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中編

2020年10月2日 金曜日。

その日、お店の営業はもちろんお休み。

久しぶりの電車、久しぶりの横浜に

少し胸が高ぶっている自分がいる。

念のために少し早めに家を出て、関内へ向かう。

お昼少し前という絶妙な時間だからか、

ちょうど心地よいくらいに電車も空いている。

その後の目的はさておき、「イイ気分転換だな・・」とつぶやいてみる。

少し関内で時間を潰し、いざ横浜地裁へ。

リニューアルして壁のそそり立つハマスタを右手に見ながら

日本大通りへ。

なんとも気持ちの良い通りなんだろう。

あれ?横浜にこんなところあったっけ・・

#銀杏の色づく季節にまた来たいな・・

そして大通りを進み、左手の日本銀行の隣に建ち構えるのが

横浜地方裁判所

実は裁判所に入るのは初めてだ。

入り口では厳重な手荷物検査がある。まるで空港かのように。

そのまま手元の資料と、ビル内の案内図から受付階に上がる。

そしてこの裁判所の館内の雰囲気がとにかく重い・・

「そりゃそうだよな、人間の持つ陰と陽が混在しているんだもんな」

自由、平等、それに対して罪と罰

それらのパワーが渦を巻いている気がした。

受付をすませる。その受付順から「5番」をいただく。

大きな会議室のようなところへ案内され、

長テーブルにある椅子へ鎮座する。手元に置かれている資料を読む。

同じ様に選ばれた方々が計20人ほどが静かに座っている。

この中から抽選で裁判員と補充人員の計8名が選ばれるのだ。

まずは簡単な今回の趣旨説明から。

次に候補者選任手続きから抽選、決定とその後をまとめたDVDを見る。

次に今回裁判する事件の概要を細かく説明を受ける。

#事件についてやそれに対してどう思ったか・・などは守秘義務になる

ここで最終的に問われるのは、

・この事件に関わっているか?

・被害者や加害者を知っている、もしくは関係が近からず過去にあるか?

・現在、裁判員として適用しない立場にいないかどうか?

#近しい人物は感情が入ってしまうので裁判員にはなれないことになっている

などで、

それらを踏まえて最終的に参加するか辞退するかを宣誓する書類を提出する。

最後に今回の裁判を担当する司法チームの方々の紹介がある。

担当裁判官3名

担当検察官2名

担当弁護士2名

その後数分の休憩を挟み、いよいよ抽選だ。

抽選はパソコンで無作為に番号をシャッフルした後に

はじき出された当確番号で決まるらしい。

さぁ、いよいよである。

僕はこういう場はもともと緊張などしないタイプで

常に平常心でリラックスして居ることができる。

#過去にそういう訓練をしていたから

そして頭をよぎる。

「ふぅ〜、当たりそうな気がするが、

これだけ人数がいるから当たらないかもだな・・」

担当者が宣言する。

「それではこれより抽選を行います。裁判員に選任された方の番号を読み上げます」

不思議な感覚だ。

ただ勝手にお上に選ばれて「やってもいいぜ」ぐらいの気持ちで、

この日を迎えてここに来ただけ。

特に当たろうが当たるまいが自分には何も影響はないわけなのだが、

いざ抽選・・となると、グッと気持ちが入るものだ。

もし当たらなかった場合、だからと言って何もないわけで

それが「駄目だった」という感覚はむしろおかしいことで。

でも「なんか外れるって嫌やし・・」みたいな感じもあって。

不思議な感情だな〜と思っていた。

そして担当裁判官のリーダーが読み上げる。

「それでは選任された方の番号を読み上げます。

では、え〜、5番の方・・」

はい、来ました・・やはり僕は引きが強い。

しかも最初に呼ばれるなんて。

背筋が伸びる。ホッとしている自分がいる。

「なんでホッとしているんだろう・・」

自問自答する。この感覚はなんなんだろう?

まぁ、お店を休んでまで時間を作ってここまで来て、

とりあえず当たってよかったな・・と。

#報われた感

何事も「外れ」と言われるのは

たとえこういう場であっても気持ちの良いものではないし。

そして6名の裁判員と2名の補充裁判員が決まり

そのまま別室に案内される。

そこには先ほど紹介された今回担当される司法チームの方々、

裁判所職員の方が数名、そして選ばれた僕ら裁判員8名が

テーブルを囲んで一同に着座する。

急に背筋がピンと伸びる。

その一室に「当事者」感がグッと高まる緊張感が漂っている。

そこでは、改めて今回の裁判の趣旨説明があり

宣誓文の音読がある。全員で読み上げるのだ。

#嘘はつきません 、守秘義務を守ります・・的な感じのもの

その後裁判官3名と裁判員8名はまた移動して

裁判所館内の評議室と呼ばれているところへ案内される。

ここの部屋が今後僕ら(以下、裁判員チーム)の拠点となるそうだ。

改めて裁判員チームの面々が初めて顔を合わせる。

ここで一つのイレギュラーが起きる。

それは全員がマスクをしていること。

こういう状況なので当然のことだが(入室時も消毒した)、

全くの初めましての計11人の面々が、全員マスクをしている状況は

なかなかの光景で、

「誰も顔がわからん・・表情もわからん・・」

その後簡単な自己紹介をみんなでするのだが

1次情報が少なすぎて、皆さんの言葉が頭に全く入ってこないという

不思議な感覚だった。

「まずヒトを知る上で、顔や表情の情報ってすごく大事なんだなー」と、

’第一印象・ファーストインプレッション’っていうもんな・・

しかも自己紹介が僕からという・・

#安定の 「持っている感」

今回の裁判官3名を除いた裁判員チーム8名の面々は

男性4名女性4名

年齢も職業もおそらくバラバラであろうと予想できた。

#まだお互いに話をしていないので詳しくはわからないので

その後は今回の裁判日程の大まかな説明と

実際に裁判をする法廷をみんなで見にいきました。

法廷の隣の待機室から、扉が開きいざその法廷への入り方、

着席する椅子の確認、備品の説明、

実際の裁判時に、どの位置に誰が配置されるのか・・

などの説明を受けます。

当日の身なり・服装なんですが、基本的には自由だそうです。

さすがに「常識の範囲内で」ということが暗黙のルールかとは思いますが

過去に身なりが原因で出廷を取りやめになったということはないそうです。

そして評議室に戻り、最終確認をしてようやく今日は終了となり、

この日から10日後、

いよいよ10月12日(月)9:30に当裁判所館内評議室集合にて

僕が参加する裁判員裁判が始まるのです。

しかしそこには誰も想像をし得なかった

思いもよらない、

衝撃の結末が待っていたのであった・・

<後編に続く>

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