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マーケティングにおける”想像筋”の重要性

みなさんのサービス・製品で考えてみてください。

Q. 1億円を投資してTVCMを打ちました。
さて、あなたのサービスの指名検索はどれくらい上がるでしょうか?

パッと答えが言えるのは、マーケティングに関わる方・経営者の約1%にも満たないでしょう。
これまでTVCMを打ったことがなければ、ベンチマークがないですし、マス広告を実施して的確にその効果を予測し切るのは不可能だからです。

次の質問です。
Q. あなたは麻布十番で、1時間20,000円の個室サウナを経営しているとします。キンキンに冷えた水風呂、こだわりデザインのサウナがあり、高単価ですが質には自信があります。
オープン後、なかなか集客がふるわず広告を打つとなり、デザイナーから2つのクリエイティブの方向性を提示しました。
①50%OFFクーポン

②サウナ創業時の想いのこもったデザイン


みなさんはどっちを選びますか?
ちなみに僕は値引きプロモーションがとても嫌いなので、②を選びます。
が、そんなことは実はどうでもいいです。

大事なのは、CMにせよ、クリエイティブにせよ、それが世の中に出た時のインパクトを想像することができるか、ということです。
そして、これはマーケティングという仕事をする上でとても重要な”正しく想像する力”です。
マーケティングの方を採用・面接させていただくときに、どこみているかとよく聞かれますが、結構重要視しているのはこの想像力です。

クリエイティブの話で言えば、僕は値引きが嫌いですが、別に50%OFFでまずはサウナの初回トライアルを呼び込むのも素晴らしい作戦です。
ただ、半額できた後に、その2倍にあたる通常金額でもう一回来よう、とお客さまが本当に思うのか、これを事前に想像しないと行けない。
半額にすれば人は集まると思うが、それを運用した現場のデジタルマーケターは、その半額クーポンの時の実績が次はベンチマークとなり、それだけのコンバーションレートを求められるため、多分次回も値引きプロモーションを続けることになるだろう。
競合はどうだろう。
そのエリアで1店舗が大幅な値引きで集客をすれば、それに釣られて値引きをし始める店舗が現れる。
すると、本当は1時間2万円取れていたはずなのに、気づけばお客さまの中でサウナって1時間1万円だよね、がデフォルトになってしまう。
これはお祭りに行けばあらゆる出店がありつつ、たこ焼きは500円以下では売ってないとか、価格をしっかりライン引きして守っている。
楽天モバイルが出てくるまでは、大手携帯会社はたくさん※をつけながらだけど、価格を守って高収益モデルを作っていたのもそう。

なので、そのマーケティングアクションを取ることで、結果として何が市場・お客さま・競合に起きて、その結果、1年後にどんな変化をもたらすのかをとにかく想像する。
これはセンスもあるけれど、一番大きいのはあらゆるマーケティング施策を頭に入れてたくさん勉強して、ただそのコピーが面白い・面白くない、ということに留まらず、それがもたらす結果を1年後、その先まで見てその事例をひたすらに蓄積、抽象化すること。

あなたにとっての面白いは、残念ながら世の中にとって魅力的とは限らない。
あなたにとっての”一回だけ!”の値引きは、残念ながら世の中にとってはそれが今後も続くと期待してしまう。
なぜ、顧客起点のマーケティングをしないといけないのか。
それは自分たちはそのサービスのターゲットではないから、本質的には理解できないからです。
感覚がズレているからこそ、お客様にたくさんヒアリングして、その補正を粛々と行う。

例えば、小林幸平が今日誕生日を迎えました、という事実は僕の家族以外、まじで興味ない。
なんならお母さんは毎年ラインくれるけど、妹はなんの連絡もないから家族ですら全員ではない。
そう思うと、自分の血すら通っていない、まだ使ったことないサービスや製品の話や広告なんて、まず大前提みんなあんま興味ない。
この前提でマーケティングを考えることができるかどうか、をいつも常に考え続けている。
プレゼンも同じ。
うまい人は必ず冒頭で掴みを取る。
謎に歩き回ったり、身振り手振りをつけて想いをぶつけてくる。
素晴らしいマーケターはみんなプレゼンがうまいとか言われるが、あれはあながち間違っていない。

なんでこんなことを話したかというと、自分自身、この想像力の重要性を分かっていなくて、たくさん失敗をしたからです。
こんな失敗を経て、たくさん世の中の事例を学ぶようになり、お客様にまず聞いて勉強させてもらうことがナチュラルにできるようになりました。

失敗1:新卒ロレアルでシャンプーを担当していて、まだ市場にないシャンプー(オールインワンの泡が立たないシャンプー)だったので、これは市場がひっくり返るくらい売れるわ、と思い、在庫調達しまくったらあんまり売れなくて10年分の在庫を抱えるという大失態

失敗2:新卒の時から海外に行きたくて、海外に行ったら偉いんだ!と思い、実際に海外に行くと、海外に行ったことがゴールだと30歳にもなりながら勘違いし、実際はむこうでの仕事がきつすぎてまじで禿げた

失敗3:数年前、代理店としてスタートアップがTVCMを打つのを支援していた時、その会社はCMを打てば受注が止まらなくなると思って、コールセンターの数を増やしていたらしい。
自分自身も当時はまだTVCMの肌感がなくて、事前に何もアドバイスできなかったが、結果1億円ほどで実施したTVCMの効果は無風で、その経営者からめちゃめちゃお叱りを頂いた。

こんな失敗ばかり聞くと、じゃあそのインパクトを低めに読めばいいじゃないかとなるが、そうではなくて、適切に評価することが大事なんです。
せっかく素晴らしい施策で、しっかりインパクトが出たとしても、それを低く見積もっているとその次の一手が遅れてしまい、波に乗り切れない。

想像筋のかけらもなかった、ドジっ子駆け出しマーケターだった10年前の僕でしたが、これは運良く日本・グローバル市場、大企業・スタートアップ、事業会社・支援会社・経営者、としてありとあらゆる立場で、ありとあらゆる”想像とのGAPとそれによるショック”の経験し続けたからこそ、少しづつですが、マシになったんじゃないかと思っています。

想像力、マーケティングに携わる方はぜひ意識してみてください。

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