見出し画像

作って、使って、根付かせる!本当に役立つ営業プレイブック作成のすすめ

「新人や若手、他部署から来たメンバー営業のやり方を早くインプットしたい」
「営業組織全体の営業力を底上げしたい」
「自社の営業の勝ち筋/成功パターンを皆が再現できるようにしたい」
このような課題への答えが「営業のプレイブック作成」です。自社の営業のベストプラクティスをもとに標準プロセスやツールを具体化し、それをメンバーに共有することで、誰もが必要なタイミングで参照できるようにします。商談前や提案書作成時に見返したり、マネージャーがメンバーとのコーチングの場で参照したり、新任メンバー向けの導入研修で使ったりと、プレイブックがあることで営業部門の全員が「自分が何をどうしたらいいかが明確になっている」状態を作れます。

とはいえ、特に日本の営業だと「そんなの見たことない」「あったらしいけど、今は使われていない」という組織が多いのではないでしょうか。

そこで今回はB2B営業のベーシックとして、「営業プレイブック」の作り方と活用・定着のさせ方をご紹介します。「どうやって作ったらいいのかわからない」「自分たちでも作れるのか不安」「作ったものをどうやって活用・定着させたらいいか知りたい」という方はぜひお読みください。

営業プレイブック作成・活用・定着の7つのステップ

営業プレイブックの作成・活用・定着は大きく以下の7つのステップに分かれます。
1. 目的の明確化
2. 標準プロセス/ツールの具体化
3. ブック化
4. 研修化
5. 他のしくみへの接続
6. 実践
7. 見直し
この7つのステップに沿って解説していきます。

ステップ1. 目的の明確化

営業プレイブックが実際に使われて、定着するかどうかの分かれ道になるのがこの最初のステップ。営業プレイブックによって何を実現したいのか、できる限り客観的な指標で明確にします。例えば、新人向けのブックであれば「半年後に一人で提案から受注まで完結できるようになり、1年後には安定して目標達成できるようになる」。営業マネージャー向けのブックであれば「全マネージャーが1年後に業績目標を安定達成できるようになる」といったもの。

誰が、いつまでに、何をできるようになり、どんな結果を出したいのか。そしてそのために、ブックがどのようなものでなければならないのかを、作成するメンバーだけでなく、営業のトップ層が理解しそれを大事にしていることを発信できるようにするのです。ここを明確にしないまま次のステップから進めてしまうことが、日本の営業組織で営業のプレイブックが活用・定着されない最大の要因なのです。

ステップ2. 標準プロセス/ツールの具体化

次のステップは「標準プロセス/ツールの具体化」。ブックにするための標準的なプロセスやツール、営業メンバーがどのような手順で何をすればいいかを明確にするところから始めます。

このステップでは、現場の成功事例やノウハウを収集するところから始めるのが一般的です。現場で成果を出していてかつそのやり方を言語化できそうな人を対象にインタビューし、実際に行っているプロセスを図解したり文章化したりしてカタチにしていきます。打合せの内容を図解や文章化する方法として、以前のブログで話題になったファシリテーショングラフィックのやり方についてご紹介していますので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。

ただ、新しい商品を売るときなど、現場に成功事例が存在していない場合もあります。そのような場合では、暫定的なプロセスとツールを用意しておいて、事前に数名の担当者に2~3か月程度協力してもらうテスト実践を行うのがお勧め。実際にプロセスやツールを試してみることで、使えない部分や足りない部分が明確になりますし、どうやればうまくいくかについての情報を集めることが可能になります。

こうやって、営業メンバーに実践してもらいたい標準プロセスとツールが明確になったら、これをブック化するステップへと進みます。

ステップ3. ブック化

明確になった標準プロセス/ツールを早速資料としてまとめたいところですが、その前にやるべきことがあります。それはこのプレイブックの読み手の環境に合わせて、判型および配付方法を決めることです。

読み手はどういうタイミングや環境でこのブックを手に取るのか。顧客訪問の合間に目を通すが多いのか、デスクで見ることが多いのか。使い勝手やセキュリティといった観点から、冊子印刷して配付するのか、端末上で閲覧させるだけにするのか。そのときにタテ型とヨコ型のどっちが見やすいのか。これらのことを最初に決めておかないと、後になって「印刷すると思ってタテ型で作ったけど、PCで見るだけにするからヨコ型に組み替えないといけない」などの悲劇に見舞われる可能性がありますので、要注意です。

判型が決まったら次にやるべきことはブックのデザイン設計です。インサイドセールスなどの比較的単純な業務であってもブックにすると大概80ページくらいにはなってしまいます。それより複雑なソリューション営業だとどれだけコンパクトにまとめても120ページを超えることがほとんど。これだけページ数が増えると、読み手が「いま自分はブック全体の中のどの箇所を読んでいるのか」がわからなくなってしまいます。そうならないように、各ページに章の見出しをタブとして入れるなどの工夫をデザイン側で取り入れておく。これもブック化の初期の段階で大事なポイントです。

