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理不尽さを感じた中学時代

相変わらず“恋愛至上主義″を突っ走る生意気な中学3年生であったが、唯一苦手なカテゴリのものがあった。

当時女子の間ではジャニーズに熱を上げる子が多かった。私は小学生の頃からジャニーズにもアイドルにも全く興味がなかった。それよりも歌唱力のある“きちんと歌を歌っている歌手″の歌ばかり聴いていた。

小さい頃からテレビを見て、歌手という人たちは元々歌が好きで得意とし、実力ある人がそれを目指し、めちゃくちゃ努力してレッスンを受け、運を掴み取ったごく一部の人が歌手になるものだと信じこんでいた。
小さい頃から正しく調律されたピアノを弾き、合唱部で正しい発声法を習い、音楽だけは“それなりにきちんと勉強してきた″という自負も手伝い、ただ顔が可愛かったりイケメンだったりする人が、歌手と言われ、数々の音楽番組に“本物の歌手″と一緒に出ているのを見ると、無性に腹が立った。
特にアイドルやジャニーズという分野にカテゴライズされる人たちに1ミリも魅力を感じなかった。


おばあちゃんがある時こんな事を言った。
『女は顔が綺麗な方が得をする、特に若い頃はね』

しかし母はこう言う。
『人間は中身で勝負よ。中身がない空っぽのバカはそのうち人に飽きられる』

どちらが正解とかではない、どちらも当たっていた。

小学校でも中学校でもいつも男子にぶっちぎり人気があるのは、いわゆる顔が可愛い子、今も昔もそれは変わらないだろう。

だが、納得できる人も居た。
例えば2年生の時クラスが一緒だったテニス部の直美ちゃんも、いわゆる顔が可愛い女子のトップ3に入っていたが、直美ちゃんは誰にでも公平で意地悪もしないし、頭も良かった。身近に居たソプラノの夕ちゃんもとても綺麗だったが、それを鼻にかける事なく下ネタオンパレードで“お笑い″のセンスがあり、何より美声で誰よりも歌がうまかった。アケミも美人で整った顔立ちなのに全く気取らず性格がサバサバしてコミュニケーション能力が高い。

そういう人がモテるのはごく自然な事であり、素直に憧れたし尊敬した。小さい頃から歌が上手く、人一倍努力した結果、歌手になるのと同じように。


ただどうしてもアイドルとジャニーズ、学校では“顔が可愛いという理由だけでモテる女子″と“ぶりっ子な女子“が苦手だった。


アイドルとジャニーズはあくまでも私の勝手なイメージで“、ロクに歌唱力もないのに歌を歌うフリをしている、あんなの歌手じゃない!あれが歌手なら本当に歌手になりたくて努力している人がかわいそうだと思っていた。しかし学校でそれを言ってもきっと誰も理解してくれないだろうと1人でモヤモヤした。この考えは高校生以降、大爆発することになる。


中3になり、E組に当時男子の間でとても人気のあった“裕木奈江″さんにソックリの女子が転校してきた。名前は忘れてしまったが、その裕木奈江似の女子は、可愛い、ぶりっ子をそのまま体現したような人で、それに釣られる男子が後を絶たなかった。細くて可愛い流行りの顔、フワフワとした雰囲気で、野球部の男子や大人しめの男子から人気があった。その後、野球部のピッチャーをしていた山本という男子とすぐに付き合いだし、数多くの男子が嘆いていた。


また、学年の一軍メンバーと言われていたテニス部の美恵ちゃんと綾(ミッちゃんの元カノ)もぶりっ子で有名だった。美恵ちゃんの方は小学校の頃からぶっちぎりにモテていて、男子に彼女の何が良いのか聞くと“顔が可愛いから″という返答しか返ってこなかった。
美恵ちゃん&綾は自分たちが“可愛くてモテる″事を早々に理解してたのだろう。男子の前ではとにかくニコニコ、とにかくぶりっ子で、友だちのアケミは『あいつら後ろから蹴飛ばしてやりたい』といつも言っていた。

