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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.69

【過去の投稿です】






[78枚目]●テイシャーン『フォー・ザ・セイク・オブ・ラブ』<カオス/コロムビア>(93)

https://www.discogs.com/ja/master/233705-Tashan-For-The-Sake-Of-Love

忘れられがちだが、忘れるには惜しいテイシャーン。仁王立ちジャケットの89年作『オン・ザ・ホライゾン』が最も有名ではなかろうか。1stアルバムは86年<デフジャム>発の『チェイシン・ア・ドリーム』。今回ご紹介のアルバムは3作目となる。これから9年後の02年に4作目を出してはいる。その後を調べたら、現在は本名のトーマス・ジェローム・ピアースからテイシャーン・ピアース、あるいはテイシャーン7と名乗り活動しているようだ。実は、フェイスブックで彼をフォローしているが、私が日本人と名乗ったら、「音楽関係者か?日本に行ってみたい」と気さくに呼びかけてきた記憶がある。いつ頃の事だったか不明だが、その時はテイシャーンで登録していたと思う。

当時、一世を風靡していたニュージャック・スウィング的な部分もあるが、波に乗っている(もしくは呑まれている)とは言い切れず。マーヴィン・ゲイとの共通点も指摘されるように、オールド・ソウルの感覚を持つが、チラチラ感じる程度(というかうまい具合に秘めている)。むしろ、アーヴァン系の要素が強め。うねるようなグルーヴとはまた違う。と言ってもクール一辺倒ではない。どっちつかずな書き方だが「テイシャーン調」は確かにある。夢中になる人ではないけれど、サウンドの心地良さは感じる。ゆえに、たまーに聴きたくなるのだ。4曲はNYのスタジオだが、他はロンドン録音&ミックス。確かにUKソウル(或いはグラウンド・ビート)的寄りのサウンドなのかも知れない。ニュージャック・スウィング、グラウンド・ビート、ミネアポリス・ファンクは各々影響し合ってトレンドを形成したとの事だが(実は私はあまり詳しくない)、テイシャーンが最も近しいのはグラウンド・ビートではなかろうか。ソウルⅡソウルに関してはあまり聴き込んでいないけど、キャロン・ウィーラーやヨー・ヨー・ハニーは割と好きでよく聴いていた。そのサウンドを何となく思い出すのだ。

①は、スタートに相応しく乗りの良い曲。キーボードのスラー音が導き、ベースやドラムのリズム・パターンは面白いし、サウンド・クリエイターとしてのテイシャーンの力量が十分窺える。②タメの効いたリズムに、オールド感覚の強いサウンド。③風のような女性コーラスでスタートする自然な乗りの一曲。タイトル曲④はじんわりと来るバラード。⑤もバラードで、マーヴィン風ではあるが、正直個人的にはあまりときめかない。⑥でややリズムを取り戻す。アーヴァン・テイストも。⑦⑧はUK度が強め。⑦は無難なR&Bソング。⑦と⑤でシングル化されている。⑧はサッパリしたサウンドだが、ビートの刻みがメリハリ十分。低音部もカッコイイ。⑨も⑧に似ているが、メリハリがややゆるめで、良い意味でリズムの引きずり方が印象に残る。⑩は、シンシナティ出身でソウルⅡソウルのメンバーでもあった女性シンガー、ペニー・フォードとのデュエット。いかにもUKフォームな熱唱で、いわゆるゴスペルぽさとは無縁だ。⑪はラス前らしいブラスも効いた派手目の曲。⑫何気ない曲だが、シンコペーションが活きている。ラスト⑬はマーヴィンの「アイ・ウォント・ユー」を取り上げている。変にマーヴィンにおもねらずテイシャーン調が貫かれている。

① Tempted

② Been a long time

④ For The Sake Of Love

⑤ Single And Lonely

⑥ Still In Love

⑦ Love is forever

⑧ ROMANTICALLY INSPIRED

⑨ Control Of Me

⑩ Insane

⑪ All I Ever Do

⑫ Love Of My Life

⑬ I Want You



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