判型とデザインが決まったら、ステップ2で明確になった標準プロセス/ツールを各ページに落とし込んでいきます。ここでのポイントは「図解」です。内容を視覚的に認識してもらえますし、かつ文章だけだと見た目が単調になりがちなので、「読めばわかるから図解にする必要がないんじゃないの?」という内容であっても、できる限り図解化しておくのがお勧め。ちなみに、現在お話している7つのステップを図解すると下図のようになります。

各ページに落とし込んでいく際にもう1つ大事になるのが、「例示」です。ステップ2でのヒアリング内容やそこで集めた資料などをもとに、ツールの記入例やトーク例などを書き込んでおくことで、現場での「具体的にはどうしたらいいの?」という悩みを最小限に抑えられるようになります。

そして、標準プロセス/ツールをまとめたら、その前後に「前提知識」と「実運用時の注意点」などを追加します。ここでの前提知識とは、自社の事業戦略や商品、顧客の業界/業務/課題といったもの。標準プロセスを進める上で知っておくべき内容を、できるだけコンパクトかつ理解可能な記載になるように工夫しながら入れていきます。

また、業界として守らなければならない法律や社内のルールといった「実運用時の注意点」も、ブックの大事な要素。これまでの経験ですと、原価管理や請求支払の手続、承認申請のルールなどは煩雑で、かつ1つの資料にまとまっていないことが多々あります。この機会に1つのブックにまとめておくと後々の更新管理も楽になるので一石二鳥です。

「前提知識」や「実運用時の注意点」をプレイブックに取り込む理由は、ブックを「これさえ読めば自社の営業に必要なことはすべてわかるもの」(Single Source of the Sales Truth)にするため。このキーワードは営業プレイブックを専門にしているアメリカのコンサルタント、ジム・カール氏によるもの。私も常々実感していますが、ブックが現場で使われ続けるための特に大事なポイントなのです。

ステップ4. 研修化

ブックが完成したらこの内容をメンバーに伝えるための研修資料を作成します。集合研修にする場合は投影するスライドやメンバーに配布するハンドアウト用資料にまとめ直す必要がありますし、動画研修にする場合は使用するスライドのデザインを整えたり講師役が読み上げるための原稿を作ります。

この研修化で大事なのが、インプットとアウトプット、つまりワークの割合をどうするかを考えること。ケーススタディを解かせるのか、各自が直面している生のテーマを解かせるのか、その際のツールをどのようにして誰がどの観点でレビュー/フィードバックするのかといったことを設計し、実際に研修として提供します。

ステップ5. 他のしくみへの接続

プレイブックにまとめた標準プロセスやツールが使い続けられるかの生命線がこのステップ。標準プロセスの内容をSFAに反映させるなど、既存の営業のしくみにきちんと接続していかなければなりません。

中でも特に重要なのが営業のトップやマネジメント層への接続です。普段の営業会議での管理項目や指導する観点をブックで記載しているものに合わせてもらわないと、せっかくブックにまとめて研修までやっても絶対に定着しません。営業トップやマネジメント層が新しい観点でマネジメントしたりメンバーにコーチングしたりできるよう、帳票類の見直しやマネジメントやコーチングの仕方を紹介する研修を行うことが不可欠です。

また、標準プロセスが営業職の業務要件に合致しているかチェックしてずれている場合はこれを見直すのも、定着のための大事なポイント。「このブックのとおりにやれば目標達成しやすくなるし、上司や会社からも評価される」という状況を用意してあげられれば、まず間違いなく定着することでしょう。

ステップ7. 見直し

そしてブックの内容を「6. 実践」した後は、定期的に「7. 見直し」ます。一度作ったブックが継続して使われなくなるのは、このステップがないことが原因。自社の戦略や体制などの変化に合わせて見直したりすることをさぼっていると、加速度的にブックが陳腐化して使われなくなってしまいます。

また、実践の中で得られた成功事例や、現場で作成した資料などの工夫を取り入れるのも大事です。特にマネジメント層やリーダー層から事例や工夫例を集めると、その人たちがより積極的にブックを使ってメンバーを指導するようになりますので、できるだけ幅広く現場での工夫を集めて取り入れるようにするのがお勧めです。

営業プレイブック作成のご相談はトライツまで

営業プレイブックの作り方と活用・定着のさせ方について6つのステップでご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。おおよその進め方と大事なポイントについて、少しでもイメージが湧いたのであれば嬉しく思います。
ちなみに、私がプレイブック作成プロジェクトを実施する場合、ステップの1から4まででおよそ3か月程度です。

中でも特に時間がかかるのが、「2. 標準プロセス/ツールの具体化」部分。社内でまとめたときはしっかりプロセスが固まったように見えていたものの、実際にブックに落とし込んでみると詳細まで詰められていないことがわかって、メンバーで詳細部分を議論/設計することもしばしば。見落としている論点を見つけるために、「3. ブック化」のステップに進んでみて、ブック化しながら詳細部分を詰めていくのです。

まだ営業のプレイブックがない方や、一度作ったものの陳腐化してしまったのでリバイバルが必要だという方は、ぜひトライツにご相談ください。皆さんの成功事例や勝ち筋をより伝わりやすく、より継続的に実践されるようにカタチにしましょう。