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みんな大好き!お菓子業界の決算書を読んでみた(#20代マーケピザ 養成所オンライン)

「決算書から企業のビジネスモデルを読み解く」

 #20代マーケピザ 養成所オンラインの個人課題に取り組みました。


私自身メーカーに勤務しているので、自社含めて色々なメーカーの決算読めるようになりたいなと思い、お菓子業界のメーカー3社について決算書を読んでみました。

・お菓子業界を選定した理由について

① B to Cメーカーであり、自分が興味を持てる業界を選定したかったから。
② 爆発的な伸長が見込めない製造業において、各社がどのような経営モデルを実践しているのか、どのようにして継続成長をさせようとしているのか今後の仕事にすぐに役立てられそうな業界を選びたかったから
今回は大手メーカーの決算を読みたい・同じ市場状況の中で会社ごとの戦略の違いは出てくるのかを調べてみることが個人興味だったので、江崎グリコ・カルビー・森永製菓の上位3社をピックアップしました。

・江崎グリコ 決算分析

まずは業界1位の江崎グリコさんから見ていきたいと思います。

・売上高について
海外事業においては好調に推移するものの、国内事業がZ比97%と落ち込んだことで、全体ではZ比99%と減収になっている。
ただ営業利益を見てみると、Z比87%と売上以上に減少しているため、設備投資などの経費増か、売上に対する販管費の非効率化などがあるかもしれません。

・利益・原価について
売上原価=製造費コストについては、前年同等水準のため、大きな問題はない。
(業界内で比較し、そもそものコスト体制がよいかを後で判断する)

販管費の各項目をチェックしてみると、最も構成比が高い販売促進費と次に高い運賃保管費の項目が前年に対して増えているのがわかる。顕著に伸びている項目として経費・償却費があげられる。
運賃保管費については流通業界における人手不足による料金の高騰が要因と考えられる。販促・広告・経費については決算の中で国内外の投資を増やしたことによる費用増加と説明されている。ここから考えられることは海外での投資は売上伸長につながったが、国内については広告投資による売上増が弱かったという2点になります。

・セグメント別の売上・利益状況について
海外とその他事業(健康事業)以外でのすべてのセグメントで売上・利益ともに苦戦をしている状況である。
カテゴリーレベルで見てみると育児用ミルクと健康カテゴリー以外のすべてのカテゴリーで前年割れを起こしている。各カテゴリーとも売上岩盤となる主力ブランドにおける売上減を新製品やサブブランド投入でもカバーできていない状況かと推測できる。

・海外事業の売上・利益について
海外事業については売上構成の13%程度ではあるが、各地域とも2桁での伸長をしている。
特に中国においては、投資国であるが利益率が4.8%と国内と同水準を達成しており、中国市場での売上が拡大すれば、全体利益の向上が見込めるビジネスである。

ASEANと北米においては、現地小売店への配荷拡大を目的とし、営業体制を強化している。
当初計画でも売上増に対して、利益減で組まれていたことからビジネスの初期成長フェーズにあると考えられる。

一方で中国においては1,2級都市への配荷拡大のために営業本部を設置し、オフラインの強化をするだけでなく、中国市場を牽引しているEC(天猫など)への積極投資を行っている。ビスケット市場を例にしてもEC比率が20%に達している状況と説明されている。
その中で各ECと協業し、限定品の発売によるラインナップ拡張・デジタル広告への投資による効率的なマーケティング活動を行い、EC売上をZ比400%で達成している。オフラインでかかる販促費が極端に低いECでの成功が中国での高い利益率を実現させているのではないかと考える。

今後については以下のように考える。

・国内市場において
売上岩盤になっている食品・菓子事業においては主力商品の売上岩盤を維持し、伸長カテゴリーである健康事業をいかに伸ばしていくかを考える必要がある。

・海外市場において
ビッグマーケットである中国市場の拡大(特にEC)による全社利益の改善とその他国での
売り場拡大・認知向上による成長へどれだけ投資できるかがカギになる。

・カルビー 決算分析

次に業界2位のカルビーについて読み解いていきます。

・売上高/利益について
売上高については前年同等であるが、利益については営業利益でZ比101%, 経常利益Z比105%と伸長させることができている。このことから①製造原価②販管費用のどちらでコストが削減されているかを考える。

まず売上原価については前年に対して-4%となっており、コスト削減されている。
次に販管費を見てみると販売費(販促・広告費)が上昇しているのがわかる。この要因については説明されており、新製品「とうもりこ」および「えだまりこ」をTVCMと共に全国発売をしているため、それに伴う小売への営業コスト・広告費が増加している。

・国内売上について
スナック菓子の73%を占めるポテト系スナック分野についてはポテトチップスの伸長に加えて、新製品の「とうもりこ」および「えだまりこ」の上乗せがあったことで無事に伸長、シリアル部門がフルグラのリニューアルやSサイズ発売をしたが横ばいという状況だったが、ベーカリー事業譲渡によるその他部門の減少が大きく、全体では減収となっている。基盤事業については進捗傾向にあると考えられる。

