JapEn 17th 参加資格について ②

この投稿はペンスピナー向けです。


先日の投稿の後、JapEn 17thの参加資格について制作委員の方と少しやりとりできました。
また、再度JapEn 17thの参加資格が少し改訂されそうです(そう聞いています)。
改訂されてから投稿するつもりでしたが、もう一週間になるので待たずに投稿します。

→→(2021/10/02追記)チェックしたところ、改訂されていました(「日本人の」の表記の削除)。改定された旨のアナウンスはされていないようです。
本文は改訂前に書いた内容になりますが、書いた通りの改訂内容でしたのでそのままにしています。



この投稿は、
・制作委員の方との話を踏まえて考えたこと
・今の参加資格について
・その他含め資格設定方法の評価検討・提案
これらについて交ぜて書く記事です。


この投稿の目的

前回の投稿に引き続いて、問題意識の共有と、議論・改善のきっかけになればとの思いから投稿します。

今回の改訂で、差別的な排除を感じていた部分については解消されます。ですので、私がとやかく言えるのはその点までで、後は制作側に任せるべきなのかもと思います。

しかしながら、まだ不合理な排除の可能性の残る資格設定になると考えています。これが差別にあたるのかは分かりませんが、多様性に関わる話であり、ここを見逃すのも筋が通らないように思います。

当初の差別・排除への反発からいくらかヒートアップしたその勢いで書いた文章なのですが、
私の視点から見える問題点について指摘し、対案の提示もしていますので、一定の意味はあると考えたので公開します。
制作に関わらない私の考えるべき範囲を超えて書いたような箇所もあるとは思いますが、何かしらの役に立てば幸いです。


批判はあくまで参加資格の内容についてです。

改訂される部分について

私が前回の投稿で主に問題にしていた箇所である、「日本人」の表記が参加資格の規定文からなくなります(そうなると聞いています)。

前回、参加資格が改められた際のアナウンス
「『日本人』の定義について変更し、以下のように定める」
という書かれ方でした。新たに「日本人」の条件が3つ示された形です。
「日本人」と書かれた時点で、そこに誰を含めるかいくら条件を付記しようとも、心情を害される人があり得ます。
また、「日本人」という、客観的には規定できない集団について定義しようというのは無理があると考えています。

これが、「人種」や民族的な集団を指す言葉によらない資格設定に変更されることは大きな改善だと思います。


変わらない3項目について

前回の投稿では、「日本人」と書くことを主に問題に据えていたため、その下の条件3項目についてはとくに評価検討していませんでした。

今回もその条件3項目はそのまま残されるとのことで、「日本人」かどうかに関わらず、3項目のいずれかを満たすことが資格を有するための条件になります。この3項目について考えます。
項目は、
・日本で出生
・両親か祖父母の1人が日本で出生
・5年以上継続して日本に居住
この3つです。
制作委員の方の話では、この3項目はラグビー日本代表の資格条項を引っ張ってきたものだそうです。
その点も踏まえて、この3項目でその人が適格か判断するという資格設定の問題点を挙げます。


●問題点①
まず、これら3条件では適格であるべき人をカバーできていないと考えられる点があります。

制作委員の方のお話によれば、適格者をすべてカバーするためのものとして、とくに最後の項目「5年以上継続して日本に居住」を考えているようです。
つまり、JapEnに出たければ、日本へ移り5年以上居住すれば誰でも権利が得られるため、実質すべての人に権利があると考えることができ、当然適格者も最低限カバーされる、という考えなのだそうです。

ここで私が問題と見ているのは、「いま現在の時点において資格がないとされる人がいる」つまり「今年のJapEnに適格であるべきにもかかわらず排除される人が存在し得る」という点です。日本での居住歴が浅い人でもJapEnにふさわしい人はあり得ます。
その意味で適格者すべてをカバーできているとは言えないのではないかと考えます。
また、日本へ移住し5年以上居住することが現実的に可能かどうか関わるという点で見ても、不平等な資格設定だと言えると思います。

●問題点②
次に、資格が当人のアイデンティティを考慮しない設定になっている点です。
自身がJapEnに適格な日本のスピナーだと信じることと、現在設定されている3項目は本質的には関係がありません。
日本のスピナーとしてのアイデンティティを持っているかどうかを判定するものではないため、適格者の漏れもそうですが、条件さえ満たしてしまえば、逆に当人のアイデンティティに関わらず資格を有してしまう可能性もあります。
例えば、たまたま祖母が日本で出生しただけで、他国で他国文化に育ち、日本のペン回し界に縁を感じているわけでもない人が資格を有してしまっている、といったことです。
これがJapEnの資格基準として適切な設定なのかは疑問があります。

