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本おたくとよもやま話 ゲスト回レポート【moonさん:後編】

「今日のテーマとなる本は?」という切り出しから始める行き当たりばったりなラジオ。軸は“本”単語のみ。題名も、台本もない自由な雑談だからこそ、生まれる価値があるかもしれないしないかもしれない。「なぜやるのか」が重視される世の中で、全くノープランで取り組むことで生まれる偶発的な気づきを得るために、よもやま話をしてみます。

https://stand.fm/channels/652baa46bcd1491cab83f630

毎週、たかしおと、年間130冊以上の本を読むというライターのえなりさんとで、1冊の本をもとにラジオを配信する『本おたくとよもやま話』。本の紹介のあと、本の中身から展開されるトークテーマはさまざまで、本に書いてあることを通して各々の価値観を深掘りしていく様子が売りの番組です。

そんな当番組ですが、第10回と第11回の配信は初のゲスト回を実施。記念すべき初ゲストは、“本”をテーマにするなら絶対に紹介したいと思っていた、BOOK HOTEL神保町の支配人 moonさんをゲストとしてお迎えしました。

後編となる第11回では、えなりさんが選んだ本をもとによもやま話が始まります。第10回に引き続きゲスト回ということで、特別に内容のカットなしで配信の内容をお届けします。

ゲスト:moonさん( X )
1994年生まれ、長野県出身。BOOK HOTEL神保町・総支配人であり、結婚相談所「BOOK婚」の代表カウンセラーでもあり、ライター・Kindle作家でもある。BOOKHOTEL神保町の支配人になったきっかけは「世界一シンプルな書き方の教室」の出版。cafe巡りと読書が好き。

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BOOK HOTEL 神保町
BOOK婚

moonさんのインタビュー記事(取材・執筆:たかしお)

えなりさんが持ってきた『ベルサイユのゆり』とはどんな本?

たかしお:では前回に引き続き、第11回もゲストにmoonさんをお招きして収録していくコラボ回ということで、moonさん、えなりさん、よろしくお願いいたします!moonさんについては第10回の放送で自己紹介をしていただいているので、良かったらぜひ前編から聴いてみてください。今回はえなりさんの紹介したい本ということで、『ベルサイユのゆり』を持ってきていただきました。えなりさん、この本を持ってきていただいた理由や、どういう点をおすすめしたいと思ったのか教えてください。

えなり:この本は、単純に私がめちゃくちゃ好きなので持ってきました。マリーアントワネットにまつわる短編集のような本です。この本の前に出版されているシリーズものの本である『マリーアントワネットの日記』(Rose/Bleu)』と同じ著者さんが書いた本で、『ベルサイユのゆり』では、マリーアントワネットの周りの人から見たマリーアントワネットや周りの人の人生について書いてあります。女の人同士の友情の話や、ジェンダーが厳しい中でのし上がっていく女の人の話が載っていて元気をもらえるし、何よりマリーアントワネットが好きなので、この世界に触れ合える本をぜひご紹介したい、と思って持ってきました。

moon:マリーアントワネットは何で好きなんですか。そもそも好きになった理由って何ですか。

えなり:初めてマリーアントワネットについて知ったのは漫画の『ベルサイユのばら』でした。世間では高慢で悪い人みたいに思われていますけど、意外と周りの人への愛にあふれていて可愛いものが好きで、オシャレで。王妃としては多分失格なんですけど、人として良い人な部分を知って、お友達になりたいっていうベクトルで好きになりました。尊敬はあまりしていないかも(笑)。

moon:そうなんですね(笑)。「こういう友達と一緒に飲んだら楽しそうだな」みたいな。

えなり:そうですそうです、ドレスとか見て一緒にキャッキャしたら面白そうだなみたいな。

moon:マリーアントワネットについては、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」って有名なセリフくらいしか知らないんですけど、この本はマリーアントワネットのお友達との話ですか。

えなり:マリーアントワネットのお友達だったランバル公妃って人が、幽霊となってフランスを漂っているところから話が始まるんですよ。自分が死んだあとにフランスに来ている観光客をつかまえて、マリーアントワネットに縁のある人に聞いてきたいろいろな話を聞いてほしいってことで、その話が本人の一人称で語られているっていう本です。

moon:幽霊が語るやつですか?以前ちょっとだけ冒頭だけ聞いたんですよね。

えなり:そうです、幽霊が語る系。ずっと一人称なので、読みやすいです。あんまり読書に慣れてない人にもおすすめかも。

僕たち、私たちがヨーロッパや西洋の歴史に惹かれる理由

moon:えなりさん、歴史が好きだったりするんですか。フランスが好き?

