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アジア紀行~ベトナム・ハノイ⑤~

未明のハノイ

今回のベトナムの旅の目的地は、ハノイとサパ。すでにハノイ~サパで10日間が過ぎ、この日、ラオカイからの夜行列車でハノイに戻って来た。

前夜、19:30 ラオカイ駅発のSP8号が、ハノイ駅に到着したのは未明の4時半ごろ。外はまだ暗い。湿ったぬるい空気に駅の電灯の光が乱反射する。

ホームに降り立ち、線路を横切って、他の人々の後を歩く。自分一人では、どこに改札口があるかもわからない。

無事に駅の外に出る。まだ夜も明けていないのに、駅前にはたくさんの人がいる。タクシーが次々にやって来ては客を乗せて去って行く。やっとのことで1台のタクシーを止め、数日前まで泊まっていたホテルの名前を告げる。
ハノイの道路はまだ頭の中で描けないうえ、一方通行も多い。暗い道を遠回りしているように思えるが、ドライバーに任せるしかない。それでもほどなくホテルの前に到着する。35,000ドンを支払う。行きは確か20,000ドンだったはずだが。

車から降りたものの、小さなホテルの玄関は灯りもなく真っ暗だった。ベルやチャイムのようなものも見当たらない。このまま明るくなるまで待てということか? とりあえず扉を叩くと、中で人が動く気配がする。中をのぞくと、若いボーイがソファで寝ているのが見える。もう一度扉を叩くと、やっと起き出して扉を開けてくれた。お礼を言って、何とかチェックインを済ませる。
部屋に落ち着いたのが5時半。シャワーを浴びて着替え、やっとベッドでくつろぐ。黒モン族の人たちと接したサパが、とても遠くに感じる。

ホアンキエム湖

朝食をすませ、ハノイの町に出る。特に目的があるわけではないので、とりあえずホアンキエム湖に行くことにする。

ホアンキエム湖は、周囲約2kmほどの小さな湖。一周してもさほど時間はかからない。西岸沿いは前にも歩いたので、今回は東側までぐるっと回る。
湖上に「亀の塔」が見える。

湖畔で記念写真を撮る新郎新婦?

HONDAのバイクの宣伝活動?

ホアンキエム湖の東側に、リータイトー公園がある。「リータイトー」は漢字で書くと「李太祖」。李太祖は、長らく続いた中国による支配から初めて独立して、ベトナム人による王朝を築いた人物だ。

旧市街からホン川へ

きれいに整備された公園を通り抜け、北に向かうと、旧市街に入る。この雑然とした町並みの方がやはり面白い。

旧市街を抜けたところに大きな市場があった。屋根の上に「CHO DONG XUAN」という文字が見える。ドンスアン市場だ。

3階建ての、とても大きな市場だ。1階は雑貨や食品と靴屋、2・3階は服屋が多い。上から見下ろすのは苦手だ。

1階の中央には噴水があった。

一通り歩いてみたけれど、ホーチミンで大きな市場を見慣れてしまったせいか、それほど面白くなかった。むしろ先ほど歩いてきた旧市街のような雑々とした風景のほうが興味を引く。
市場の外の路上で、魚の乾物を売っていた。開いた魚を干したものだ。けっこう臭うけど、ご飯のおかずにして食べたら美味しそうだ。

市場からさらに北に向かって歩く。町の中心から離れていく。
鉄道だ。右手の川を横断する鉄橋が見えてきた。

鉄橋には、線路と並行して歩道とバイク用の道路がある。ホン川(紅川)に架かる橋で、対岸までかなりの距離がある。

見るからに、歴史を感じさせる古い橋だ。貴重な刻印を発見。

1899_1902
DAYDE & PILLE
PARIS

この鉄橋がつくられたのは、1世紀以上前のことだ。ベトナムがフランスの植民地だった時代、ハノイの東方にある港湾都市ハイフォンとハノイをつなぐために建設されたという。全長1700mもある。
「DAYDE & PILLE」というのは、当時パリにあった建設会社で、1899年着工、1902年竣工ということがわかる。
建設時は、ポール・ドゥメール総督の名をとり「ドゥメール橋」と命名されたそうだが、現在は「ロンビエン橋」と呼ばれている。

鉄橋から見下ろすと、岸辺にスラムのような家が建ち並んでいる。人の姿はほとんど見えない。
対岸まで行くのはたいへんそうだが、とりあえず前に進む。雨が多い季節のせいか、ホン川の水量は多い。

橋の中ほどまで行ったが、まだ先が長い。歩いている人はまったくいない。バイク車道との間に柵はなく、ちょっとこわいので、もと来た道を引き返すことにする。

右手に「GA LONG BIEN」という表示の建物が見える。「GA」は「駅」。ロンビエン駅だ。

太陽の光を遮るものがまったくない場所を歩き続けて、暑さに閉口する。バスターミナル近くの店で、やっと休憩。冷たくて甘いチェーが美味しい。17,000ドン。

大きなパラソルの下でフランスパンを売っている女性がいる。熱心に本を読んでいる。商売気が感じられないが、それでもけっこう客が来る。ベトナムは長らくフランスの植民地だったので、フランスパンは今でも人々の食事に欠かせないものとして残っている。

小さなコッペパンのようなバゲットを2個購入。わずか4,000ドン(20円)だ。ホテルに持ち帰って食べる。午後3時過ぎの遅い昼食。

日が暮れてから、もう一度町に出る。少しマシなものを食べなくちゃ。

明日の予定を考えながら歩く。途中に「Love Planet Travel」というツアー斡旋店があったので中に入る。
「ホアルー・タムコック」昼食付き27.5ドル(577,500ドン)という日帰りツアーがあったので、申し込む。さて、どんなツアーになるか、明日が楽しみだ。

夜、眠るまで、逢坂剛の『カディスの赤い星』を読む。タイトルの「カディスの赤い星」とは、フラメンコギターの名器の名前だ。
静かに眠りが迫ってくる。


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