見出し画像

イーサリアムの過去・未来

今Web3業界は、イーサリアムがついに踏み切ったPoS(Proof of Stake)での影響が気になっていると思います。

なかなか接点がないと実感が湧きにくいので、経緯から自分なりに砕いて説明していきたいと思います。

まず、イーサリアムはビットコインに次ぐ規模の暗号資産(一応日本政府による正式名称ですがあまり浸透せず・・・)です。

暗号資産を評価するのは、「時価総額」と「取引量」です。

下記サイトで定期的に時価総額ランキングが更新されているので、今回はそれを参考にします。

投稿時点での上位スナップショット画像を引用しておきます。

出所:上記サイト

いかにビットコイン(54兆円)とイーサリアム(25兆円)の2つが際立っているかが理解できると思います。

過去7日間の時系列推移をみると残念ながらイーサリアムは減少しているようです。
今回のPoSへの移行に伴いしばらく上下変動は予想されますが、そもそもイーサリアムの歴史的な経緯から振り返ったほうがいいかもしれません。

2022年に特集したTIME誌の記事をもとに創設者のストーリーを共有します。



イーサリアム誕生の歴史

イーサリアムは、当時18歳のヴィタリック・ブテリンが考案して論文を公開しました。

もともとのきっかけは、既に普及しつつあったビットコインへの不満です。
下記の2つが主な理由です。

1.取引処理が重い(1つに10分程度要する。これは仕様上の設定)
2.通貨としての数字移動しかできず、自由度に乏しい(これも仕様上の設定)

ということで、上記課題を解決するイーサリアムを考案した経緯があります。上記の課題に対応して書くと下記がその特徴です。

1.1つの取引処理は約15秒
2.数字移動だけでなく「汎用的な手続き」も追加実装できる(スマートコントラクトと呼ばれます)

実際の開発には、Web3.0という造語を作った方もアドバイザーとして参画して具体化しています。

幸いイーサリアムは受け入れられて、時価総額2位まで上り詰めます。
ところが、流通量が伸びるにつれて、想いもよらぬ別の課題が浮上します。

「エネルギー問題」です。


イーサリアムのPoSへの移行

ビットコインが新しく通貨としての供給を発行するには、PoW(Prrof Of Work)と呼ぶ合意形成ルールが採用されています。
これは、数あてパズルをマシンが自動生成して、コンピュータリソースを大量に消費しないと解けない仕組みになっています。
情緒的に言えば、通貨価値を維持するために、頑張った人にはその報酬としてビットコインを発行、というルールを敷いているわけです。

このコンピュータリソースが半端なく、2021年実績では、100テラワット時を超えるエネルギーを消費しました。
大きすぎてピンとこないとおもいますが、これはフィンランド一国の年間エネルギー消費量を超える規模です。
世界全体の消費量でいえば、ざっくり0.2%相当です。

しかも、そういったコンピュータリソースを提供出来るのはやはり大資本を持つ事業体に限られ、それ自体がビットコインの思想である分散型経済と若干ずれるわけです。

イーサリアムも当初はビットコインと同じPoWを採用していたのですが、エネルギー問題を解決すべく、PoSというルール変更を英断し、2022年9月15日にそのはじめの変更手続きを完了しました。

PoSでは、Stakeを保持する量に応じて検証者として選ばれる率が高くなる、というルールを敷いています。
それによって上記のコンピュータリソースを大量消費する数当てパズルがいらなくなって、理論的に99%以上の電力消費を抑えることが出来ます。

出所:上記Blogより画像引用

ただ、このルールだと、現行の株式制度に近くなってしまい、現行はまだ厳しい法規制はありませんが、今後詐欺行為等が横行すると(ぱっと思いつくのはインサイダー取引に近いこと)、国家単位で課税対象や情報保護管理などの処置が講じられる可能性があります。

例えば中国は以前より、自国資本流出や税収逃れを危惧して、暗号通貨全般を利用禁止しています。

イーサリアムも、他の暗号通貨同様に、大規模な仕様変更による分岐点があります。

これは「ハードフォーク」と呼ばれるのですが、暗号資産の根幹技術であるブロックチェーン取引自体を完全に分岐させる試みです。
通常のソフトウェアに例えると「大型アップグレード」に近いのですが、旧方式も分裂したまま存在し続けるので、やや趣が異なります。

2016年ごろにも、一度ハードフォークを実現しています。
但し、もともとイーサリアム設立時からの信念ですが、基本的には分散型の合意性を尊重しており、創設者のブテリン氏は支持の表明にとどめており、独断したわけではないです。(勿論その影響力は大きいですが)

今回のPoSへの移行も、その当時からコミュニティで議論されており、結果として今年2022年から実行に踏み切っています。


イーサリアムの将来

合意形成ルールを変える、ということはその暗号通貨の特徴を大きく左右する一大イベントです。

これだけ業界最大規模まで大きくなると、間違いなく賛否両論があると思います。

実際、ハードフォーク前のバージョン(PoW方式)は、「EthereumPoW」と名称を新たにして継続して取引することになりました。

ただし、今回の新方式を支持する取引所もあります。
特に、イーサリアムが急上昇するきっかけとなったNFT取引所は影響力があります。
なかでもNFT取引所の最大手OpenSeaは、現時点ではこの新方式を歓迎し、採用しています。

ということで、現時点で言えるのは、しばらくはプラスとマイナスが交錯として変動する可能性が高いぐらいです。
冒頭の時価総額推移では直近1週間で下落していますが、それが続くかどうかも全く予測不可能です。

ビットコイン含めて、暗号通貨は脱中央集権を目指して設計された新しいエコシステムです。
それがPoW方式を通じて中央集権化と環境問題も加わって、今回大きな見直しが下されたわけです。

投機的な手段としてかかわるのは個人的には距離を置きたいですが、ある意味今の社会課題を凝縮した実証実験ともみれるので、関心を持ち続けることは重要だと思います。

しばらくは、ワイドショー的な話題が続き、創立者ブテリン氏も気が気でないと思います。
ちなみに、ブテリン氏はいわゆる経済的な富に無関心で、自身の資産は相当膨らんでいますが、今でも服装は趣味なども地味なものです。

そういった存在が暗号通貨の象徴として機能しているとも言えますが、兎にも角にも、今回の方式変更が社会全体にとって結果としてプラスになることを願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?