映画「友だちのうちはどこ?」感想(ネタバレあり)

イラン映画「友だちのうちはどこ?」を見た。

アッバス・キアロスタミ監督作品。この監督を知ったのは「鍵」という映画だった。「鍵」は男の子が赤ちゃんと留守番をする話なのだが、ヒヤリハットの連続で、ドキドキさせられる映画だった。
この作品も、友達のノートを持って帰ってきてしまったアハマッドがそれを返しに行くというシンプルな内容ながら、臨場感たっぷりだった。

なんといっても真に迫っていたのは大人たちの言葉に対するアハマッドの反応。先生は「ノートに宿題を書かない奴は退学だ」と言う。やたらと厳しく理不尽な先生だ。冷静に考えると、宿題一つで退学になるとは考えにくい。でも、幼いアハマッドにとっては重い言葉。「自分のせいで友達が退学になってしまう」と大慌てでノートを返そうとする。周りの大人たちはほとんど話を聞いてくれないし、アハマッドもうまく説明できない。なじみ深い、懐かしいような理不尽さ。道案内をしてくれたおじいさんに「もっと早く歩いて。急いでるから」なんて言ってしまうアハマッドの幼さは残酷だが、かわいらしくもある。

結局ノートは返さなかったけれど、宿題を写してやることで一件落着。ノートにおじいさんのくれた花が挟んであるのも感慨深かった。

ちなみに、なんとなく印象に残った台詞は道案内をしたおじいさんの「一生ってそれほど長いものなのかね」。自分の作ったドアを「鉄製のドアは一生壊れないから」と作り直してしまう人が多い、という職人の愚痴なのだけれど、意味深長に感じた。おじいさんにとっては、もうそれほど長くないかもしれないが、アハマッドにはまだ途方もなく長い、意識もしていない「一生」を思った。

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