見出し画像

私たちのまち「小倉(こくら)」を考える#4 ~小笠原騒動~

多様性の街、小倉

私たちのまち「小倉(こくら)」を考えるシリーズも第4回まで進んできました。

ここまで大まかに、#1縄文時代~#2平安時代~#3鎌倉時代~、の小倉についてお伝えしてきました。小倉が「人や技術が交わる多様性の街」であるということがテーマのひとつでした。

江戸時代の始まりと共に小倉へ入ってきた細川忠興は、茶道や禅の観点のみならず、街づくりに関しても今の小倉の祖と言え、小倉が多様性の街であること体現しているような人物です。自然の石の形をそのまま石垣としてくみ上げた野面積みが、その世界を表現しています。

歴史を感じる小倉城の石垣。本当に美しいですね

細川家については、詳しいメンバーから「小倉城マガジン」に多様な観点で寄稿していただきますので、そちらに譲ります。(記事の最下部にリンクを貼っています)ここでは、細川家の後、譜代大名として小倉に赴任してきた小笠原家についてお伝えします。

小倉城庭園に展示されている歴代小笠原公の書

小笠原家の御家騒動

小倉小笠原家の初代と言えば小笠原忠真ですが、少し先へと時代を進めて5代藩主忠苗の頃。

先日、平成中村座による小倉城公演が開催されたことも記憶に新しいですが、その演目のひとつが『小笠原騒動』でした。

『小笠原騒動』は、犬甘兵庫知寛と小笠原帯刀長稙のふたりの家老が対立した御家騒動です。その結果、兵庫は失脚、藩主忠苗も隠居に追い込まれたのですが…
その顛末を、小倉城1階ギャラリーにパネルとして掲示しました。その文を下記にそのまま掲載しますので、雰囲気をお楽しみいただけますと幸いです。

平成中村座小倉城公演に向けて

平成中村座小倉城公演にご来場の皆さん、ようこそ!

夜の部では小倉藩の藩主であった小笠原公のお家騒動をモチーフにした「小笠原騒動」が上演されます。ご覧になった方も、これからご覧になる方も、より楽しめるような豆知識をお伝えいたします。テーマはメインキャストである中村勘九郎演じる「犬神兵部」について。江戸時代中期、豊前国小倉藩が第5代藩主小笠原忠苗(おがさわら ただみつ)の時代(1791~1804)の話です。

小倉藩は、先代である第4代藩主小笠原忠総(おがさわら ただふさ)の時代(1752~1790)から富士山爆発の救援金や、幕府からの工事依頼、密漁船の対策、大飢饉(享保の大飢饉)などによって、危機的な財政状況に陥っていました。そのような厳しい藩政の中、安永6年(1777年)犬甘知寛(兵庫)(いぬかい ともひろ)が家老に就任しました。犬甘は藩財政改革に取り組み、寛政10年(1798年)頃には財政も好転し銀8千貫の貯蓄ができるまでになりました。翌年には軍用金約十万両を藩主忠苗・世子忠徳父子に披露しているという記述もあります。しかし、享和3年(1803年)に失脚、無実の罪により入牢しそこで非業の死を遂げました。

忠苗自身も、これら一連の騒動の責任をとって、文化元年(1804年)7月20日に家督を養子の忠固に譲って隠居しました。幕府は騒動の責任を問いませんでした。これら一連の騒動を「小笠原騒動」といいます。しかし、小笠原騒動の一次史料はほとんど現存しません。財政改革が元々逼迫していた領民にとっては苦しいものだったことは想像に難くありません。そのような時代背景が生んだのがこの小笠原騒動という物語です。犬甘の死からわずか10年後の文化10年(1813年)には、「濃紅葉小倉色紙」という小笠原騒動を下敷きにしたと思われる芝居が大坂で興行されました。

大甘兵庫が領民に恨まれながら貯めた小倉藩の財産は、次の藩主である忠固がとある目的のために使ってしまい、さらなるお家騒動に繋がっていきます。それは白黒騒動と呼ばれているのですが、それはまた別の話です。

小笠原忠固という殿様

以上が、パネルで紹介した内容でした。ここで最後に出てくる6代藩主小笠原忠固公が、もうひとつの御家騒動「白黒騒動」の中心人物となります。小耳にはさんだ話では、次回の小倉城武将隊による演劇のテーマもこの辺りになるとかならないとか…

ともあれ「小倉とは何か」について考えるためには、欠かせない話となります。小倉は多くの物語に溢れています。では、続きは次回以降に。

追記

追記1:小倉とは何かを考えるシリーズについては、別途バージョンとして、個人名義のnoteに個人的な解釈を載せています。もし興味がある方はそちらもご覧ください。小倉城マガジンにも掲載します。
追記2:本文中にも触れましたが、細川家については詳しいメンバーの記事をご覧ください。まずは、小倉城に展示している細川忠興の甲冑の後ろにある旗の秘密から。こちらも小倉城マガジンに掲載します。



この記事が参加している募集

ふるさとを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?