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レジ怖い。

そんなこともできないのかよ、ということが誰にでもある。

僕の場合は「レジ打ち」である。大学生のころ、セブンイレブンでバイトをしていて、レジ打ちがどうしてもできなかったのだ。

お客さんがきて、レジに立つと、緊張してしまってうまく数字が打てない。結局店長も「こいつはダメだ」と思ったのか、僕は店の奥にあるフライヤー(チキンやらコロッケやらを揚げるやつ)のそうじばかり任されるようになった。おかげで、フライヤーを洗うのはそこそこうまい。いまでは何の役にも立たないけど。

レジ打ちができないのはなんでだったんだろう、と考えてみると、僕はどうやら「感情」が見えないコミュニケーションがすこぶる苦手なのである。

僕は、誰かの気持ちに対するアンテナがまぁそこそこに高くて、いつも「この人はどんな気持ちなんだろう」と想像してしまう。日常のコミュニケーションでは、感情のやりとりがあるので問題にならないのだけど、お金を介したコミュニケーションになると、感情のやりとりがなくとも成立するようになる。そうすると、怖くなっちゃってもうダメだ。

レジ打ちなんて、たぶん日本で何万、何十万の人ができることが、僕にはできない。

「やりたいこと」よりも、「どうしてもこればっかりは勘弁してほしい」っていうことから逃げることでいまのキャリアをつくってきた、って人は少なくない。

松尾スズキさんは、お役所の書類やら契約やらの「手続き」が本当に苦手で、「人生を賭けて、できるだけ手続きをしなくていい職業についた」らしい。その結果、劇団「大人計画」を設立し、岸田國士戯曲賞を受賞したり、監督した映画はヴェネツィア国際映画祭に出展されるなど、才能を爆発させている。

「絶対にこれをやらん!」という強い想いは、自分を駆動するエネルギーになる。あと、その人の個性になるのだ。

納税とか投票とか、まぁそれはやったほうがいいんではないか? ということもあるけれど、「レジ打ち」くらいは勘弁してほしい。だいたい僕がレジ打ちができなかったところで、誰が困るわけでもないのである。


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