見出し画像

ミニ歌集刊行記念会感想

12月10日(日)東京西荻窪にある今野書店さんのイベントスペースにて「短歌を詠んだら歌集を編もう。から生まれた、10冊のミニ歌集刊行記念会」という催しが行われました。

 9月で終了したワークショップからはや三ヶ月。10冊のミニ歌集はSPBS渋谷本店での刊行フェアを皮切りに旅を続け、2023年12月現在、京都の恵文社一乗寺店、東京の紀伊國屋新宿本店にまで航路を延ばしている。どんぶらこどんぶらこ。ワークショップの仲間とはその後、文フリの時に何人かの方とはお会いできたけれど、一度に皆さんとお会いするのは久しぶりだ。電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、中央線西荻窪へ初上陸。思っていた以上に繁栄した駅前の風景にたじろいでしまう(思えばわたしの緊張はこの瞬間から始まっていたのではないかと思う)。
 会場である今野書店さんの地下スペースに着くとすでに設営準備を始めてくださっていて、わたしが手伝えることはもうなさそうだった。あ、薄暑なつさん(Thank you for praying)、ワークショップの時より髪伸びたな…かわいいな。今回のイベントの主催者でもある里十井円さん(ハルピュイアイ)から簡単な流れの説明を受けた後、「座ってくださいね」と言われ、ペコペコと頭を下げながら座ったが、その後も「受付、どうします?」「来場者名簿あります?」「参加費どこに入れます?」などを決めるやり取りが頭上で交わされ、わたしは全く役に立てることもないのにその都度、無駄に立ったり座ったりを繰り返し、手伝う気持ちはありますアピールをしていた。開場時間までまだ20分以上あるぞ。談笑ってどうやるんだっけ?いや、そういうの考えて喋るのは談笑とは言わんか。あーでもこの感じなんかちょっと懐かしいな。ワークショップ中もこんな感じだったな。しかし、あの頃よりちょっと馴れ馴れしくなったわたしは、薄暑さんに「髪伸びましたね」と話しかけることができた。談笑成立!
 イベントの内容は、歌集の朗読とトークによる2部構成で、わたしは朗読を選択した。朗読なら自分の歌を読めばいいから大丈夫だろうと思っていたのだけど、考えてみたら人前で自分の短歌を音読するなんてやったことなかった。急に緊張しだして無口になる。いや、そもそも会場についてからほぼほぼ喋ってないからわたしが突然無口になったことは誰にも気づかれていないはず。しかし、真野陽太朗さん(水路をひらく)が冗談混じりに「紺屋さん今日全然声聞いてないですけど練習とかしなくて大丈夫ですか?」などと言ってくるもんだから、緊張バレてる!と焦ってしまった。これはたぶん緊張をほぐすために仰ってくれた真野さんの真野さんらしいまっすぐな優しさだ。
 じゃんけんの結果、わたしの朗読は5人中4番目となった。安心安全の4番手じゃないか。大丈夫だ。よし。もう一度最後に歌を確認しておこう…て、手ぇ震えてるやん!まじか!背水!

 17:00になり刊行記念会はスタートした。

はじめに、イスラエル軍の大量虐殺によるパレスチナの犠牲者へ一分間の黙祷を捧げた。

まずは歌集朗読から。

・真野陽太朗(水路をひらく)
・薄暑なつ(Thank you for praying)
・里十井円(ハルピュイアイ)
・紺屋小町(ぐらでーしょんきせつ)
・太田垣百合子(あんろろめら銀河)

朗読した順

 それぞれ、ミニ歌集の中から約三十首を読み上げた。文字で読んでいた歌を耳で聴くとまた違った良さがあるなと感じた。ましてや詠んだご本人の声で聴けるのだから心地が良いはずだ。すっと心に届くかんじ。わたしの朗読は手も声も震えちゃってちゃんと声出てたかもわかってなくて記憶喪失気味だった。ただ、普段から短歌詠むときは声に出すようにしているので普段の感じで読めていますようにともう一人のわたしが祈っていた。しかし、わたしの次に朗読をされた太田垣百合子さん(あんろろめら銀河)の時に、なぜか咽せてしまい、ものすごく咳が出そうになるの必死になって堪えていた。咳を全力で堪えるあまり、右目から涙が出てきてしまい、わたしは太田垣さんの朗読に感動して泣いちゃったおばさんみたいになっていた。たぶん、朗読を聴いている方は太田垣さんを見ていたと思うのでわたしの目から一筋の涙が溢れていたことには気づいていないであろう。気づいていないであれ。気づかれていたとしても朗読に感動していると思ってけれ。
 続いてトーク担当の方が前の席に並び、朗読組は視聴側へと席を移動する。

