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こまち通信 10月号

54年前の入植当時は、気温が30℃を超すことは1日もありませんでしたが、今年は2ヶ月以上も続いたため、農作物に高温障害が発生しております。
その代表的な例が枝豆で、高温のため豆の付きが悪く、出荷できない畑がたくさん出たとのことでした。

大潟村でも、米に高温障害が出るのではと心配しておりましたが、高温対策のため水を入れ続けた効果があったのか、例年以上に品質の良いお米になり、ほっとしております。
また、高温のため生育が進み、稲刈りも早くなり、例年より1週間ほど早く収穫を始めることができたので、入植以来、最も早い稲刈りになりました。

稲刈りが終わるとすぐに、籾殻暗渠作業を行っておりますが、今年の圃場条件はとてもよく、暗渠作業も順調に行うことができます。

大潟村の圃場は、羊かん状の排水の悪い粘土質土壌のため、たくさんの籾殻暗渠を入れないと、雨の多い年は圃場が軟らかくなり、耕耘や稲刈りができなくなります。
そのため大潟村の農家は、入植以来、50年間、圃場に深さ1メートル、幅20センチ、長さ150メートルの排水溝を掘り、そこにパイプや籾殻を入れ、土中の排水作業に取り組んできました。

毎年のように暗渠作業を行ってきたため、畔には2メートル間隔で暗渠のパイプが並んでおり、大潟村農業の困難さを物語っております。
現代の研究者が、古代の農業遺跡を発見し、当時の農業事情について研究をしておりますが、1000年後、2000年後の研究者が、私たちが埋めたパイプや籾殻の暗渠作業跡を見て、私たちの苦労を知ることができるのでしょうか。それとも、大潟村は地震で再び海に戻り、歴史から忘れ去られてしまうのか、そんなことを考えながら、暗渠作業を進めております。

籾殻暗渠を行いながら、玉ねぎの植え付け準備を進めておりますが、玉ねぎの植え付けは10月上旬から10月下旬になり、その後は寒くなるため、それまでに籾殻暗渠を進めなければなりません。

私たちの玉ねぎ畑は、縦1000メートル、横140メートル、1枚14ヘクタールと、日本で一番広い玉ねぎ畑になります。その広い畑に玉ねぎを植えると、冬を越し、春先には青々と育った玉ねぎ畑になります。
14ヘクタールの、青々とした玉ねぎ畑は、誰が見ても感動しますが、玉ねぎは露地栽培のため、10月上旬から7月下旬の収穫まで、10ヶ月間、無事に育つことができるかと、心配の連続でもあります。

9月20日に、国の研究機関の「農研機構130周年記念シンポジウム」に招待されたので、出席させて頂きました。
130周年記念シンポジウムにおけるテーマは、「科学技術イノベーションで実現する食と農の未来」です。

農業者人口の急速な減少に対応できる新たな農業システムを構築することで、日本農業の再生と国民食料の安定供給に貢献するために、何が必要かについて話し合われました。
私は、農研機構やNTT東日本グループと連携し、AIや通信機能を活用することで、農業者人口の減少に対応する新たな農業システム構築の提唱をしてきましたが、そのことがようやく、国の取り組みとして大きな流れになってきました。

私は9月21日で75歳になりましたが、75歳を機に、新たな挑戦を始めました。
チャットGPTを活用すると、企画、事業計画、市場調査、視察、講演、セミナーの記録等を、誰でもわかるようにまとめることができるとのことです。

スマホもパソコンも使えない私ですが、チャットGPTは使えるようになりたいと、先日「チャットGPTとは」という本を購入しました。

「若者が夢と希望を持てる農業の創造」という私の人生の目標に向かって、更なる力を振り絞って全力で挑戦したいと決意を新たにしているところです。

季節の変わり目、お身体にお気を付け頂きたく存じます。

令和5年10月
大潟村あきたこまち生産者協会
涌井 徹

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