ぶりっ子…真似してみようかと思った事もあるが、自分がやると何かキモい、ブリブリするあの仕草、とても真似できなかった。あれはあれで才能のひとつだと思った。
彼女たちはどんな生態系の女子なのか?
気になった私は何度か話しかけてみたこともある。実際話してみたら案外いいヤツだった、みたいな展開もあるかもしれないと思ったからだ。
美恵ちゃんと裕木奈江似の子に、何か忘れたが適当に用事を作って何度か話しかけてみた。(綾の方はミッちゃんライバルだったので、話しかける気すら起こらなかったのと、綾は私を明らかに避けていた)
結果、全く会話が発展しないどころか、女子の私にもブリブリした態度で対応されて私は困ってしまった。
別に彼女たちに悪気があったわけでもないだろう、単にその“ぶりっ子″が常日頃から板についていたのかもしれない。…ダメだ、何考えてるか全くわかんないし何も読めん…でもあの人たちはそれでいいんだろうな。女子からはあまり好かれておらず少々浮いていたが、男子からモテれば、女友だちなんてあんまり必要ないのかもしれないと思った。


いつの頃からか、自分の顔や体型がだんだん嫌いになってきた。中3の途中くらいまでは身長が170cmで体重は50キロあるかないかくらいだったのに、いつの間にか58キロまで増えていた。体育の時間、長谷川さんという陸上部の女子から『レナちゃん、どしたん?そんなに太ってたっけ?』と聞かれ、『自分でもわからんのやけど太ったのだよー』と苦笑いして答えるしかなかった。
あぁ、どうしよう…同級生にもバレてしまってる、どうしよう…顔も目が一重だし、ニキビもできるし最悪!!

またある時クラスの男子に『お前ってさ、平安時代に生まれてたらモテてただろーな』と言われ、アハハそうかもね!なんて返しながら、私は平安顔なんだ…と大ショックを受けた。それなら平安時代に生まれたかった。中学生くらいの男子の言葉は残酷だ。悪気はないんだろうが、悪気がないからこそ、その言葉が突き刺さる。

やっぱぶりっ子してる顔の可愛い女子が最強だな……するとテレビの中のアイドルが頭の中に浮かんでくる。


自分の心にわいてきたどす黒い感情を抱えながら、家で夜中にNOKKOの人魚、広瀬香美のロマンスの神様を聴いては1人で『わかるわかる』と納得していた。やっぱ歌唱力のある、声量のある人の歌は聴いてて気持ちいい。
『歌手と名乗って歌番組に出るんなら1人で堂々と歌えよ!』音楽番組をコッソリ見ながら心の中で1人叫んだ。


40歳半ばになった今でも私の考えは全く変わってない。集団で出てくるアイドルグループや、口パクしている自称歌手軍団が出てきたら速攻チャンネルを変える。
演歌歌手の歌をじっくり聴いてるほうがよっぽど心に響く。インディーズで一生懸命自分の音を追求しているバンドの演奏を聴くほうがいい。


叔母とミュージカルを観に行った時、ミュージカル俳優ではなくアイドル枠や◯◯枠みたいなところから、歌のヘタクソなタレントがミュージカル俳優と一緒に歌っているのを見て驚いた。ミュージカル俳優がその人たちに合わせて、声量をわざと控えめにしている事に気づいた。
まぁ客寄せのためなのかもしれないし、大人の事情もあるんだろう。でもこちらは真面目にミュージカルを聴きに行ってるんだ。ほんと興醒めしてしまった。

だからバカバカしくなって、ミュージカルより高いけれど、やはりきちんとオペラを観に行く事になる。

この考えに共感してくれる人も、いや違う…という人もいるだろう。もし何か違う視点からみえる何かがあれば誰か私に教えてほしい。



原点は中学生、いや小学校6年の米米クラブやチャゲアスのボーカルの歌声に聴き惚れていた頃から既に始まっていたのかもしれない。



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