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ぎゅっと握った思い

料理をする私に、
小さな娘がキッチンにトコトコとやって来て
「何かお手伝いすることなぁい?」
と目をキラキラさせて言ってくる。
その姿が可愛くて
「今日は何作ろうか?」
いつも笑顔でワイワイしながらお料理タイムを楽しむ時間が大好きだった。

私も夫も、料理を作ることも食べることも大好き!なのでリビングのようにキッチンで笑いながら騒ぐことが日常だったから自然と娘も料理をするのが好きになったのだと思う。
私達夫婦の友達が来たときも、娘の友達が泊まりに来たときも、みんなで料理をしながら笑いあうことが多かった。
よく夫からも料理を教えてもらっていた娘は、本当に小さな頃からお料理を手伝ってくれた。






どこかへ出掛けるときは
必ずおにぎりを作って
みんなで外で食べたり、
車の中で笑いながら食べた。
海を見ながら
芝生で裸足になりながら
夜空を見ながら
家族みんなで
「美味しいね!」「幸せだねー!」と
大騒ぎしながらおにぎりを食べた。

みんなでおにぎりを作っていると
「母ちゃんみたいにぎゅってむすべないよ。形もぼこぼこだよ~」
小さな娘が一生懸命に握った丸いおにぎりを、しょんぼりしながら私に差しだした。
「いいんだよ。一生懸命作ってくれてありがとう!可愛いおにぎりだね」
いただきます!をして食べると、ぼろぼろとおにぎりは崩れてしまった。
「あ~あ。くちゃくちゃになっちゃったね」
と娘が言う。
「小さなお手てで、頑張って作ってくれてありがとうね。すごく美味しいよ!愛情たくさん入ってるから元気もりもりになるよー!おいしい、とっても美味しいよ」
って笑顔で伝えおいしいね!とみんなで笑いあった。

あれから10年以上月日が過ぎ
私は病気になってしまい
手の握力がほとんどなくなり
おにぎりを握ることすらできなくなった。
料理をつくることもままならない。
食欲もない日々。
食べることが楽しみでもなくなり
「食べたいものある?」
家族にそう聞かれても首を横に振るだけ。
そんな日が続いたある日

「母ちゃん、おにぎり作ったよ。よかったら食べてね」

娘から言われテーブルを見ると
お皿の上にしっかりと握られたおにぎりが二つ。「どうぞ」と言っているかのように私を見つめていた。
手にとって一口食べる。
娘の好きな梅干しが入っていて酸っぱさに目が開く。

「おいしい」

おにぎり、美味しいな。
美味しいと思うと同時に
あの小さかった娘が、こんなにしっかりおにぎりを作れるようになったんだな。と
色んなことを思い出し
思わず泣きそうになっていたら
「母ちゃん元気になるようにって、愛情たくさん入っているから!」
と言われて、気がついたら涙が流れていた。
「病気になって、迷惑かけてごめん」
情けなくなり泣きながら娘に言うと
「なーんにも迷惑じゃないよ。おにぎりとか、お料理を小さな頃にたくさん教えてくれてありがとうね。これからもさ、ご飯美味しく食べていこう」
そう言われ格好悪く大泣きしてしまった。
これじゃどっちが親かわかんないね、なんて最後は泣き笑いしておにぎりを食べきった。
美味しく食べることを思い出し、その日をきっかけに、ご飯を少しずつ食べるようになり病気によいものを意識していただくようになった。


春休みに娘が作ってくださったご飯!

私にとって
おにぎりは楽しくて笑顔の思い出と、娘の成長と、涙の大切な料理で
いつだって心をあたたかくしてくれる。

娘や夫が作ってくれるおにぎりは、
今も変わらずに私の元気のもとだ。

笑ったり泣いたりしながら
食事ができることを
有り難く思いながら
今日も、これからも
生きるために「いただきます」と
笑顔で元気に食べていきたい。


最後まで読んでくださり
ありがとうございます。

心から感謝の気持ちを込めて。

横山小寿々

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