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裁判への影響を理由に国会へのビデオ全面開示を拒んだ国が裁判での開示も拒んでいる

2022年7月20日、名古屋地裁で開かれたウィシュマさん国家賠償請求第2回期日、国はビデオの提出を全面的に拒否しました。

国会では裁判を理由に全面開示拒否


ですが、2022年4月20日、参議院法務委員会で、以下のようなやり取りがありました。

○有田芳生君 日本語じゃないんですよ。こんなの世間では通用しないんですよ、文章の世界では。それを、天下の入管がこんなのを最終報告書だって何で言えるんですか。  じゃ、聞きましょう。ほかにそういうことがないかどうかというのは、全部ビデオを明らかにしてくださいよ。照合しましょうよ、これと正しいのかを。違いますか。出してください、全部のビデオを。

○政府参考人(西山卓爾君) ビデオ映像につきましては、死亡当日までの約二週間の起居寝食の状況等の一部始終が撮影されたものであり、開示により、食事や着替えのほか、生活上のあらゆる様子などがつまびらかとなるなど、亡くなられたウィシュマさんの名誉、尊厳の問題があると考えております。  また、施設の設備や形状、職員による巡回の体制や頻度、被収容者の個々の状況に応じた対応体制、監視カメラの撮影範囲や解像度などの具体的な状況が公となり、逃走防止や施設内の秩序維持といった保安上の対応にも支障を及ぼしかねないと考えております。
とりわけ、職員による巡回の体制や頻度、被収容者の個々の状況に応じた対応体制等が公となることによる保安上の支障はマスキング等の措置によっても解消することができないため、全面開示に応じた場合これらが全てつまびらかとなってしまうと考えております。
これらの点から、ビデオ映像については、情報公開法第五条第一号、四号、六号柱書きの不開示情報に該当するため、全面開示は適当でないと考えております。
さらに、本件につきましては、先日、国家賠償請求訴訟が提起されており、訴訟係属中の事案に関する事柄の詳細を国会で明らかにすることは、司法への影響に鑑み、基本的には差し控えるのが適切であると考えております。  このような理由からも全面開示は適当でないと考えております。

国会では司法への影響を理由にして全面開示を拒否し、裁判でも拒む。議員さん達に見せてしまったら、裁判で拒めなくなるということなのでしょう。

前にこちらにも書いた、規約人権委員会の一般的意見36の一部を改めて引用しておきます。


締約国は、とりわけ、生命の剥奪につながる事件に関連する真実が何かを確かにするための適切な措置を講じる必要がある。これには、特定の個人が標的とされた理由と法的根拠、および生命の剥奪が発生した時間の前、最中、後に国家権力が採用した手順、そして命を落とした個人の遺体を特定することが含まれる。締約国はまた、関連するものを開示すべきである。国は被害者の近親者へ調査に関する詳細を開示すべきであり、近親者が新しい証拠を提出することを認め、調査における近親者の法的地位を認めるべきである。


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