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本を投げたら殺された!?話

国王アタワルパは聖書を地面に投げ捨てた。

「なんたる無礼!

 これほどまでの侮辱があろうものか!

 我が信仰を踏みにじられた!

 神の名において成敗してくれる!」


1532年スペインの軍人ピサロは168人の兵をつれ、インカ帝国(現ペルー)に到着した。
ピサロは修道士と通訳を連れ、国王アタワルパに詰め寄った。
「国王および国民はキリスト教に改宗しなさい。さもなければスペインの敵とみなす」と。
それに対してアタワルパは「属国にはならない」と否定した。

「これは聖書に基づく正義である」
神父は聖書をアタワルパに差し出した。
「これはどうして喋らない?」

聖書は地面に投げ捨てられた。
結果として神父が「神に対する冒涜だ!」という合図を皮切りに攻撃は開始され168人の兵により、インカ帝国人7000人の殺戮が行われた。
そしてアタワルパは捕らえられた。

この件は誰が悪いのだろうか?
ひとつずつ考えてみる。

スペインのピサロ
インカ帝国への侵攻がいけないのか?
=スペインの発展のためと考えれば当時の時代背景からいってもズレてないように思う。ピサロはインカ帝国上陸後に、母国に侵略の許可をとっている
後にスペイン紙幣ペソの肖像画にもなっていることから、スペインでは英雄として扱われている。

インカの国王 アタワルパ
スペインに迫られた改宗を受け入れればよかったのか?
=そもそも文字の文化がなかったインカ帝国において、”聖書に基づいた正義だ”といわれてもなんのことだか解らない。ましてや聖書の権威がどの程度なのかも解りようがない。
という前提があるとしても、相手が大切にしてると解る聖書を雑に扱ったのは軽率だったと思う。
だからといって、国民を殺戮されたのは報復としては過ぎると思うが。

後にスペインは、アタワルパを返して欲しければ身代金を用意しろと迫り、実際お金を受け取ったうえで、アタワルパを解放せず処刑している。

「アタワルパが可哀そう!」というのも違う。
彼も悪行三昧だ。例としては
1.腹違いの兄を倒して国を統一する。
2.周辺国を武力で制圧する。
3.貴族層以外の住民に対して、奴隷扱いともいえる労働をかしている。

ピサロも、後に権力争った同僚の縁者により暗殺されている。

戦争のきっかけに利用された聖書の一節より

「不正を行う者には、なお不正を行わせ、汚れた者には汚れるままにしておけ。正しい者には、なお正しいことを行わせ、聖なる者には、なお聖なる者とならせよ」

この一文は、人が人を裁くものではないとうことだと思う。
”改宗をせまり、従わなかったら殺した”
どう、聖書を読めば殺して良い!になったかが疑問だ。

人間、自分のことは解らないものだと、改めて感じた。

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