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誤算〜バカの相場〜

定期テストのたびに、なみなみのブラックコーヒーが毎晩1時間おきに運ばれてくる〝コーヒー地獄″は続いていた。
(過去記事:コーヒーという名の薬参照)



理由はバカだから、すぐ寝るから。

そうか、そんなにバカなんだ、わかった、バカならバカらしく生きよう。

高校に入ってから、勉強してもしてもちっとも成績が上がらない、現状維持で精一杯だった。テスト前になると親友のみっきーも友美もしおりんも、みーんなガリ勉しているように見える。

そっか!みんなセンター試験受ける組なんだ、そりゃ勉強するか…、同じようにやっても勝ち目はない。早々に匙を投げた。


とにかく60点以下の赤点さえとらなければいい…

1年生の時の化学の加藤先生はとても厳しく、授業中に『この問題を解けなかったら死んだ方がマシだ』と毎回言いながら、日付けやその日の気分で適当に当てていく。解けなかった者は『やはり死んだマシだ』と真顔で言うので皆ビクビクしていた。
私は化学はサッパリ、加藤先生をMr.カトーと勝手に呼んではモノマネばかりしていた。

ある時壊滅的に難しい期末テスト…というより、そもそも私は全く勉強していなかったので、難しいも何も分からず消しゴムを転がして単なる勘だけでテキトーに空欄を埋めて提出した。
答案返却に皆がビクつき、Mr.カトーは『学校創立以来の最低な学年だ、平均点が26点とは何ごとだ!恥を知れ!』と言いながら1人ひとりに返却した。なんと私は29点であった。

周りを見ると、いつも真面目に勉強していた連中が24点、25点…50点以上取っていた者はクラスに2人しか居なかった。私はサイコロの目が出た記号をそのまま丸をする的な、本当に勘だけで平均点よりたった3点だが上だった。

Mr.カトーが私を褒めた。『君は案外だねぇ…』クラスメイトは半分キレていた。自分はバカだが、勘だけはいいのかもしれない。そしてMr.カトーもこれまたふし穴教師であった。親友のみっきーもしおりんも半ギレだ。

だが現実は甘かった。


私は最初から〝地元1番の進学校からワンランク落として受験した″つもりで余裕をぶっこいでいた。しかも英語科ではなく普通科に。


なんと周囲のほとんどは、〝英語科を受験したが滑って普通科になった人″だらけだった。英語科は非常に人気があり、偏差値も少しだけ(普通科よりおよそ5くらい)高かった。私のように最初からナメて普通科受けて入りました!組はほとんど居なかった。


更に驚いた事に、当時新設校で珍しかったのか、かなり離れた地域から5%入学してきた人が多くいた。どおりで成績が上がらないわけだ。
私は自転車で片道25分、山のてっぺんまで登り、帰りはダッシュで滑り降りると15分で家に着く。だが、学区外の5%入学してきた人たちは、田舎の無人駅に1時間に1本しか止まらない電車で、片道1時間以上かけてわざわざ通学してきている。しかも雨が降るとすぐ電車が止まるので、小さな無人駅がウチの高校の生徒の電車待ちで溢れていた。

とにかく同じ学区、市内だけでなく、色んな市町村からわざわざ来ている人だらけだった。

ワンランク落として普通科入ったぜ〜!なんて思っていた私の成績は200人中168番…何てこった。
いや待てよ、後ろに32人もいるではないか!
度数分布表を見る、クラスや学年の女子を見渡す。だいたい勉強してなさそうな者…は見ればわかる。私より後の者は男子しかいない…今ごろ気づいた私が1番バカだ。

数学の〝補講メンバー″に呼ばれ、そこへ向かうと女子は私1人しかいない。最悪!私は学年の女子の中の〝トップオブザトップ″だ!




しかしその〝補講メンバー″の男子こそが、高校に入ってやる気をなくしてバンドに走ったり、駅でタバコを吸うメンバーだったり、稲中卓球部やエロビデオを回してくれる男友達になった。

クラスの意地の悪い女子が『ハッシーって〝バカなフリ″してるだけで、実はは成績いいんじゃない?』と言っていた。いやいやいやいや、本当に〝ケツ″ですから!ご心配なく!
いや待てよ、そもそも私はバカなフリなんてしてないぞ?(賢いフリなんてもっとしてない)

あ、やっぱり周囲から見ても私はバカに見えるんだ…まぁ仕方ない、成績がふるわない、本当なのだから。


もういい!
私は音大に行くのだからセンター試験なんて受けないし、とりあえず5段階評価の平均が3.0あればいいんだ、音楽と政治経済だけは1番を死守し、数1、数A…数2、数Bが最悪2でもプラマイ3.0になる。
他に〝稼げる″教科がまるで見当たらなかった。



中学の頃のように男子から〝やりてぇ…″と言われるカテゴリにも入らず、キャラ変もしてひたすらお笑いに走って、それはそれで楽しいじゃないか。



高校には高校の楽しさがある…放送部の山根先生のことばをふと思い出した。


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