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DX時代の社長の鉄則

DXは目的か手段か?
今のところ、実に曖昧である。目的なきDXが横行していると言う理解が現実的である。
ある意味言い古されているが、IT活用というのは目的ではなく手段である。現時点では、DXとITはあまりにも混同され過ぎている。
このままでは、本質を見誤る経営者も続出しているだろう。
もちろん、DXにはITと違って、社会全体や世の中を変革すると言う意気込みや挑戦的な取り組みも含まれているので、それはそれで私も歓迎はしている。
DXの意味をシンプルに考えれば、このことは比較的容易に理解できる。
目的は、デジタル技術を駆使して、世の中を変革する。当然、良くするということしかない。
こういう理解で異論はないだろう。

どう良くしたいかは、生活者や経営者の考えていくべきことである。
決して、IT業界やDX指南者などのビジネスを提供する側だけが考える話ではない。
社長として、こういう変化が激しく、経営環境が複雑でしかも、分かりにくい用語や技術が蔓延している中で、本質的な考えがブレないことが何よりも大切だ。  

目的と手段の話は、できるだけ身近で考えると分かり易い。
私は昔からIT活用は車の運転に例えてきた。電車でもバスでもよいのだが、車の方が馴染みは深いと思う。車を運転する。という行為は、これは基本的には手段である。
運転して何をするかである。ドライブに行くのか、観光地へ行くのか、人を運ぶのか、モノを運ぶのか・・こんなことが考えられる。
これは、自動運転になっても基本は変わらない。運転が楽になるという話である。 

ITに置き換えて言うと、会社にパソコンやスマホを購入して充実させることは当然目的ではない。これだけだと手段にもならない。車庫に車を止めておくだけのことだ。パソコンもスマホも使ってなんぼである。
しかし、ただ単に使いなさいでは、免許取りたての若者に、とにかく車を運転しなさいという話と大して変わらない。
やはり、会社で使う以上は、なんのために使うのかが大切である。これぐらいのことは分かっているという社長も多いだろうが、分かった気になっている人が大半である。
もちろん、IT活用は30年ほど前からでも社長としての経営課題の中心であったことは間違いない。だから、生産性を向上させる、業務を標準化する、無駄をなくする、情報を共有する、営業促進に使うなどなど・・。幾らでも目的はあったはずだ。
ところが、日進月歩のIT技術やサービス、次々登場するIT機器に振り回され、IT関連業者の言いなりになり、任せたIT推進者もブラックボックス化して。あげくには、超アナログ的なキーパーソンの抵抗に遭う。これが典型的な中小企業だ。
少なくともこの20年の社長業と言うのは、ただでさえ、顧客獲得競争の激化やグローバル化の中で、経営者としての責務と仕事は増大するばかり。IT活用で楽になるかと思えば、ますます、IT活用がよく分からない。投資対効果の判別もクラウドサービスとやらが普及したのはいいが、判断を困難にしている。

もちろん、大企業も含めて十数パーセントの上位のエクセレントカンパニーは、IT活用も順調だろう。しかし、それはIT活用に長けているのではなく、根本的な経営の基盤が盤石で、IT活用に合理的にマッチする企業体であったことの証である。
ひどい会社がIT活用で、劇的に変革した話などお目にかかったことがない。
そこに、天から降ってきたようなにわかDXブームである。背景には、グローバル化の中での国のあり方、関連する会社の商売繁盛のための秘策、有り余る補助金の乱立、しかもそれはほとんどがIT活用がらみ。よろしくない思惑が透けて見える。

もちろん、DXは実際には進んでいくだろう。しかし、それを推進する主役となるのは大企業の一部、革新的な中小企業、社会貢献型の起業家などである。
平均的な企業のすることは、生活者と同じ目線で、変わりゆく社会や経営環境に適応することである。それができる企業としての改革をしなければならない。ラストチャンスなのである。

そういう意味では、拙速な改革はできない。社員教育だけやればよいと言うものでもない。当然、最先端のITサービスを入れる事でもない。
原点は、会社の存在意義や価値を再認識して、強みを更に強化する道筋を見通すことである。
企業は人なりというのは当たり前として、環境に適応できる組織に変革するには、人だけでできることではない。
そこに、会社の知的資産や積み上げてきた実績をデジタル化して、次のステージに備えることが最も大切な事である。
今は、DXに踊らされることなく、しっかりと経営の足腰を鍛えなおす時期なのである。

以上

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