見出し画像

【美濃・尾張・三河】オーベルジュ・デ・リリアーヌからの味噌かつ~私の取材旅行記~

食品に関する取材のお仕事をしていた頃に書き留めておいた裏側のメモを手直ししてnoteします。二回目の今回は1989年12月の旅から(お店の名前や料理、記事の内容は当時のものです)。


愛知県の豊川稲荷(写真は2017年に再訪したときに撮影)

ヘリコプターで行きたいレストラン

木曽川の中流。日本ライン下りのみごとな風景を見下ろせる場所に、オーベルジュ・デ・『リリアーヌ』はある。

店の入り口の向こうに見えるのは芝生のヘリポート。この店は「ヘリコプターで食事に来れるレストラン」で有名な店だそう。

取材先の常務さんの案内で店内に入る。かすかに音楽が流れ、10席ほどのメインフロアのテーブルは淡いピンクのクロスが落ちついた雰囲気をかもしだす。テーブルにセッティングされた皿は柊の緑でクリスマス気分。こんな店でクリスマスは、気分が良さそうである。
ハウスワインと料理のマッチングは抜群で、牛タンの香草焼きからデザートのフルーツアイスまで堪能できるもの。地元の食材にこだわった料理に、自家製パンの表面のクラッシュ感と中のソフト感がたまらなく良い。

窓の外を流れる木曽川の風景と、ワイン、ゆっくり流れる時間の中、案内してくださった常務さんの地産地消を目指した自社商品への蘊蓄が絶妙のバランスで聞こえてきた。

濃いめの味付けの鰻飯

名古屋市栄。繁華街の中に、どう見てもミスマッチのたたずまいの『いば昇』。取引先さんの案内で暖簾をくぐって店内に入ると、活気のある声と、鰻のタレ特有の甘い香りが漂っている。

『櫃まぶし』は、簡単に言うと、お櫃の中に鰻飯が入っている料理。
これを、まずそのまま一膳いただく。普通に美味しい「鰻飯」の味。
次に、薬味の小口切りしたネギと山葵をドサッとのせ、タレをかけて一膳。「鰻飯」の味と薬味の風味とタレの濃い味がマッチして、口の中で鰻の味が増幅され「おいらはただの鰻飯じゃないもんね!」を主張。
最後に茶漬け。二膳目の薬味をのせた鰻飯に茶をかけてサラサラと。ただそれだけだが結構うまい。濃いめの味が「サラッ」と口の中でとろける。
これで三膳目まで簡単にいただけてしまう。
食べ終わって「ふぅ~」と一息ついてから「うぅ~腹いっぱいだぁ」と気づく趣向。

めちゃくちゃ美味しかったのだけれども、個人的にはうなぎはどんぶりで食べたい派。

愛知県の豊川で東京蕎麦を食べる

移動途中での愛知県東部の豊川市にあるのに「東京蕎麦」の看板。ちょうど昼食時間ということで、客席は満席状態。
同行者の勧めで天ザルを注文。
出てきたのは蕎麦二枚と天ぷら一枚の、合計三枚のザル。てんつゆと蕎麦ツユ、薬味はネギと生卵、生山葵(下ろし金つきで一本のまま)。これにナマス。
時間がないためにバタバタ・ズルズルかっこむ。

普通の『天ザル』の1.5倍程の量で、腹はいっぱいのうえに、テンプラの油で「うぅ~ちょっと横になって休みたい」「取材なんかどうでもいいじゃない」気分。最後の蕎麦湯でおなかが落ち着き、何とか取材モードを維持できた。