・清水水晶(トランクイロ)
・山口ヤスヨ(ただいま)
・タカノリ・タカノ(タンカ タカノリ・タカノノタンカ)
・木村八朔(セミダブル・メルト)
・堀優季奈(HAPPY)

座った並び順

 里十井さんが司会進行役を務め、みなさんが質問に答えていく。タカノリ・タカノさん(タンカ タカノリ・タカノノタンカ)はお仕事のため欠席ではあったが五客並んだ椅子のセンターに歌集(タンカ タカノリ・タ…以下省略)が堂々と置かれた。そして質問には事前にテキストで回答をしてくださっていた。わたしの席の目の前には堀優季奈さん(HAPPY)が座られていた。ん?なんだか眩しいぞ。キラキラ光る何かが…あ、あれは!薬指にエンゲージリング!!堀さんめっちゃおめでとうございます。堀さんは岡野大嗣さんに「ホリプロっぽいよね」って言われていて、わたしもあの日から堀さんがホリプロの娘にしか見えない。
 トークでは現実においてどういう時に短歌を作りたくなるか?という質問と好きな造本についてだった。木村八朔さん(セミダブル・メルト)から学生新聞の記者だったことや、歌集タイトル「セミダブル・メルト」の由来を聴けたり、清水水晶さん(トランクイロ)が「ジャケ買いってしたことないんです」と仰っていて、そう言えばわたしもないかもな…「ジャケ買わない」の方が多いかも…と思ったり、ワークショップの時には分からなかったみなさんの事が少し知れたような気がして嬉しかった。それにしてもみなさんお話が上手。特に山口ヤスヨさん(ただいま)は結社の話やご家族の話を笑いを交えながらお話されていて、なんか講演会とかに呼ばれて「子育てと短歌」みたいな題材で話して欲しいとか思ってしまった。
 歌集刊行記念会は無事に終了し、再び談笑の時間が始まるが、こういう時の立ち位置が毎回全く分からない。そわそわしているとワークショップのお仲間たちから「朗読良かったです」と言葉をかけられ、ちゃんと声出てたんやという安堵と共に、うれしくてうれしくてデレデレしてしまった。それから、歌人の山階基さんが見に来てくださっていて、山階さんに朗読を褒めていただいた。

山階さんに朗読を褒めていただいた。

大事なので二回言う

 思えば去年の文フリ、わたしはまだ短歌界隈の知り合いがひとりも居らず、山階さんの第一歌集「風にあたる」を山階さんから購入するためだけに文フリに行ったのだ。しかし、その時はご本人を目の前に緊張して何も言えず、その場を離れてしまったのだ。おーいあの日の小町よ、君は一年後、あの山階基さんとお話させていただけるのだぞ。なのになんで君は第二歌集「夜を着こなせたなら」をまだ読んでなかったんだ!バカタレー!(帰りに今野書店さんで即購入)本当に刊行会に来てくださっただけでもありがたいのにお話までできて、しあわせすぎる。そして、左右社の筒井さんも途中から来てくださっていて、筒井さんにお会いした時にわぁ〜つついさーん♪ってなってうれしすぎて思わず筒井さんの手を握りそうになったのだけどギリギリで、ハッ!馴れ馴れしいが過ぎる!と手を引っ込めてしまった…。会えるだけでうれしくなる方。

 帰りの電車の中でわたしはひとりほくほくしていた。石焼き芋を食べてほくほくしている人のほくほくみたいにほくほくしていた。別れる時に何人かの方と、「じゃあ、また、どこかで」ってあいさつ、よかったなぁ。これって短歌を続けていたらまたどこかで会えるよねってことだよね。直接会わなくても、誌面でお名前見かけたり、書籍になったり、賞とる人とかもいるかもしれないな。どんなかたちでも、また、どこかで、会えますように。

今回の刊行記念会に参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。里十井さんをはじめ、準備をしてくださった受講生有志の皆さんも本当にありがとうございました。SPBSの北村さん、いつもありがとうございます。

 その後。
 山階さんがSNSで朗読を褒めてくださったつぶやきをスクショして眺めるという気持ちのわるい行動で余韻にひたる日々を送っている。