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次の文により47、48の問いに答えよ。
 36 歳の男性。胸部異常陰影を指摘され来院した。
現病歴 : 職場の健康診断で胸部異常陰影を指摘され、精査目的で受診した。咳と血痰の自覚はない。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 : 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。健康な妻と 2 歳の息子との 3 人暮らし。
家族歴 : 父親が 60 歳時に肺癌の手術を受けた。
現 症 : 意識は清明。身長 176 cm、体重 68 kg。体温 36.8℃。脈拍 68/分、整。血圧 126/68 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97%(room air)。頭頸部、胸腹部および四肢に異常を認めない。
検査所見 : 血液所見:赤血球 468 万、Hb 14.2 g/dL、Ht 45%、白血球 7,200、血小板 26 万。血液生化学所見:AST 26 U/L、ALT 18 U/L、LD 136 U/L(基準 124~222)、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、CEA 36 ng/mL(基準 5 以下)、SCC 0.8 ng/mL(基準 1.5 以下)。CRP 0.02 mg/dL。胸部エックス線写真で左上肺野の結節影、胸部 CT で左肺上葉の結節影および縦隔リンパ節の腫大を認める。
 左肺腺癌と診断され、2 週間後から根治的化学放射線療法が予定されている。職業は会社員で癌の診断後は休職している。
 研修医と指導医の会話を示す。
研修医 : 「この患者さんは、治療中に仕事ができず、収入がなくなることを心配しています。治療費が支払えないのではないかと言っています」

指導医 : 「社会保障制度があるから、本人に情報提供したらどうかな」
研修医 : 「①介護保険、②生活保護、③高額療養費制度、④指定難病医療費助成制度、⑤ひとり親家庭等医療費助成制度を考えたのですが、いかがでしょうか 」

第118回医師国家試験

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下線部のうち、この患者に情報提供する制度で適切なのはどれか。
a  ①
b  ②
c  ③
d  ④
e  ⑤

第118回医師国家試験

正解:c

解説

高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に、自己負担の上限額を超えた分を支給する制度です。この患者は、左肺腺癌に対する根治的化学放射線療法を予定されており、高額な医療費が発生することが予想されます。そのため、高額療養費制度の利用が適切と考えられます。

他の選択肢について:
a  ①介護保険:要介護状態や要支援状態の人が利用する制度であり、この患者には適用されません。
b  ②生活保護:最低限度の生活を保障するための制度ですが、この患者は会社員であり、生活保護の対象とはなりません。
d  ④指定難病医療費助成制度:指定難病に対する医療費助成制度ですが、肺癌は指定難病に含まれていません。
e  ⑤ひとり親家庭等医療費助成制度:ひとり親家庭等を対象とした医療費助成制度であり、この患者は妻と子供との3人暮らしであるため、対象となりません。

考察

がん治療では、高額な医療費が発生することが多く、経済的な問題が患者の大きな不安要因となります。高額療養費制度は、そうした経済的負担を軽減するための重要な制度です。医療者は、患者の経済的不安に配慮し、適切な社会保障制度に関する情報提供を行うことが求められます。また、がん治療に伴う就労問題にも留意し、必要に応じて社会福祉士などの専門職と連携することも重要です。患者が安心して治療に専念できるよう、多職種によるサポート体制を整えることが大切です。

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この患者が利用できる社会保障制度の説明を依頼すべき職種で最も適切なのはどれか。
a  看護師
b  公認心理師
c  介護支援専門員
d  精神保健福祉土
e  医療ソーシャルワーカー

第118回医師国家試験

正解:e

解説

医療ソーシャルワーカー(MSW)は、病気や障害を抱える患者やその家族の抱える経済的、心理的、社会的問題の解決を支援する専門職です。患者の社会保障制度の利用や、福祉サービスの調整、就労支援など、幅広い支援を行います。この患者は、がん治療に伴う経済的不安や就労問題を抱えており、MSWによる支援が適切と考えられます。MSWは、高額療養費制度をはじめとする各種社会保障制度について詳しい知識を有しており、患者の状況に応じた適切な情報提供と利用支援を行うことができます。

他の選択肢について:
a  看護師:医療的ケアや生活支援を行いますが、社会保障制度の詳細な説明は専門外です。
b  公認心理師:心理的問題への専門的支援を行いますが、社会保障制度の説明は専門外です。
c  介護支援専門員:介護保険サービスの利用調整を行いますが、がん治療に関わる社会保障制度の説明は専門外です。
d  精神保健福祉士:精神障害者の福祉的支援を行いますが、がん治療に関わる社会保障制度の説明は専門外です。

考察

がん治療では、医学的な治療だけでなく、患者の抱える様々な社会的・経済的問題への支援も重要です。MSWは、そうした問題の解決を支援する専門職であり、医療チームの重要なメンバーです。医師や看護師などの医療職は、MSWとの連携を密にし、患者の抱える問題を早期に把握して適切な支援につなげることが大切です。また、MSWは、院内の多職種や地域の関係機関とのネットワークを活かして、患者の療養生活を支えるための包括的な支援を行います。がん治療に携わる医療者は、MSWの役割を理解し、適切に連携することが求められます。

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