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空間コンピューティングの小史3

前回の続きで、NASAと別の流れとその支流がつながった話をします。

初の空間コンピューティング研究を行ったサザランドに師事していた一人に「アラン・ケイ」という方がいました。
おそらくコンピュータの歴史に明るい方ならご存じだと思います。特に、パーソナルコンピュータのアイデアを生んだ方という見方もできます。

彼はパロアルト研究所設立に関わって(フィッシャー・ラニアー同様Atariにも一時期在籍)、パーソナルコンピュータの原型「ダイナブック」をデモ機として発表します。

このデモを1979年ごろに目のあたりにして、刺激を受けたといわれるのがあの「スティーブ・ジョブズ」であり、1981年に初号機が誕生する「Macintosh」です。

そして皆がご存じの通りAppleは、ジョブズ復活後の2007年にiPhone(アイフォーン)を生み出します。

こう書いていると、普通にPC・スマートデバイスの歴史をなぞってるだけに聞こえるかもしれません。

ところが、このスマートデバイスの量産が空間コンピューティングのデバイス革命につながります。 残念ながら主役はAppleではありません。

時は2012年。
とある(失礼ながら)ガジェットマニアが、クラウドファンディングを通じて莫大な資金調達を実現し、画期的な製品を開発することになります。

開発者の名前は「パルマー・ラッキー」、製品名はOculusと呼ばれます。タイトル画像は2015年のTime誌表紙を飾った写真です(出所

パルマーは当時出回っていたHDMをほぼ所有して中身を深く理解し(リバースエンジニアリング的な感じですね)、それをさらにゲーマー向けに改良するアイデアを考案します。
そしてクラウドファンディングKickstarterで当初目標の10倍にあたる240万ドルの調達に成功します。それだけ彼の技術力がすでに業界で話題になっていた証拠です。

その後、いち早くVRの世界が来ると確信して動いたのが旧Facebook(というかマーク・ザッカーバーグ個人)であり、2014年に20億ドルで買収することで合意します。

その後の現Meta社の迷走については触れませんが、一連の流れをちょっと振り返ります。

HDMを構成する部品(レンズ・各センサー等)が、iPhoneなどスマートデバイスの登場でコスパが高まり、個人でも資金調達できるクラウドファンディングと合わさって伝説の名機が誕生しました。

残念ながらパルマーは買収後にMeta社を抜け、かつOculusというブランド名もMetaに置き換わっています。

そして2023年のWWDCで、その中間的な貢献を果たしたともいえるAppleがいよいよMR機器を投入したわけです。

ただ、静かに基礎研究は8年ほど進めてきたので、決してOculus登場の時期に放置していたわけではないです。(関連企業の買収も行ってます)

Meta社だけでなくすでにHDMは各社がリリースしており群雄割拠とも言えます。

Oculus買収後もメタバースが2021年にバズッた後も、お世辞にもムーブメントが持続したとは言えません。

今回の発表では、Appleらしさとして「滑らかさ」にはこだわっているように見受けられます。

私自身、歴代のOculusとSony プレステVRを使ってはいますが、正直なところはまるまでにはいってません。なんとなく興味本位の枠内です。

個人的な意見ですが、やはり「プレイするのにストレスがかかる」からです。(セットアップとプレイ自体の2つの観点で)

価格はいったん置いておいても(Appleは既にラグジュアリーブランド)、もし身体センサーとHDMがより滑らかに接続出来てワクワクできる体験が獲得できるなら、ブレークスルーする可能性はあるかなと思います。

Metaが指をくわえて待つわけはなく、その他スマートデバイス系・電子デバイス系・ゲーム系会社も相当Appleの挙動を意識しているのは間違いないと思います。

しばらくはこの業界へのセンサー感度を高めておきたいと思います。

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