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ここまでとこれから…

ここまでの話

高校を卒業したての頃、可もなく不可もなくどっかの会社に勤めて平々凡々な生活をしていくのだろうな…と頭の中でぼんやり思いながら生きてた。
その時は、足かせになると思っていた「こぐれや」はいつか、さら地にして終わらせようと尖った考えを持っていた。参拝客は減って、子供の時に見ていた盛った光景はもう二度と見れないと思っていたからだ。

それでも両親は、何か困ったときの為に天狗面の作り方覚えとけ!と一通り叩き込まれた。反抗期(ちょっと今も(笑))の自分は、「そんなんやっても無駄…」と思いながら、絵を描いたりするのは好きだった自分、天狗面作りは不思議と苦痛ではなかった。
高校の先生に薦められて意気揚々と大学の試験を受け合格はしたが、家庭の事情で両親に謝られ地元で就職することになった。世の中を舐めて見ていた自分は社会の厳しさを思い知らされた。
自分よりかなり上の人に罵倒され続け泣いた。母に泣きついて夜逃げした。それを知った父は何も言わなかった、自分から話をちゃんと聞いて相手方に乗り込んでやると味方にもなってくれた。

それからしばらく、【こぐれや】を手伝うことになった。両親は負けて逃げてきた自分に怒ることなくひたすら天狗面の作り方を教え込んでくれた。
「このまま、こぐれや手伝いでいいかな…」
そんな時、父は言った
「継がせない、他を探して就職しろ。嫌なら出てけ」
なんで家業なのに継がしてくれないの?と疑問を持ちつつも、町の家電量販店に就くことになった。

今、木榑涼祐の人格形成

学生の頃、いじめられっ子だった。不登校にもなった。ただ、人に何かをプレゼンすること、人と会話することは大好きだった。
家電量販店では、倉庫仕事や工事の手配。良くも悪くもやりがいがあった。帰宅してこんなことあったと父に話すと、喜んでそれを聞いていた。

一年程経ったある日、チーフに呼ばれた
「こぐれ、ファンヒーター売れ」
え?いきなり?!パンフレット見ながらでもいいから、お客さんの欲しいものを探してあげてくれとのことだった。今思えば人手足りなくて数合わせだったとは思う。
でも…楽しかった!!!コーナーに来たお客さんに、「何かお探しですか?」と積極的に訪ねて、くだらない話を交えながらお客さんの求めるものを提供できた!と思えた。その頃から、学生の頃の暗いナヨナヨした自分は消えつつあった。
これまた父は喜んだ、いやーさすが我が息子と言わんばかりだった(笑)
そんな父は、会社で雪のトラブルがあった時に、すぐに除雪機かついで飛んできて助けてもくれた。
「涼祐が世話になってるからな!」すげー親父だよ…

おとう(父)が居なくなった日々

ある年の3月15日、おとう(父)が亡くなった。急すぎる。
その日も
「明日も仕事か?遅くまで大変だな!頑張れやぁ~!」と夜食に台所で焼いたトースターにマーガリン塗りながら食ってる父。
そんな豪気な父が、次の朝に亡くなるなって誰も想像してなかった。【太く短く生きるんだ!】タバコと酒を止めるくらいなら○んだ方がマシだ!と言っていた父、原因も肺にタバコで出来た胆石が詰まった事が原因だという…
何にも準備も無しに居なくなった父、ポッカリ穴の間ような日々。そういえば数日前に酔った父が、本当久しぶりに頭を撫でてくれたよな…なんかのフラグのつもりかよ…
この時に、甲斐犬の天虎ちゃんを家族に迎えた。心の支えになってくれたが無気力な日々が続いた。

家族二人と一匹を支えなきゃと、お世話になった家電量販店を辞めた。色々と転々と苦戦しながらも、しにものぐるいで頑張った。
そんな中、母は【こぐれや】を一人で守っていくと天狗面作りを辞めなかった。少し反抗的に、なんで見込みのないもの続けるんだよ!と思った事もあった。
母と父の真意を知ったのは、父が亡くなって3年が過ぎた頃だ。
母は、これやってれば食い扶持には困らないからと言いながらも祖父母から受け継いだ仕事をそう易々と潰してなるか!周りを見渡せば皆、自分の所の天狗面の文化を馬鹿にしてる!でも私が辞めたら本当にこの文化が消えるだろ。と半ばキレ気味に初めて真意を聞いた気がする。
続けて父に代わって母は、多分おとうはね、先行きがどうなるか分からない収入の不安定なこの仕事を簡単に継がせて涼祐を苦しめたくなかったんだと思うよ。でも何か困ったときの助けになると思って天狗面の作り方教えてたんだと思うよ。

馬鹿野郎…亡くなる前にそう言えよ!!

もしかしたら、違う未来があったかも知れないじゃないか!!おとうに【こぐれや】が【迦葉山】が再び盛ってる姿を見せられたかもしれないじゃないか…
でも過ぎてしまった事だ、せめて母にその姿を見せてやる。そう決意が固まった。当時勤めていた会社の休日に久しぶりに【天狗面】を作った。

なんだこの高揚感…

楽しい…自分が表現するということがこんなに楽しいだなんて、おとうはこの時の為に作り方を叩き込んだのか…作りながら泣いた。
よし、やろう!!おとうが思っていた不安を吹き飛ばすような祭りを起こして、それ以上の事をやってやろうじゃないか!
おとうが無意識にやっていたことにもヒントがあるはず…天国から見てろよ!!おとう!やってやるからな!!

自分のアイデアの源泉に続く…

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