・海外売上/利益について
海外の売上比率は16%となっており、投資拡大のフェーズにあると考えられる。
スナック部門については18年10月に英国のSeabrook Crisps Limitedの事業を買収したことにより、大幅増収となった。その他国においては発売を開始した現地ブランドが少しずつ売上を拡大している状況である。
シリアル部門についてはフルグラの生産拡大に伴い、越境ECと中国国内ECへの本格参入による増収となっている。

利益については、北米事業において17年にHervest Snaps という現地ブランドの売上不振からパッケージリニューアルと新フレーバー追加を行うが、うまくいかず、工場稼働率の低下と廃棄コスト増によって収益悪化していた。それが18年に入り、廃棄コスト削減と販促効果が堅調に推移し、利益改善されたことで伸長できている。

中華圏においては越境ECと中国ECに参入したことで、販管費の低下による増収を達成することができた。英国においては事業買収・その他においては拡張段階のため営業・販促費を投資している状況となっている。

今後については以下のように考える。

・国内市場において
売上岩盤であるスナック市場は競合も激しいため、売上維持と効率的な広告投資による利益改善を図っていく。多様なニーズへの対応とインバウンド需要の刈り取りを目指し、商品ラインナップの強化を図る。まだ伸長余地のあるシリアル市場では朝食という限定された使用シーンを拡張するために、ライフサポート食というリブランディングを行い、健康価値の向上とシーンの拡張を狙っていく。

・海外市場において
中国市場におけるECチャネルの強化とその実績をもって小売店舗への進出による増収を狙う。その他国において地域ブランドへの積極投資による規模拡大を狙っていく。

森永製菓 決算分析

最後に3番手の森永製菓の決算書を読み解いていきます。

・売上高/利益について
売上高については前年同等であるが、利益については営業利益でZ比102%と伸長させることができており、過去最高益を達成することができている。

費用項目については、売上原価は1.6%程削減できており、効率的な生産活動がされている。販管費については広告宣伝費と運賃保管費がともに大きく増加している。運賃保管費については物流コストの上昇があり、外部の影響も大きいため、コントロールが難しい。
広告宣伝費については、次世代ブランドの育成への費用投下とTVCMに加えて、積極的なデジタル広告への投資が増加要因であり、これは意図的な増加となっている。

・セグメント別の業績状況について
森永製菓はB to C事業だけでなく、卸売りと不動産というB to B事業も持っていることが他のお菓子メーカーとの違いになっているが、売上のほとんどが食品事業の構成のため、現時点での差別優位性は弱いと考える。
岩盤となる食品事業においては菓子・冷菓カテゴリーは厳しい状況となっているが、健康がZ比105%で大きく伸長できている。利益率でみても、菓子10%、冷菓11%、健康21%と非常に収益性がよいカテゴリーを伸ばせている。
健康事業を大きく支えているのがinゼリーである。競合の新製品投入もあったが、猛暑による熱中症対策を切り口に新製品を投入し、シェア40%をキープしながら、前年以上の売上を達成することに成功している。
海外事業は北米・中国圏・インドネシアに進出するが、まだ5.9%と低い割合になっている。

今後については以下のように考える。

・国内について
売上岩盤である菓子カテゴリーにおける収益の維持と健康カテゴリーにおけるシェア拡大と利益貢献を2つの柱にした戦略を策定する。注力ブランドを選定し、広告宣伝費の効率化を図っていく。菓子カテゴリーにおいてはチャネルやニーズ毎に製品をカスタマイズし、多品目小ロットでの需要拡大を図っていく。健康カテゴリーにおいては女性の社会進出・高齢化・猛暑化など多様な健康ニーズをとらえ、各カスタマーへの価値提案に注力をしていく。

・海外事業について
海外事業については現在、売上構成6%とかなり低い状況のため、新規参入による投資拡大を図る。特に中国市場においては、ECの伸長率に対して、構成比が小売実店舗に偏っているため、EC開拓が最優先事項として進められる。
その他国については、まだ競合企業が現地参入していないタイを拠点化し、東南アジア諸国への販路拡大を目指すことで差別化戦略を図っていく。

・3社比較分析について

ここまでそれぞれの企業の財務状況と戦略について簡単にレビューしたので、指標を統一して比較していきたい。

・利益率について
売上高・利益は事業規模・品目数によって左右されるため、利益率を指標としてみました。
その結果、売上高が最も高い江崎グリコが最も利益率が低い結果になりました!びっくりですね。
最も利益率が高いのは2位のカルビーで、2位に1%差をつけて、唯一2桁でした!
お菓子メーカーは品目数がかなりあるので、業界的に低い水準になりやすいのかもしれません。

・費用構造について
利益率に大きな差が出ていることがわかりましたので、今度はコスト面から比較したいと思います。
メーカーが特に気にするコストである①売上原価(製造コスト)②販管費の2つを指標に比較をしていきたいと思います。

