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オンライン講座でトニ・ケイド・バンバーラの短篇"The Lesson"を読みました

 2024年4月17日の夜7時半から、NHK文化センターのオンライン講座「英語で楽しむアメリカ文学」で、トニ・ケイド・バンバーラの短篇"The Lesson"を読みました。バンバーラは、アメリカの現代女性黒人作家として著名な方です。日本でも単行本こそ出ていませんが、かつて藤本和子さんが何本か短篇を翻訳しています。その他、『塩を食う女たち』(岩波現代文庫)でも紹介されています。
 今回は4月の初回ということで、多彩な人が集まり、自己紹介の時間もたっぷりとれて、楽しい時間を過ごしました。受講生のうち半分が入れ替わったことで、フレッシュなスタートを切れたかと思います。
 今回の作品の主人公は、ニューヨークのハーレム地区に住む黒人の女の子です。ミス・ムーアという女性に連れられて、近所の子どもたちと一緒に高級なおもちゃ屋を見に行きます。もちろん欲しいものはたくさんあるのですが、ことごとく買えません。
 なぜ自分たちには無理なのに、こうしたものを気軽に買う人たちがいるのか。自分たちはなぜ社会的にこういう位置にいるのか。こういった矛盾に彼女は直感的には気づいてしまうのですが、それを認めることが屈辱的で、かなりの葛藤を感じます。子どもらしい描写の中にも怒りや悲しみや喜びなど生々しい感情が伺えて、とてもみずみずしい短編でした。
 受講生の方々からは、初回から鋭い意見が飛び出しました。自分たちが社会で置かれた位置を認めたくないという否認の気持ちが表れている、という意見にはハッとさせられました。その他、ラストで主人公が駆け出すシーンがあるのですがそこに、私に敵う者なんていない、という主人公の強さを認める方もいましたし、これはシスターフッドの話なのではないか、という解釈をする方もいました。
 自分が全然考えていないこうした意見を言われると、とても世界が広がりますね。初回からなかなかいいワークショップになったと思います。

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