ペトロダラー

「ペトロダラー」



FBの「れいわ新撰組勝手連」というグループのモデレーター、大窪淳仁さんという方とアジア通貨危機について突っ込んだやりとりをしていて、非常に重要な議論だったのですが、なんと今彼にコメントを返そうとしたらやりとりがそっくり削除されていました。



なんなんでしょうねえ。



こう言うところが、ダメなんですよ、れいわ新撰組の支持者は。



さて、大窪淳仁さんとのやりとりで、「ペトロダラー」という言葉を出しました。それについて大窪淳仁さんから「ペトロダラーというのは聞いたことが無い」と言われたので説明します。



米ドルは世界経済の基軸通貨です。何故ドルが世界の基軸通貨であり続けているのか。そのキーワードが「ペトロダラー」です。



昔は、ドルは金と交換出来ました。金本位制と言います。しかしニクソン大統領は、ドルと金を等価で交換するということを止めたのです。世界に溢れるドルが膨らみすぎて、それを全部アメリカ政府が保有する金と交換することは不可能になったからです。



ではどうやってドルの基軸通貨としての地位を維持するか。



知恵を出したのは、キッシンジャー国務長官だったそうです。キッシンジャーが考えついたのは、「中東の原油は全てドルでしか売買出来ないようにすれば良い」という事でした。ニクソン政権当時中東の原油は世界の石油生産のほとんどを占めていましたから、それがドルでしか買えないとなれば、金に交換出来なくなってもドルは世界の基軸通貨の地位を確保出来るとキッシンジャーは言ったのです。



ではどうやって中東の産油諸国に「お前達の石油はドルだけでしか売らない」と約束させたのか。



それは、米軍が中東産油国の独裁政権を守るという事の引き換えでした。



アメリカって何かというと民主主義を持ち出します。ロシアや中国にはね。しかし、中東の産油国のほとんどは、独裁政権なのです。王国が多い。首長国ってのもありますけど。だから米軍が艦隊を派遣して、こういう中東の独裁国家の権力を保障することにした。その代わり中東の産油国は石油をドル以外では売らない。こういう取り引きが成立したのです。金本位制から石油本位制に変わったのです。これが「ペトロダラー」です。 



イラクのフセイン大統領はアメリカのブッシュ政権に滅ぼされました。「大量破壊兵器を作った」とか何とかアメリカは理屈を捏ねましたが、イラクが大量破壊兵器なんか作ってなかったことは後に明らかになりました。ではなぜフセインはアメリカに滅ぼされたのか?



フセインがイラクの原油をユーロで売ろうとしたからです。



当時ドルとユーロは基軸通貨の座を争っていました。フセインはその形勢を見て、イラクの石油をユーロでも売ります、とやったのです。アメリカの虎の尾を踏んだのです。中東の石油をドル以外の通貨で買える。そうなれば、ドルの世界基軸通貨として根拠が揺らぐのです。だからアメリカはフセインを葬ったのです。



しかし前述した通り、中東の石油はエネルギー効率の最低限3.3の限界に近づいています。3.3を割ると、石油は世界のエネルギー源にはなりません。なぜならそうなれば、原油を採掘して石油に精製してパイプラインで港に贈り、港から巨大タンカーで全世界に運搬し、さらに石油からガソリンを作る、重油を作る、火力発電の燃料にする、プラスチックにする、石油を使って空気中の窒素を固体として捕まえて化学肥料にするといった諸々の過程で消費するエネルギーがまかなえなくなるからです。すなわち、採掘するエネルギーの最低3.3倍以上のエネルギーに匹敵する原油でなければ世界のエネルギー源にはなり得ない。なぜなら石油というエネルギーを、それを採掘して運搬して加工して、という過程に掛かるエネルギーが上回ってしまうから。



それで、中東の原油をドルでしか売らせないことで基軸通貨の立場を維持してきた米ドルが、今揺らいでいるのです。だって肝腎の中東の石油が少なくともエネルギー収支に見合わずエネルギー源にならなくなれば、「石油本位制」というドルの価値基盤そのものが消え失せるからです。ドルが基軸通貨で無くなれば、ドルの価値を保証するのはアメリカ経済だけになります。要するに他の通貨と同じになるわけです。そうなれば、外貨の多くを米国国債で持っている日本はどうなるのでしょうか。今は米ドルが基軸通貨であり、それを支えるために日本は米国債を買い支えています。日本は米国債を売れないのです。中国は平気で売りますが。



中国経済はアメリカとは別の世界の経済中心になっています。だから中国にとって米国債は単なる金儲けの手段に過ぎません。売って買って利益を得る。それだけです。しかし日本はアメリカの従属国家だから、米国債を買い支えることを義務づけられています。米軍第七艦隊が睨みを利かせているから。



しかし中東の原油が世界のエネルギー源としての地位を失い、連動してドルの石油本位制が崩壊したとき、日本が持つアメリカ国債は紙切れになる可能性があります。むろん、アメリカ経済が好調なら好調な経済に支えられた米国債は価値を保つでしょうが、アメリカが不況になれば米国債の価値は下がることになるのです。ところが価値が下がった米国債を売り払えない日本・・・。



我がよくよく考えなければならないことです。

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