名門再生 太平洋クラブ物語 を読んで まんじりとしない気分を思索する

今回は書評です。
今回の書評、note記事として公開するかどうか、かなり迷いました
しかし、個人的な読書の積み重ねで、このような書評になった と言うことで、あえて公開することにしました。

今までの小理屈野郎なら、爽やかな読了感と、内容に対する賞賛だけですんだと思うのですが、今回はかなり辛口になりました。

ただ間違えてほしくないのは、著者自身を否定しているわけではなく、単に内容を個人的なスクリーンを通して見た、というだけ です。
著者の筆致は非常にリズムよく軽快に読むことができます
内容も、それなりに納得できるものです。

では、書籍のメタデータを貼っておきますね。

今回も読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。

・;キーワード
→;全文から導き出されること
※;引用(引用の背景で示されていることもあります)
☆;小理屈野郎自身が考えたこと


書名 名門再生 太平洋クラブ物語
読書開始日 2022/11/13 13:37
読了日 2022/11/15 18:25

読了後の考察

ちょっと読了感はよくない。
著者の野地氏は、この作品を書く理由になったのが東京オリンピックの元理事で電通元幹部の高橋氏が勧めてきた、ということ を最初に明確に記述している。

※高橋氏の汚職については、以前note記事を書きました。

その勧め方がまず、高橋氏が野地氏に「本の企画」、ということで話を持ってくる。基本的にはこのようなものは著者自身が探してくるものではないのだろうか ?もしくは著者と編集者がともに話をしながら煮詰めていくものではないのか 、と疑義を感じた。要するにあまり自発的な動機を感じなかったのだ。

そのあと「この本を書いたら強運になる 」、というような話で進めていく。
更に

ノンフィクションの主人公にするなら運が強い人がよい。それならゴルフだ。今、ゴルフに関係している人たちは運が強い。ゴルフだけだ、コロナに負けずに競技人口が増えているのは。

というちょっと現実を完全に把握しているのかどうか?というようなことをいって話を強引に進める

そして

それこそ運が強いから再生できたゴルフ場がある。太平洋クラブを知ってる?韓俊さんが社長をやっている。韓さんが立て直したんだ。とにかく一度紹介しよう

と強引にクロージング。

この裏には何が隠れているのか?著書を見ていても写真が非常に多く、クラブでのプレーの(おそらく)接待(体験といった方がよいのかもしれない)をも含んだ著作 になっている。
著作、というよりは電通OBが関わった、著作上梓という太平洋クラブのステルスマーケティング 、という感じにもとることができる。
現在オリンピックの賄賂問題で収監されている人だけに、そう考えてしまうのかもしれない。
このような感じで東京オリンピックも「口利き」をしていたのではないか? と思った。
それに乗ってしまう著者の読みの甘さ がものすごく印象に残った。
特にこの著書を読む前には白馬岩岳スキー場の再生についての著書を読んだだけに、著書自体の詰めの甘さ、というものも痛感した。

野地氏、この著者はひょっとしたら提灯記事を書くのが仕事になっているのではないか、と思い、少し残念な気持ちになった。

キーワードは?(Permanent notes用)

(なるべく少なく、一般の検索で引っかかりにくい言葉、将来もう一度見つけてみたいと考えられる言葉)
#ゴルフ場
#電通のやり口

概略・購入の経緯は?

Kindleで野地氏の著作のフォローを入れている。その中で新刊が出たとのことで通知が来ていた。
しばらく積ん読していたが、今回掘り出しての読書開始とした。
太平洋クラブは、ゴルフの名門クラブ。ここはいったん経営破綻している。その破綻したゴルフクラブをいかに再生したか、という物語、とのこと。

本の対象読者は?

ゴルフを趣味にしている人

著者の考えはどのようなものか?

→企業再生の道をルポとして描いた、ということだがかなり詰めが甘い

企業の方針としては、潰れかけのクラブ、しかし隠れたよいところを持ったものを買収して、そのスタッフたちにしっかりとした教育を施すことにより業績を回復させる 。そしてその教育とは、それぞれがそれぞれなりに考えながら仕事をする習慣をつけさせる、ということが根底にあるもの 、という趣旨。
それがうまく回ったと言うこと。

その中で「イズム」というクレドと企業指針を総合したものについて触れている。このテクニックは在野の企業でも使えるような気もする。

その考えにどのような印象を持ったか?