えなり:フランスが好きですけど、歴史も結構好きですね。

moon:ベルばらから入ったんですか。

えなり:はい、ベルばらから入って。他にもフランス革命の歴史とかハプスブルク家とか、ヨーロッパのキラキラしたあの感じが好きなんです。

たかしお:全然話の方向性変わっちゃうかもしれないんですけど、こういうヨーロッパや西洋の歴史とか、こういう人達が着ているドレスにあらわされる世界観とか、そういうところが好きな人が多いですよね。アニメとかでも中世の方が描かれやすいですし、僕も好きだなあと思ってるんですけど。

えなり:今と全然違うから憧れるみたいなのもありますよね、あとはやっぱり豪華ですしね。

moon:確かに豪華で華やかなところに惹かれるんですかね。なんだかいいなあってなる理由は何なんだろうって思って。

たかしお:悪い貴族じゃなくってすごい言葉遣いやお作法が良い貴族の人もいるじゃないですか。ああいう風に自分もできるようになったらカッコいいかなとかそういうことを考えちゃうからかな。自分が好きな理由でいくとそうなんですけど。

えなり:確かにそうですよね、テーブルマナーとかそういうやつですよね。

たかしお:そう。テーブルマナーとかちゃんとできてると「おっあいつすげえじゃん」ってなる。

moon:確かに。そんな本流行ってますよね、お作法の本みたいな。結構平積みされてた気がする。『「育ちがいい人」だけが知っていること』とか。

たかしお:知ってた方が良いってみんな思ってるけど、ちゃんとやってる人って少ないし、日常の中でそれがさりげなくサッとできるとかっこいいよなって思います。moonさんは、この辺の文化が好きとか興味あるとかありますか。

moon:私は小学校の頃にはアンネフランクが死ぬほど好きでしたし、高校の頃は世界史がすごく好きで。ミュージカル『レ・ミゼラブル』もめちゃくちゃ好きなんですけど、それを好きな自分を言語化できなくて、自分は何に惹かれてるんだろうなって思ってえなりさんに質問をさせていただいてたんですけど。華やかな世界観なのか恐れずに立ち向かう姿勢なのか、マリーアントワネットという横文字に惹かれてるのか(笑)。

たかしお:絶賛探し中ってところがめっちゃ良いですね。

moon:(笑)。好きは好きなんですよね、文化が。海外の文化にそういう風に惹かれるところってないですか。

えなり:あります。さっきの主体性の話(※第10回)に引っ張られているからかもしれないですけど、それこそ『レ・ミゼラブル』はあの時代の立ち向かうというか、権利を勝ち取るというか、もしかしたら主体性を獲得するみたいなそういうところに惹かれているのかな、ってちょっと思いました。

moon:確かに。私たちの潜在的な欲求で自由になりたいって部分や、コスプレ欲求でああいうドレスを着たいと思っているんですかね。魂レベルで(笑)。

えなり:自分を変えたいみたいな。

moon:自分を超えていきたい!みたいな。

本を読むとき、どういう目線になっている?