取材用の試食品でお腹いっぱい

取材先の企業さんでは、研究室のちょっとキュートな熊谷さん(25)が13種類の試食品を準備してくださっていた。

大豆を使ったシチューや南瓜と金時の煮物、小豆入りホットケーキ、豆とハムのサラダ、ヒジキ入り玉子焼きや大豆とヒジキとゴボウのかき揚げなどオーソドックスな料理が並ぶ。話を伺いながら一箸ずつつまんだがそれだけで満腹。
中でもおすすめは『ヒジキチップス』と『小豆シャーベット』。
ヒジキのドライパック缶の中身をキッチンペーパーで軽く水気を取り、から揚げ粉にまぶして揚げるだけ。さっくりのクリスプ感とヒジキの風味、から揚げ粉の塩気で軽い味。
『小豆シャーベット』は簡単・便利で栄養価抜群。牛乳に小豆缶を混ぜて凍らせ、時折混ぜるだけで出来上がり。牛乳のおすすめとして子どもにも作れる料理の紹介ができそう。
どれも全国にいるモニターさんから教えてもらった料理だそう。

淡口なお酒とドスンと来たいなり寿司

夕方には豊川稲荷の門前町に移動。「とりあえずビール」の後は地元の酒。
酒の名は忘れたが、サラッとした味だけは残っている。甘くもない、だけど辛口の酒でもない。かといって水っぽい酒でもない。だから主張がない。料理との相性を考えると「そうか」と一人うなずく。料理もピンと主張するのがないのだ。
最後にきしめんといなりが来た。サラッとしたダシにコシのある口当たりのきしめん。そしてさすが豊川稲荷の門前だけあってのいなり寿司。最後の二品でドスンとした「満腹感」だけは残った。

濃いめの味噌ソースなら黒豚じゃなくても

新幹線に乗る前に名古屋駅の地下の定食屋。『黒豚カツ』の看板に惹かれて店に入る。「黒豚カツ定食」を注文。
置いていかれたお茶を飲みながら「どんな黒豚が出るんだろう」と楽しみにしていると、給仕さんが「タレは味噌でいいですかぁ」と聞きに来た。そりゃ名古屋だから「味噌」と答える。
お茶を飲み終える頃に、どんぶりメシの上に大量の千切りキャベツ。その上に味噌ソースをまとった分厚いトンカツ。赤味噌の汁を従えてやって来た。
カツの断面には「脂」がいっぱい。口に入れると、確かに脂が口に広がりジューシー風な口当たり。しかし「こりゃ黒豚かいな?」と思う。
確かに黒豚の脂は美味しいと思っている。しかし、こりゃ脂がギトギトに多いだけの豚肉の感じだ。これなら勤務先横にある焼き肉店『牛長』の昼定食『黒豚トンカツ定食・650 円』のほうがずっと美味しい。
ソースの味噌はドボドボの濃いめの味付け。黒豚カツを味噌ソースにすると、豚の味なんてなんにもわからないじゃないか!
なんとか食べおわって支払いは一人1,150 円。「黒豚って高いね」。

取材先の食の文化に触れるため・・・なぁんて

オーストラリアも北海道も青森・長野そして九州と地域毎に美味しい食べ物や酒が違う。
何故その地が、その商品の産地になっているのかを知る手掛かりになると思っている。そこの土地や水そして空気が、取材先の品物を作っている。
なぁんて言っているが、ただの食いしん坊なだけ。今回の取材先での食事の選択は、フランス料理だったり稲荷寿司だったり東京蕎麦・トンカツや鰻という、どうもこの土地との関係を掴み所のない料理を選んでしまったよう。二泊三日の取材で欲張りすぎたのかもしれない・と美味しかったのに反省しきりの取材旅行になってしまった。

取材日:
1998年12月17~19日


≪余話≫
この取材から約20年後に最初の取材先さんの工場に取材に行きましたが、新しい工場が伊那谷に新たに出来ており、そちらの取材ということでリリアーヌに行けなかったのが残念でしたが、伊那谷もまた風や水が美しい場所でした。もし機会があったらもう一度行きたい場所です。


◆約3000文字の本文をお読みくださりありがとうございます。
20年以上前に書き留めておいた取材旅行記番外編のひとつです。国内篇も数本ありますので続ける予定ですが、もしよかったら「スキ(♡) 」を押していただけると励みになります。

※見出しイラストは
カメラマンのイラスト by Loose Drawing
https://loosedrawing.com/illust/1034/

この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

49,931件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?