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アジア紀行~インドネシア・バリ島男3人漫遊編⑧~

今日もいい天気

今日で旅に出てちょうど2週間になった。日本での日常が遠くに霞んでいる。旅の記録はできるだけ毎日記すつもりだが、火葬式を見た昨夜は、疲れて2行ほど書いたところで眠ってしまった。朝7時に目覚めて、ベッドの中で昨日のことを思い出す。

8時半朝食。フルーツサラダとジュースとジャッフル。ジャッフル(jaffle)は、玉子・チーズ・トマトなどを食パンに挟んで焼いたホットサンドだ。これがとても美味しい。平和な田園風景を見ながらのんびり食べる朝のひとときは、日本では味わえない貴重な時間に思える。
空は快晴。本日の予定は、ウブドの美術館巡りに決定。


ウブド三大美術館

現在のウブドで、大きな美術館と言えるものは次の三つだろう。

プリ・ルキサン美術館(Museum Puri Lukisan)
ネカ美術館(Neka Art Museum)
アルマ美術館(Agung Rai Museum of Art)

このうちアルマ美術館は、1996年創設なので、我々が訪れたときはまだ建設中だった。「アルマ(ARMA)」は「Agung Rai Museum of Art」の頭文字をとった名称で、アグン・ライ氏(Agung Rai)は私の友人でもある。
自宅はプリアタンにあって、「Agung Rai Fine Art Gallery」を併設している。アグンという姓は王族や貴族のもので、ライは次男だ。
アグン・ライ氏は、収集した膨大な絵画や工芸を展示する美術館を創設し、さらにバリ舞踊や絵画のスクールを開いてバリの芸能を守り育てるという夢を持っていた。現在その夢は現実のものとなり、さらにアルマの広大な敷地にはホテルも建てて、「Arma Resort」となっている。

アグン・ライ氏

話を1993年の旅に戻そう。
この時点でバリ島ウブドで有名な美術館といえば、プリ・ルキサン美術館とネカ美術館だった。
プリ・ルキサン美術館の創設は1956年で、オランダ人のルドルフ・ボネとスカワティ王家出身のチョコルダ・グデ・ラカ・スカワティによって開設された。一方、ネカ美術館は、絵画コレクターのステジャ・ネカによって1976年に開設された美術館で、バリ島絵画の歩みがとてもよくわかる展示である。
バリ島の美術を知るためには、この二つの美術館訪問は必須である。


プリ・ルキサン美術館へ

のんびり朝食をすませて、クブクを出たのは10時前だった。すでに太陽は熱帯のまぶしい日ざしを投げつけている。
最初に向かったのはジュンバワン通りにある郵便局。ハヌマン通りの二筋東にある村の中の道で、にぎやかなウブド大通りに突き当たる手前にある。「Kantor Pos」という表示がある。
ハガキを出して、すぐ近くのネカ・ギャラリーに立ち寄る。

写真:BALI navi

ネカ美術館系列のギャラリーだ。中に入ると、想像以上に広い。さすがにいい絵をたくさん展示している。ネカ美術館は以前にも訪れたが、もう一度行くのが楽しみになる。

ネカギャラリーの隣にガネーシャ・ブックショップがある。小さな店だが、けっこう有名。本以外にも、絵葉書やちょっとした土産物も置いている。きれいなビーズがあったので、30個買った。YとM君もいろいろ物色している。

太陽はいつの間にか真上にある。限りなく暑い。
ウブド大通りを西に進み、王宮や市場を過ぎると、間もなくプリ・ルキサン美術館だ。
プリ・ルキサンとは「絵画の王宮」という意味で、池のある中庭を囲んで、三棟の展示館がある。この時はそのうちの一棟しか開館していなかった。

美術館や展覧会の見学は大好きだけど疲れる。一棟しか見られなかったのは、残念だけど、よかった。

ウブド王宮のほうに戻り、裏手に住んでいると聞いていた知り合いのバルティを訪ねるが、よくわからない。もう昼時を過ぎているので、近くでランチにする。

モンキーフォレスト通りを南下してクブクに戻る道で、前方からサングラスをかけて背中に竹で編んだ籠を背負った男が歩いてくる。見覚えのある風貌なので、もしやと思って声をかけると、やっぱりバルティだった。半年ぶりの再会だ。「昼ご飯食べた?」と誘われたが、さっき済ませたばかりなので、後日訪ねる約束をして別れる。


アグン・ライ・ファインアート・ギャラリー

クブクに戻ると、昨日プリアタンのアグン・ライ氏の奥さんから電話があったと教えてくれた。昨日のことなら、もっと早く言ってよと、ちょっとイラッとしたが、別に悪気があるわけではない。この時間感覚がバリなのだ。
プリアタンもこちらと同じように大きな葬儀があって、村中忙しいということだ。今日もきっと忙しいのだろうと思ったが、挨拶がてら訪ねることにする。

クブクからプリアタンまでは、徒歩で30分ぐらいかかる。建設中のアルマの前を通っていく。今日はよく歩く日になってしまった。
アグンさんも奥さんも、やはり不在だった。ギャラリーにいたおばさんが、私を覚えていて、冷蔵庫から冷たい飲み物を出してくれる。せっかく来たので、ギャラリーを見学する。ここにもいい絵が集められている。バリの古典的な画法であるカマサン・スタイルの絵もある。高価な絵が多い。

カマサン・スタイル
この絵は、バリ島のクルンクン王朝のクルタゴサ(裁判所)の天井に描かれた地獄絵で、「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」をモチーフにして描かれている。

1時間ほど見学したが、アグンさんたちが戻る様子がないので、おいとまする。道路を挟んだところにバリ・アートや古美術の店があるので、冷やかしのつもりでのぞいてみる。おもしろい木彫がたくさんある。中国の陶磁器もあった。青花のようなティーポットに気持ちがひかれる。値段をたずねると15万Rp。交渉して10万Rpになったので、買ってしまった。

ほかにも獅子型の香炉やイリアンジャヤの手斧、カリマンタンの槍など、とても買えないけれど、見るだけでも楽しめるものがいっぱいある。

夕刻が近い。今夜はウブド宮殿でレゴンダンスを見る予定なので、そろそろ戻らなければいけない。

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