必要なものかどうか」の判断
これについては「口コミや評判などの情報収集」が消費者体験にあたります。
OMOの観点から、この情報取集が実店舗とオンライン両方でできる必要があります。いわずもがな、オンラインでは可能です(ECに口コミを記載できる仕組みは必要)。実店舗では実現できているところは少ないです。手法としては、店舗のJanコードをスキャンして、その商品の情報を収集できるのが現実的な路線ではないかと思います(いちいち商品名で検索するのは面倒だから)。
次に、「必要な時に」という要素です。
これについては、オンラインは達成しています。自分の好きな時にスマホを開いて買い物ができるからです。また、現在はロジスティクスも優秀で、多くのものが数日のうちに届きます。ここに追いついていない場合はまずこれをやるべきです。次に、実店舗です。実店舗に必要な時に行くことができるかということです。これは、小売ミックスの立地に関することなので、割愛します。ただ、場合によっては店舗予約という選択肢もあっていいと思います。土日によくお店の前で並んでるの見ますし。
次に、「適切な価格」という要素です。
これに関しても、重要なのは情報取集です。秋葉原の家電量販店に行けばわかりますが、〇〇はいくらで売っているという情報をもとに、値引き交渉が繰り広げられています。価格ドットコムなんかもよく使われますよね。
オンラインでは、さまざまな比較サイトがありあますし、物によっては中古やD2Cで安く手に入れることができます。実店舗ではどうでしょうか。先ほどの家電量販店はならまだしも、適切かどうかあまりイメージがつきません。重要なのは、”相場”です。相場と比べて安いのか高いのかを判断することで、適切かどうかを判断することができます。これも先ほど同様にJanコードのスキャンで達成できそうです。
また、最近ではダイナミックプライシングが注目されていて、需要によって価格が変動するというものです(amazonはそうなってる)。これが店舗でもできたらめっちゃいいですよね。
商品棚に価格を記載せず、全てスマホでスキャンして価格と口コミなどを確認して、レジに行ったら、持ち帰りと選択した商品だけがカゴにはいっている状態。海外ではもうあるみたいです。
最後に、「簡単に購入」という要素です。
これに関しては、今一番簡単な購入って、電子決済じゃないですか?
「スイカで」って言ってかざせば、3秒で購入が完了します。
オンラインでは、事前に決済方法を登録しておけばとても簡単に購入できます。実店舗にいくと、場合によっては長蛇の列に並ばないといけません。あれってめっちゃ無駄ですよね。やはりベストはユニクロみたいに、IDタグ使って自分で決済できることです。スーパーの無人レジは自分で商品スキャンしないといけないので、利用しないです。もっというと、実店舗にいても購入方法をオンラインで買うという選択肢を設けるべきです。
ここまで消費者の価値観と行動の変化からそれに伴う提供すべき体験を書いてみました。どこに行くにも、コストコみたいに会員限定にして、会員の体験を最大化するのが今の消費者体験には合っているのかもしれません。要はコストコ✖️アマゾン✖️ユニクロみたいな感じがベストですかね。
今回は既存のマーケティングは割愛して議論しました。次世代のマーケティングについてはまた別途考えてみたいと思います。
余談ですが、Janコードで商品をスキャンしたときに、その店舗の商品だけでなく、競合含む類似商品が出てきたら面白くないですか?
そのために、実店舗には場所だけ用意して、そこのポップアップをおきたいメーカーが商品を置くことができる。
そこのお店はショールーミングストアになっていて、持ち帰りはできないけど、いろんな商品が合って、スキャンすると競合と比較ができて、結果的にUXが向上するという、消費者に寄り添った店舗。(アマゾンの実店舗版みたいなイメージ。地方のカインズくらいの店舗規模)
名前はノーブランドですw
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?