たかしお:冒頭でえなりさんが、尊敬はできないけど友達になりたいって話をしてましたよね。本を読むときって俯瞰する場合と、自分がその世界に入り込みながら見るといったように、いろいろな見方があると思うんです。えなりさんはこの本をどの目線で読んだんでしょうか。

えなり:そうですね~、そう言われると私は基本的に本を俯瞰で読む人なんですけど、この本はめちゃくちゃ主観で読んだかもしれない。

moon:『マリーアントワネットの日記』の本のあらすじをパラパラっと見ると、歴史のことに重きを置いた本っていうよりも、女の子が自分の胸の内を書いていくような本ですよね、きっと。あるあるの話もあって、共感というか近しいものを感じて主体的に読めるのかもしれないですね。

えなり:確かに!経験したことはないですけど、マタハラや女性だからなかなか出世できないといったこともマリーアントワネットじゃない人の目線で書いてあるので、そういう部分が自分に入っていきやすかったのかもしれないですね。共感しやすくて。

本から得られるぶっ飛び要素が私たちに与えてくれるもの

moon:ぶっ飛んでるのが良いのかもしれないですね、今の私たちや、この時代にとっては。ぶっ飛び要素みたいな(笑)。勝手に今お話していて自分が小説エッセイに求めているもののひとつにぶっ飛び要素っていうのはあるかもしれないなって思いましたね。

たかしお:現代のぶっ飛んでる人の中には、そういうぶっ飛び方じゃないと思われる人もいますよね。でも本の中に出てくるぶっ飛びって本当に「あっそうそうこういう感じ」みたいに、こういうぶっ飛びがしたいってことが詰め込まれていて、だからすごい惹かれるのかなって思いました。

moon:絶対自分じゃできないようなことをやってのけちゃうから本に惹かれるんでしょうね、きっと。やっぱりどこかマナーを守らなきゃいけない自分とか、はっちゃけたいけどはっちゃけられない自分とかがいる。断言はできないけど、日本人はそういう人も多いんじゃないんですか。だから惹かれるんじゃないですかね。

えなり:ぶっ飛び系の本を読んでると元気ももらえるし、この人はこれだけやばいことをやってるから自分も大丈夫かなって気持ちにもなりますよね。

moon:確かに。悩みがバカバカしくなるみたいな部分はありますよね。これは歴史上の人物かもしれないですけど、小説を書く人はそういう自分の経験があるから書けるんだと思うんですよね。小説とかエッセイとか、ぶっ飛んだものを書ける人は書き方が上手いんじゃなくて、普段からそういう思考をしてたり、常日頃からいろんなことに興味があって人と違う道を行ったりしているからこそ書けるってことはある気がして。そういう風に考えると、私は2024年はみんなが右に行ったら左に行くような人生を歩んでみたいなとはちょっと思ってますね(笑)。

たかしお:かっけえ(笑)。2024年はmoonさんがアントワネットになる年ですね。

moon:令和のアントワネットに(笑)。水野学さんが書いた『センスは知識から始まる』って本はご存じですか。

たかしお:いや、僕は初めて聞きました。

えなり:私も初めて聞きました。

moon:これも自己啓発って言ったら自己啓発の本だと思うんですけど、書くセンスや読むセンス、デザインするセンス。そういうものって日々の経験や知識だよねってことが書かれていて。いつもは降りない駅で降りてみるとか、お風呂を左足じゃなくて右足から入ってみるとか、頭からじゃなくて下から洗うとか、いつもと違うことをすると脳が活性化されたりアイディアが湧いたりとかありますよね。そういう風に、日々の中にスパイスを入れていくことで、いつもは思いつかないような出会いがあったり、違う本を読めたりする機会が巡ってくるんじゃないかなって常々思っていて。第10回の放送で話していた主体性の話もそうですけど、コスプレしたことないけどこういうドレス着てみるのって楽しそうだなとか、ハロウィンのときにパーティしてパリピみたいなのって私はできないよって思っちゃってたけど、意外とやってみたら楽しいかもな、って思いましたね。

自分を凡人と思っている人でも、誰かを感動させる物語を書けるのか

たかしお:ぶっ飛んだことを書くには当然そういう経験がないと書けないと思うっていう話と、日常の中で日々やっていることをちょこっと変えたりして、自分に色んな経験や体験を考えて作っていくっていう話がありますよね。そこの2つに関連して、自分のような凡人というか平穏に暮らしている人が、いろいろな道を進んだり、誰かを感動させる物語ってそもそも書けないのか、それとも日常の中で工夫して小さいことを積み重ねて書けるようになるのか、おふたりはどう思いますか。

