映画「チャンシルさんには福が多いね」感想(ネタバレあり)

見た翌日に、あらためて良かったなあとじわじわ思える映画がある。「チャンシルさんには福が多いね」はそんな作品だった。

40歳の映画プロデューサーのチャンシルは、一見すると「福が多い」とは言えない。一緒に仕事をしてきた監督が急死し仕事もなく、恋人もいない。何をしたいかもわからず、年下のフランス語講師ヨンに恋をするもフラれてしまう。
それでも作品を見終えると、「チャンシルさんには福が多いね」と素直に思える。どん底で自分を見失っているチャンシルを心配して仕事をくれる友人のソフィー、チャンシルの心を動かした優しいヨン、いつも背中を押してくれる風変りな幽霊、年をとってから字の勉強を始めるひたむきな大家さん。そして映画を作りたいと前に進み始めたときに一緒にいてくれる映画仲間。周囲に恵まれた彼女はたしかに幸福だと思った。

この作品に出てくるフランス語講師のヨンは、とても良いキャラクターだった。チャンシル目線で見るとあ~っなんて勘違いをさせる小憎らしい男なんだ!とも思ったけれど。「姉みたいに思っている」とフッた後に電話をかけてきて、「気にしないで。僕は大丈夫です」なんて言ってくる、優しさがかえって辛いような人だけれど、いい人だ。
彼は、映画がなくて生きていけるかと聞かれたとき、「考えたことがありません」と答える。その理由は、人生には愛したり愛されたり、他にも大事なことがあるから生きていけると思う、というもの。こう答えられることが、彼の強さなんだろうと感じた。

周りの助けを得つつ、少しずつ立ち直っていくチャンシルの姿が素敵な映画だった。

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