●問題点➂
この条件を本当に満たしているか、実際に確認することは現実的に可能なのかという疑問があります。
戸籍の提出を求めたりするのでしょうか。居住歴の確認方法はどのようにするのでしょうか?
開示を求める場合、出自など個人的なルーツに関わる情報を明らかにせねばならないことに対する心理的被害等の可能性も考慮すべきです。ルーツをあえて明らかにせずに「日本人」として暮らす人などもいます。
個人情報の扱いに関する問題等もありそうです。

私の考える主な問題点は以上の3点です。
問題点➂については主に運営上/実務上の障壁ですので、置いておきます。
問題点①と②について、これはラグビー日本代表資格という、物理的にその地に身を置かねばならない競技のために意図して作られた資格設定を、
JapEnというインターネット上で完結できる活動に流用していることによって起きていると考えます。

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(ここから以下この項はラクビー日本代表資格を流用したことの是非について。載せなくていいかとも思いましたが書いたので)

ラグビー日本代表資格自体がはらむ問題も、深く掘り下げてみればあるのかもしれません。
ただ、ラグビー日本代表の資格基準として考えるぶんにはそこまで不合理な点はないと考えています。
多様なルーツのメンバーから成るラグビー日本代表の資格基準ですが、これをJapEnにそのまま適用することの是非について、私の考えたことを記します。

ポイントとなるのは、ラグビーとペン回しの違いと、資格条件の設定意図です。

ラグビーは当然、物理的にそこに身を置かねばプレーできません。チーム競技でもあるため、チームでの練習も積む必要があるでしょう。
また、ショービジネスでもあるので、日本のファンに応援してもらえるよう、認知されるためにある程度の期間日本でプレーしていることや、"血統"的ルーツがなくとも確かに日本との結びつきを有しているといえる人であること、といったことも大事な要素としてありそうです。
これらのことを考えると、ラグビー日本代表資格に「日本での居住実態」が条件として盛り込まれることは合理的です。
対して、JapEn出演については、日本に居住しているかどうかはほとんど意味がありません。ペン回しはほぼインターネット上での活動になるため、日本のペン回し界に根ざして活動することは世界のどこにいても可能です。
ラグビーとペン回しはその場所性という観点において性質が異なるものです。

資格設定の意図についても考えてみます。
突然日本へやって来た人が誰でもすぐラグビー日本代表権を得られてしまうようなことは好ましくありません。「日本に一定期間居住していること」という条件は、見境なく資格が与えられてしまうことを防ぐという、制限をかける意図も含まれていると見ることができます。
対してペン回しのほうでは、5年後のJapEn出演のためにわざわざ日本へ移住することも考えにくく、条件「5年以上継続して日本に居住」を設定することで実質誰でもに参加権があるとするのは若干不合理です。足枷としての側面もある条件を、すべての人に資格を与えるための救済策としても解釈することになっています。

このふたつの観点(場所性の違いと資格設定の意図)から考えて、日本での居住実態について定めた条件を、JapEnの参加資格として適用するのは最適とはいえません。

(また、この資格条件で弾かれる人については、ラグビーにおいては他の国で代表資格があれば同じ大会に出場する道があり、日本代表の資格基準から漏れることがその大会出場への道を絶たれることを意味しません。
対してJapEnのほうでは、JapEn自体への出演の資格なので、弾かれたらそこで出演は不可能になります。)

ペン回しとは性質の違うスポーツの資格基準を参考にしたのは最適ではなかったのでないかと考えます。
ペン回しのために独自の資格基準を定めることが理想かとは思いますが、参考にするのであれば、
個人競技の側面が強いスポーツや技術の高さや美しさを評価するスポーツ(スケボーやフィギュアスケート、体操やダンスなど)、また、インターネット上で開催される大会(詳しくありません。オンラインゲーム、eスポーツやビートボックス?ジャグリング?)等が参考になるのではないかと個人的に思っています。

(ラグビー日本代表の資格を流用したことの是非について終わり)
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以上のような問題点が考えられるため、現状の資格設定にはまだ改善の余地があるとみています。

資格基準の設定へのアプローチ

それではどのように資格基準を定めたらよいか、私なりに考えてみます。


まず、設定方法には大きくふたつの方向性があると思います。
主観的判断による資格設定と、客観的判定による資格設定です。
適切に設定されれば、柔軟なのは前者で、明確なのは後者です。
 
●主観的判断による資格設定
当人のアイデンティティを判断基準に置きます。
例えば「日本のペンスピナー」とするなどです。当人が自分を日本に帰属するペンスピナーであると考えているかどうかの一点が問われます。
メリットとしては、個別のバックグラウンドを持つ人々すべてに柔軟に対応できる点で、適格者すべてをカバーできます。
正直に自己申告する人がほとんどである限りは、いちいち当人が本当に適格であるか個別に判断する必要もないかと思います。
資格について定めた文もシンプルな形になります。
デメリットとしては、客観的に判断できない曖昧さがあるため、不適格者の排除規準もまた不明瞭である点です。審査員の裁量で弾くということで対処することになると思います。数が膨大になる可能性があり、対応が現実的でなくなる可能性もあります。

