見出し画像

古城の塔とスタジオツアー~英国文化をつなぐ~

 去る2023年6月、ハリーポッター体験型施設であるスタジオツアー東京ががとしまえん跡地である練馬城址公園に隣接してオープンしました。
 以前よりお伝えしている通り、当会の趣旨はとしまえんの歴史を古城の塔をシンボルとして伝えていくことにあり、としまえんの閉園に反対したりスタジオツアー施設を批判するものではありません。むしろ古城の塔とスタジオツアー施設には共通点があり、共存していけるとも考えています。
 そこで、今回はその共通点についてご紹介をしていきたいと思います。

学びの施設としての共通点

 スタジオツアー東京については、テーマパークだと思われている方もいらっしゃいますが実は建築基準法的には「博物館その他これに類する施設」となっています。
 としまえんは周囲に住宅街が広がる前から既にあったものでしたが、練馬区に住宅街が広がった現代では建築基準法上、「第二種住居地域」の中に遊園地を新設することができないため、あくまでスタジオツアー東京は博物館の一種としての許認可となったのです。これが一部、スタジオツアー東京に反対する人々の根拠となっていたりもします。
 上記経緯からスタジオツアー東京にはUSJのウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターとは異なり、ライド系のマシンは設置されていませんし、これからもされることはないでしょう。

 法的解釈の是非は置いておいて、ここでお伝えしたいのは、スタジオツアー東京は「博物館その他これに類する施設」であるということ、つまり社会教育施設なのです。この前提があるため、オフィシャルな発表では当該施設の説明において「知る」「学び」「学習」といったキーワードが並びます。 

映画内のシーンの数々を実際に体験でき、世界中で愛されている原作本の世界観が、どのように生き生きとスクリーンに再現されているかを知ることができます

「ハリー・ポッター」スタジオツアー東京 としまえん跡地にオープン決定(PR TIMES)

ご来場の皆さまに魔法の世界を楽しんでいただきながら、映画の舞台裏の秘密を学んでいただけます映画の舞台裏の秘密を学んでいただけます

ゼネラル・マネージャーにトーベン ・イェンセン就任(PR TIMES)

 スタジオツアー東京はハリーポッターの世界観を通して映画の舞台裏を学ぶことができる施設として建てられているのです。

 一方でとしまえんも初期は単なる遊園地ではなく「教育的施設」だったことを当会では紹介してきました。
 過去に紹介した藤田好三郎氏、戸野琢磨先生の言葉をそれぞれ下記に記します。

彼處(あそこ)は最初遊園地にする考へはなかつたのですが、東京の近郊として珍しい地形の好い土地で、而も足利時代に於ける豊島氏の城趾でこれを私するは憚り多いことと考へまして、これを公開して所謂衆と共に楽しむ事に致しました。児童の爲には保健教養場所とし、一般民衆の爲めには趣味生活をなす材料を與へたいといふ希望を以て諸般の設備を加へました

「事業之日本」1928年10号

高尚な風致を備へる遊園地にあつては、入園者に一種の観賞的知識と趣味の向上とを興へるものである。殊に此意味に於いては、日本式庭園の行き方よりも、欧米風のものに於いて有数である。書方雑誌等にて見る外国の花園や噴水は、成程美しい気持ちの良いものであると言つても、さて實際どんな風處に設置してあるものか、又實物に於いて色彩や水の動き具合が、光線等と如何様な関係がある等は、其のものを目の當りに見る迄は全く見當のつかない事が多い。

遊園地の設計と施設/戸野琢磨

 としまえんは約100年の歴史の中で徐々に教育的な要素は薄れていきました。しかし、元々藤田好三郎氏が意図し、戸野琢磨先生が設計した「練馬城址豊島園」は教育的施設であり、その時代からの遺産が古城の塔なのです。
 さらに戸野琢磨先生はこうも言っています。

 殊に外國に数年生活をした人達には、最も共鳴される點(てん)が多い。又學生達其他の人にでも外國の一部を想像さしめたり、又これを観賞さしめる丈けでも良い教育と思う。

遊園地の設計と施設/戸野琢磨

 スタジオツアー東京に訪れる人々もハリーポッターの世界観を味わいに来ています。ハリーポッターの舞台はイギリス、主にイングランドとスコットランドです。
 対して古城の塔も今のところ明確なモデルとなった城の名前は分かりませんが英国古城風の建物として設計されました。戸野琢磨先生は外国を想像したり鑑賞するだけでも良い教育だと語っています

 この英国的な世界観を体感し学べるという共通点から、古城の塔とスタジオツアー東京には来園者にとって共通した楽しみ方がありました。

英国的な世界観の場としての共通点

 スタジオツアー東京にはハリーポッターのコスプレをして訪れる方が多くいます。和製英語である「コスプレ」は映画やアニメに夢中な人々にとって、自身もその世界に入り込む手段として一般化しつつあります。

 一報で古城の塔もコスプレイヤーの方々の人気撮影スポットでした。特に英国的な外観からハリーポッターのコスプレをされた方もいらっしゃり、スタジオツアー東京のオープンに合わせてそれを懐かしむTweetをされる方々もいらっしゃったので、当会Twitterでも紹介させていただきました。
 これらのTweetの写真、ハリーポッターの映画は2001年~2011年にかけて公開されていたので、多くはおよそ10年前のものです。
 こちらのnoteでも紹介させていただきます。

 まずは古城の塔の扉の前でのハリーポッターさん。なんと撮影は2003年、20年前です!

 こちらはたくさんの衣装で撮影されていたハリーポッターさん。その中からここでは炎のゴブレットの三大魔法学校対抗戦のコスプレを紹介します。
 これも自作だそうで、凄いですね。
 古城の塔も背景としてなじんでいます。

 こちらはスリザリン生さん。「豊島園の洋館」とは古城の塔のコスプレイヤーの方たちの中での通称です。

 さらにはファンタスティックビーストの主人公、ニュート・スキャマンダー姿のコスプレイヤーさんも古城の塔に登場!

 また、ファンタジー系のイベントを開催されている方から古城の塔でイベントを開催をしたいという声もありました。

 当会が提案している古城の塔の活用は主に地域の歴史や事業の歴史からの「学び」のシンボルとしての位置づけが主ですが、こういった外観を活かしたイベント活用の提案も素敵だと思います。

 古城の塔とスタジオツアー東京の共通点としてハリーポッターのコスプレをする方々がいたこと、そしてそれはどちらも英国的な世界観によるものであることは是非、多くの方に知っていただきたいです。

東京新聞さんの記事への補足

 スタジオツアー東京のオープンにあたっては当会代表も東京新聞さんにコメントを掲載していただきました。

 限られた文字数でニュアンスが伝わりにくい部分もあったかもしれませんが、お伝えしたかったのは「一緒に地域をよくしていこう!」ということです。

 その上で当会としてはスタジオツアー東京さんだけでなくイギリスに親しみのある方々にも、スタジオツアー東京ができる以前より、英国的な雰囲気を作り出す場がとしまえんの一角にあったことを知っていただけると嬉しく思います。実際にTwitterではむしろ古城の塔をハリーポッター施設の一部だと思われた方のTweetも散見されます。
 今は防音壁に囲まれた古城の塔ですが、英国的な世界観の場として、学びの施設として、スタジオツアー東京と古城の塔は共存していけます

現在の古城の塔

引き続き、豊島園古城の塔の保全キャンペーンへの応援を宜しくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?