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中小企業でも、こうすれば情報収集力が高まる!

 経営資源は、『ヒト・モノ・カネ・情報』だとよく言われる。今回は、この4つの経営資源の中でも、一番わかりにくい情報資源を、中小企業がどう生かすべきかについて考えてみよう。


 具体的に経営資源としての情報とは何かと問われたときに、経営者ならいざ知らず、それ以外の幹部社員、一般社員は、ピンとこないことが多い。特に、中小企業は情報を経営活動に活かすことについては、大企業に比べたら相当劣っている。

 例えば、銀行はシンクタンクを持っているし、他の業種の大企業でも情報収集のチャネルを独自に持っている。何より、大企業に入社する人材は、情報処理に関する素養がもともと高いうえに、大企業が意識的に整備している情報収集の仕掛けの中で、情報をどう収集して業務に生かすかの訓練を受けることができる。大企業は間接部門の人員も数多く抱えられるし、情報収集そのものにお金も掛けられる。中小企業には真似ができないことばかりである。

 このままでは、ますます中小企業は大企業に差を付けられてしまう。では、中小企業はどうすれば良いのか? 情報収集のための仕掛けやお金では、どうあがいても大企業には勝てない。ならば、残されているのは『ヒト』である。社員の情報収集力を向上させることができれば、中小企業の情報収集力は確実に向上する。

●情報に対する感性が鈍い中小企業の社員

 実際の話、中小企業の実態を見ると、社員の情報収集力に疑問を感じることが多い。経営者が有益性や活用法を判断しなければならないような情報を、社員が勝手にシャットアウトしている場合が案外見受けられる。

 中小企業のスタッフは営業部門を中心に、社外に出ると実に様々な情報に接することになる。そのうちのどれだけの情報が、社内で報告されているだろうか? いずれにしても、情報の価値判断(有用か無用か)は、情報に接する人しだいである。情報に一番始めに接する人の、感性や意識、力量が、その企業の情報収集力を決定しているとも言える。

 中小企業の弱みの一つは、社員教育を充分に実施できていない場合が多いことである。筆者は、社員の情報収集力が上がらない原因の一つが社員教育の不足によるものであると考えている。

 例えば、会社や当該部門が必要としている情報はどのような情報なのか、その情報はどこにあり、どんな場合に入手できるのかを、社員に具体的に伝えているだろうか? また、有用な情報が見つかった時にはどのように対処すれば良いのかを社員は自覚できているだろうか? このような基本的なことがらを教育できていないから、情報収集が行き当たりばったりになるのである。

 経営者は、会社の中では一番世の中の動きや自社商品の市場動向、ライバル会社の情報などに関して敏感であるし、そうでなければならない。それと同時に、自社の経営革新や売り上げ向上の施策、あるいはコストダウンに関しての方策などの有力なアドバイザー、アウトソーシング先の情報についても敏感だ。より良いサービス、よりリーズナブルな商品、信頼できる業者の情報にも飢えている。ところが、社員に対しての指示や教育を怠っていることが原因で、こういう情報収集源を失ってしまっている会社が多い。

 商品やサービスにもよるが、企業に営業をかける側から考えると、トップへのアプローチを最優先に活動する。トップに対してダイレクトメールを差し出すのが一般的だが、これだけでは確率が低い。自ずと、テレホンアポイントや飛び込み営業という手段になる。顧客企業の立場で言えば、迷惑なアプローチは困りものだ。できれば、シャットアウトしたい。だが、中小企業の場合、得てしてこういう営業アプローチから有力なパートナーを見つけている場合が多いのだ。

 たとえば、最近では複写機の販売会社が、複写機のコストダウン提案だけでなく、複写機を核に情報・通信機器全般のコンサルティングに応じることで、中小企業から重宝されている。カタカナ生保・損保の躍進も、単なる商品販売だけでなく、企業の福利厚生から資産運用全般へのコンサルティングに応じる中で実現しているのだ。飛び込みセールスをかけてくる業者は単なる物売りどころか、有力なコンサルタントに変貌しつつある。

 ところが、事務所に飛び込み営業で来た人の話をまともに聞かず、とにかく追い返すことしかしない中小企業の社員は多い。「飛び込み営業=不用な情報」という先入観で対処しているのだ。だが、飛び込み営業を全てシャットアウトしていては、有用な情報まで取り逃がしてしまうことになる。

●トップが先頭に立って社員教育をやり直せ

 経営資源としての『情報』とは、実は日々の企業活動のいたる所に散らばっている。それら情報の有用性を、社員が認識できるかどうかだけの問題なのだ。少なくとも、自社で必要な情報のきっかけをつかみ取るためのポイントとなるキーワードの共有や、集まった情報をどう活用したのかをしっかりフィードバックする習慣づけを組織的に行うことは、比較的簡単にでき、効果が出やすい方策である。

 そのためには、経営トップが中心になって社員教育をやり直すしかない。なにも、型にはまった集合研修をやれというのではない。トップがどんな情報を求めているかを明確にし、きちんと部下から情報をあげさせ、的確なコメントを付けて返す…日常業務において、この繰り返しを行えばよいのである。逆に言えば、きちんとしたフィードバックがなければ、社員の情報収集力は永遠に鍛えられることはないだろう。中小企業の情報収集は自然に高まってくるものではない。良い情報を見分けられるように社員を鍛え、偶然ではなく必然として、良い情報を集められるように工夫すべきなのである。

(本記事は、「SmallBiz(スモールビズ)※」に寄稿したコラム「近藤昇の『こうして起こせ、社内情報革命』」に、「第74回 中小企業でも、こうすれば情報収集力が高まる!」として、2004年5月24日に掲載されたものです。)
※日経BP社が2001年から2004年まで運営していた中堅・中小企業向け情報サイト

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