① 売上原価(製造コスト)について
製造コスト面でみると面白いことに利益率No.1であるカルビーが最も売上原価が高く、1番低い森永製菓は、カルビーに比べて7%も低いという結果になりました!江崎グリコとカルビーの方が規模の経済が働く印象があるのですが、決算書を読むと、原材料費の高騰による影響が大きそうな印象を受けます。
17年台風の影響で、馬鈴薯ジャガイモの供給が出来ず、各社ポテトチップスの生産を休止しました。18年はその反省を踏まえ、供給難にはならなったものの、例年以上に原材料費がかかっています。3社ともチップスブランドは持っていますが、カルビーはスナック菓子売り上げの7割がポテト系チップスであり、チョコやビスケットを主力とする2社に比べてその影響が大きかったと考えられます。ブランドポートフォリオによる差がこういった部分に影響を与えるのは1つ発見でした。

② 販管費について
販管費の面で見てみると、江崎グリコと森永製菓が同等値であり、カルビーが34%と競合2社よりも10%も低いという圧倒的な差が出てきました!
販管費のうち、プロモーション費(販促費&広告宣伝費)に目を向けるとカルビーは16%と単独で10%台という効率的な運用をしていることがわかりました。
販促費は流通活動に伴いかかるので、おそらく差がないとすると広告費でかなり差が出ているのではないかと考えました。

そこで興味本位で広告宣伝費ランキングを見てみたところ、業界平均でもカルビーはかなり低く、ここで差が出ていることが証明されました。

カルビーは“えだまりこ“と“とうもりこ”の全国発売のタイミングでTVCMを入れているのですが、この数値をたたき出しているということは他のブランドにおいては、かなり割り切ってデジタルシフトがされているのかもしれません。

・海外売上比率
売上に占める海外比率を比べてみると、カルビー16%と江崎グリコ13%に対して、森永製菓だけが6%と大きく差をあけられている状況がわかりました。
今後、国内需要が大きくは伸長しないことを考えると海外需要の拡大は必須になります。当然投資が必要になってくるため、森永製菓は今後2社以上に力を入れていく関係上、収支が厳しくなるかもしれません。

・4P分析
最後にマーケティング戦略の比較をするために4P分析をしていこうと思います。
3社とも並べてみたものの、正直そこまでの差がない印象は受けました。

差が出てくるとしたらProductとPlaceかなという印象。

Productについては、菓子市場における売上増が期待しにくい中で、伸長する可能性があるとしたらウエルネス・健康市場である。江崎グリコはGABA・SUNAOなどの健康ブランドを持ち、森永製菓はinゼリーやマクロビ派ビスケットなどを持つため、これらのシェア・価値拡張をしてくるだろう。反して、カルビーはスナック菓子がメインで健康分野を持っていないため、これから新規開発になり、その分の遅れを抱えている。

Placeについて国内は正直、流通取り組みによる棚割りの奪い合いな気がします。EC強化やポッキーにみられるD to Cのビジネス開拓は可能性あるかもです。
それ以上に海外チャネルでの成否は分かれそうな印象です。江崎グリコとカルビーはすでにある程度進出しており、拡張投資になる中で、森永はこれから初期投資をしていくフェーズで、1番インパクトある中国市場でまだECに進出しきれていないのがかなり響いてくる気はしています。とはいえ、インバウンド需要があるビッグブランドがあればすぐに認知拡散される可能性もあるので、ここはもう少しきちんと見るべきだと思います。

・最後にまとめ

今回お菓子メーカーを調べてみて、感じたことは大手メーカーには売上最大化の難しさが付きまとうということです。国内食品事業においても高い成長率は見込めないので、投資家的には売上の維持拡大と利益率の向上が判断基準になってくるのではないでしょうか。

BtoCモデルにおいては下記のように売上は因数分解できるかなと考えております。

売上=顧客数(↓)×1回あたりの購買単価(↑)×購買頻度(↑)
矢印は今後の動き方を入れてます。

日本市場においては世帯数が減少するため、顧客数の急増は見込みにくく、今後売上を伸ばすのであれば購買頻度をあげること、そして購買単価を上げる方法が考えられます。

各社が戦略に入れている多品種・多容量化ですが、ニーズや用途ごとに品目数を揃えることで同一ブランド内でも購入機会がアップするため、購入頻度の向上になります。
また健康や時短の高付加価値をつけることで、商品単価の増加も見込めます。
売上においては各社ともシェア・顧客数の増加以上に、現ユーザーの囲い込み・単価アップが最良手であるため、ブランドスイッチされるくらいなら自ブランド内での買い回りを増やしていきたいということで、こうした小ロット多品目戦略がとられていると考えられます。

あと販促費は流通との付き合い上カットは難しいので、自社の広告費の効率化をすることで利益改善を図っていくのがこれからのメーカーの動きではないでしょうか。

販売チャネルとしては、店舗販売においてはより大規模消費が見込めるインバウンド店舗への取り組みが強化する必要があると思います。(20年以降は怪しいですが・・)
あとはECへの強化と海外展開については売上向上と利益改善の両方の点から必要になってくるので各社とも投資していくことが考えらえます。

勉強不足で読み解きというよりも現状を分解してみてるだけという感じはありましたが、人生で初めてこんなに真剣に決算を読み、意味を考えたのでとても勉強にはなりました!
せっかくの機会があったので今後も続けて、場数を増やしていきたいと思います!






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