moon:書けると思います。私はそれぞれ人間一人ひとりめちゃめちゃ面白いと思っているし、面白くない人間はいないと思っているので、書ける書けないではなくって「自分なんて普通だよ」って思っちゃってるけど、普通じゃないことに気付けるかどうかだと思います。みんな絶対に面白いんですよ。私は今日たかしおさんが朝ごはんに何を食べて、PCをどういう風に飾って、とかそういうことにすら興味があるけど、多分その視点に立って考えないじゃないですか。自分の朝ごはんなんてどうせ誰も興味ないとか思って。でもそれは私にとってはすごいコンテンツだし、えなりさんがこのあとどういう服装でどこに行くのかにも興味がありますし。日々のコンテンツの見つけ方って自分では気付けないけど、「自分なんて」って思っても意外と読み手はいると思うので、そういう意味では書けるけど勇気が出るかどうかじゃないですかね。

たかしお:素晴らしい回答。めっちゃいいと思いました。

えなり:そうですね、私も一個一個積み重ねていけば面白いものを書けると思います。だって人間って基本的には同じ生物なので、誰かにできることは基本的に自分にも到達し得るのかなと思っていて。もしかしたらその先に才能の壁みたいなものはめちゃくちゃ高いレベルではあるかもしれないですけど、人を楽しませたい、人に届けたいってことなら、やりたいっていう気持ちがあったらできるんじゃないかなって思います。

たかしお:いやー、えなりさんも素晴らしい。おふたりの回答が良くて、「自分にも、もしかしたら書けるかも」って思えました。コンテンツに求めているものは本当に人によって全然違うのと、あと、何気ない日常でも細かく描写するってことがすごい大事ってのは僕もすごい最近思ったりしてて。第7回でご紹介した古賀史健さんの『さみしい夜にはペンを持て』って本の中でも、スローモーションのカメラの話があったのを思い出しました。ひとつの何気ない日常、例えば5分の会話を3,000文字で表現するのか、それとも100文字で表現するのかによって全然解像度が違う。だから表現の仕方を工夫するだけで、単なる5分の雑談でもすごく面白いコンテンツになりえるって考えたら、逆に誰にでもなんでもできるんだろうなって。

moon:何でも、誰でも。本当にそうですよね。

たかしお:『ベルサイユのゆり』の話してたと思ったら最後全然関係ない話で着地するっていう(笑)。

えなり:よもやま感ですね。

たかしお:せっかくですし、最後にmoonさんに感想を伺えますか。

moon:面白かったです。私は本当に、本を読んでその本で何を得られるかっていうよりも、一文でもいいから考えるきっかけになって、それがアウトプットのきっかけになったら100点満点だと思ってます。全部読んで理解してどうってことよりも、何か書けるかもって思ってnoteを一本書いてみるような行動ができたことに意味があると思うので、やっぱり読書ってすごい良い手段だなって思うし、自発的・主体的に生きるっていうためにも必要なツールだなって改めて思いました。

たかしお:ありがとうございます。えなりさんも3人でやってみての所感はどうですか。

えなり:やっぱりいつも2人でやっているのとは違う視点が出てきて面白かったです。moonさんからいただいた質問も、普段にはない角度もあって楽しかったり発見になったりして、改めてもっと本を読んでいきたいなって思いました。

たかしお:またmoonさんにはよもやま話の収録にお越しいただきたいと思っているので、そのときはぜひよろしくお願いします。改めて、今日はmoonさん、えなりさん、ありがとうございました!




▼本おたくとよもやま話、ぜひ他の放送も聴いてみてください!

(Spotifyでも聴けます!)

また、フリーランスの憩いの場、コミュニティ『湖はんリトリート』も運営しています。

本おたくとよもやま話も、えなりさんとの雑談から生まれた企画です。コミュニティでは、多様なスキルや経験を持つメンバーの皆さんと日々話しながら、学びやエンタメの企画や取り組みを模索しています。興味ある方はぜひご覧ください!


執筆:やまゆか
2017年生まれの1人息子とともに夫の海外赴任に同行し、現在アメリカ滞在中。元ハウスメーカー勤務の実績やブログ執筆経験を活かし、2023年よりフリーランスライターとして活動を始める。
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