●客観的判定による資格設定
今回のJapEn参加資格のような、主観で揺らぐことのない客観的要素を条件として枠を明確に定めます。
メリットは、当人が資格を有するかどうかが明確に判定できるため運用しやすいこと、また混乱が起きにくいことです。
デメリットとしては、アイデンティティと離れたところに基準を置いてしまう点と、適切な条件設定が難しい点です。
多様なアイデンティティそれぞれに対応した条件を定めることは簡単ではありません。主観的で多様なアイデンティティに対して、客観的に絶対的な線を引いても、必ずどこかで適格/不適格を正しく判定しそこないます。適格であるのに取りこぼされてしまう例や、アイデンティティに関わらず資格を有してしまう例等があり得ると思っています。
また、明確に線を引こうとする方向性ですが、個別の例について疑問が残る・解釈の余地がある等、むしろ混乱の種になることも考えられます。


これらふたつの資格設定のメリットとデメリットを考えた上で、JapEnについてはどのような資格基準を考えたらよいでしょうか。
私の考えるJapEn適格者は、自身を「日本ペン回し界に帰属するスピナー」であると考える人です。最終的には当人のアイデンティティ次第ではないでしょうか。
適格者の漏れもなく、不適格者の入る隙もない理想の設定にいかにして近づけていくかですが、
ふたつの資格基準の定めかたを提案します。





①主観的判断による参加資格の案
参加資格:
・日本ペン回し界に帰属するスピナー

ひとつめの案は、当人の主観と正直な自己申告に任せる参加資格です。
適格者はすべてカバーされます。
明らかな不適格者は審査員の裁量で弾きます。
昨年JapEn 2020はこのような資格設定だったかと思います。





②客観的判定による資格基準に、救済措置を設ける案
参加資格:
・日本において出生
・両親および祖父母のうち1人以上が日本で出生
・日本ペン回し界に主に活動実績がある
上記のいずれかを満たす者。
また、いずれにも該当しなくても、日本ペン回し界に帰属すると考えられる人についてはこの限りではなく、個別に判断する。

ふたつめは客観的に判定することを主な方向性とした案です。
項目3つに関しては、「日本のペンスピナー」であれば大方がクリアし、「日本以外のペンスピナー」の大方がクリアできないと考えられるものを仮に挙げました。(この限りではないと思いますし、どのようにそれぞれを確認するのかという課題はあります。)
また、項目3つでは漏れる適格者があり得ると考えるため、救済措置として、漏れに対応できる柔軟な対応を盛り込みました。
これである程度明確な基準を設けつつ、個別のケースにも対応ができます。

以上の2つの案どちらにしても、場合によっては多数の参加希望者について適格かどうか個別に確認する必要が生じる可能性があります。
加えて、その個別の判断をする際には、客観的には判断しにくい当人のアイデンティティについて考えることになるため、判断に難儀する可能性があります(ただ、これは資格設定の方法に関わらず立ち上がってくる問題かと思います)。

良い折衷案などあればよいのですが、思いつきません。
長々と書いてきて疲れたので、このあたりにしようと思います。
なにかいい案があればぜひどなたでも教えてください。


最後に

今の条件設定で取りこぼされる適格者、というのが実際のところいるのかどうかは私の知るところではなく、そこはこの資格設定の問題を考えることと関係ありません。実際にあるかどうかわからない、極端かもしれない個別の事例について考えておくことも大事だろうと信じています。
取りこぼされる適格者として考えられる例が現実的である間は、その資格設定には問題があるとみたほうがよいと考えます。


今年のJapEn 17thでは、今回の改訂以降の修正はないのだろうという印象があります。
スケジュール的なところなどで制作進行に支障をきたすわけにはいかない制作側の事情もあろうかと理解しますし、実際にやりとりしてみて今後の改善に繋がっていく可能性も感じました。

多様性について小うるさい、難癖をつけてくる面倒なクレーマー的な立ち位置になっているんだろうなと思うのですが、不合理な排除は見逃せません。あくまで純粋な問題意識から書いています。
色んな人がこの問題について考えてくれると嬉しいのですが、自分の発信力では限界があります。賛成・反対にかかわらずぜひシェアしてください。
不合理な排除を味わう人があり得る状況が早く改善に向かうことを望みます。



↓現行の参加資格のコピペ

■参加資格
JapEn Boardにアカウントを持つ※ペンスピナー。
※「日本で出生」、「両親か祖父母の1人が日本で出生」あるいは「5年以上継続して日本に居住」のいずれかの条件を満たす者

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