・企業再生の手法としては確かにうまくいけたと思われる。そして、ゴルフ業界というのは密にならないスポーツと言うことで神風が吹いたと言うところもあるだろう。
・韓国人の経営者、という色眼鏡で周囲は見がちだが日本人以上に堅実でしっかりしているのではないか、と思われた。
・マルハングループの歴史についても触れている。確かに著書の中では必要かもしれないが、結局マルハングループの広告になっているだけではないか 、と勘ぐってしまった。
若い人たちが一番教育効果があった とのこと。結局企業の雰囲気や風土を換える、というのは先代が経営から手を引く(世代が変わる)しかないのかもしれない

印象に残ったフレーズやセンテンスは何か?

日本のゴルフ場の数は世界3番目

(その他の順位は著書43~44ページ)

マルハンが買収にかけた金額は約270億円

→☆それなりの格式のあるコースを含んでいるのにかなり安く購入したと思う。

マルハンのビジョン(これはあえて引用しませんでした)
→☆丸写し。これなら広告と捉える読者も出るはずだ。

日本のビジネスパーソンは高級化すること、富裕層向けのビジネスに対して根強い抵抗感を持っています(中略)何をやるにも横並びが一番で、目立ちたくないという意識があるからでしょう。無意識のうちにそれがすり込まれている。

→☆これが成長のない30年(平成年間)を作ったともいえるのではないか?

→中国の工業化、安い製品の輸出増大についての二つの方策

1.安売り戦略。日本のメーカーが採用
2.差別化戦略。韓国のSamsung、台湾のTSMCなどが採用

☆ここでもこの理論を他の人から引っ張ってきている (野口悠紀夫氏;一橋大学名誉教授)
うーん、著者が自分で考えているところ、あまりなさそう。

歌手の方でも歌が上手だから人気が出るわけではない。俳優も演技がうまい順番に売れているわけではない。その人の個性があって、そして、クオリティが結びつくから売れる(中略)オリジナリティを明確にして、そしてクオリティを上げていく。そうでないと売れる商品になりません

→☆これはインタビューされた人の言葉。なるほどな、と感心。

経営状態がよくないゴルフ場は大手運営会社に売却するか、もしくは太陽光発電所などに変わった。

→☆ズバリスキー業界でもおなじようなことが起こっている。斜陽になる産業クラスターはおなじような経過をたどることが多いのではないかと感じた。

FacebookだとかInstagramに載せたりもしましたが、ほぼほぼ毎日、動画を上げるのが一番重要(中略)登録者が増えているチャンネルはどこも毎日のように動画を上げてます

→☆ネット上で登録者を増やす一番のコツは毎日アップすると言うことなのかもしれない。要するに露出を増やす ということだ。これが収入にもつながっているようだ。
小理屈野郎はnote記事を定期的にを週3回アップしているが、個人的にはここまでが限界かと考えた。これを継続することの方が大事 なのではないかと考える。

動画を見たとおりに再現できる人はすでにゴルフがうまい人なんです。

→☆スポーツでも手を動かす系の仕事でもおなじようなことがいえるのではないか?それを忘れてついつい背伸びをしてしまう(苦笑)

類書との違いはどこか

ゴルフ場の再生についての著作、というところ

関連する情報は何かあるか

各種の著者が導きたい結論を補強するデータや論陣

キーワードは?(読書ノート用)

(1~2個と少なめで。もう一度見つけたい、検索して引っかかりにくい言葉を考える)
#イズム
#やる気を出させる

まとめ

内容としては、もし高橋氏の賄賂の件がなったらそれほど引っかかることもなかったのではないか?
しかし、今回少し横からの視点で読んでみたが野地氏の著作、どれもそれほど深いものではないのかもしれない、と思った。


ちなみにこのnote記事執筆時点で著者自身のホームページを探しましたが、該当はありませんでした。著者の名前でいろいろと検索をかけてみましたが、今回の東京オリンピックの賄賂事件についての著者のコメントや関連する言葉などはありませんでした。
できれば一言でもよいからコメントがあれば読了感にもう少し納得感が出てきたのではないか と考えました。
そして今回なぜ、著書で高橋氏とつながりがある(取材源に近い存在だったはずなので秘匿しても問題なかったと思うのだが)と言うことを明言したのだろうか?と思いました。これは個人的には大きな謎でもありました。
本を書いているときはそれほど大きな問題になっていなかった、というのが一番大きな問題ではあろうが、少し脇が甘い、というか残念、という気持ちになりました。

氏は今後どのような著作を上梓するのかある意味楽しみではあります。

なんだか歯切れの悪い書評のnote記事になってしまいました。


よろしければサポートお願いいたします。 頂いたサポートは、書籍購入や電子書籍端末、タブレットやポメラなどの購入に充当させていただきます。