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法制審議会家族法制部会第15回会議議事録9~赤石委員・大石委員・水野委員・青竹幹事・北村幹事

議事録17まで出てた

まだ15を読んでいく

新学期になって、学校再開 兄姉を送り出したあと残った弟の言葉に決意かため

さあ読もう

○赤石委員 

赤石です。時間も少なくなってきたので、手短にしたいと思います。
 まず、最初の16、17ページのこの補償的な要素、扶養的な要素というところですが、私としては、やはりこれは加えるべきと思います。それは、今、ひとり親の経済状況というのは、5年ごとに厚労省が統計を取っておりますけれども、OECD各国の中で日本のひとり親の貧困率はワースト1というのがずっと続いているわけでございます。正規の人の就労年収の平均は300ぐらいですが、非正規の方、就労年収の平均が133万円ですね。これで親子で暮らしている、この現実、それで非正規にならざるを得ない状況というのは、先ほどいろいろ落合委員、そして戒能委員が言ってくださいました。日本の仕事と子育ての両立困難というのはそれほど変わっていない、そのために、短時間労働をして収入が低い方、この方たちがコロナで更に仕事を失い、私どもの食利用支援、2,400を超えるパッケージを毎月送っていますが、命をつないでいる方がたくさんいるという事実をお伝えしたいと思います。
 また、補償とか扶養とかいうのは、夫婦関係のように見えますけれども、これは子どもの育つ環境を豊かにするという意味でございますので、単に夫婦の中の補償ではないということを、ちょっと皆さん、意識した方がよいのかなと思います。
 次に、23ページの夫婦の居住用の不動産ですが、これが特段の規律を設けないと書いてあるんですが、私も池田委員と一緒、同意見で、やはりもう少し検討がされるとよいかと思っております。というのは、やはりお子さんが離婚時に環境の変化というのが激しい場合には、いろいろな影響を受けております。お友達とか通う学校とか、こういったものの環境の変化が大きく、私ども、この間、就労支援で100人の方の面談をさせていただいたんですけれども、ひとり親の方、大変不登校の方が多く、それが就労阻害要因として大きいんだなというのを、改めて思いました。やはり環境の変化というのは非常に大きいなと思っておりますので、例えば、お子さんが3年生だったら、6年生の卒業ぐらいまでこの居住用不動産使用権があるというようなことができないのかというのは、私の支援者として思うところです。
 それから、財産分与に係る期間制限で、年金分割等も含めて、ここは3年というのがよいのではないかと思います。年金分割忘れていましたというような御相談、結構来るんですね。ですので、やはりここは、何らかのもうちょっと延長と、それから、今、離婚届に養育費決めましたか、面会交流決めましたかというのがありますけれども、例えば、慰謝料や財産分与、年金決めましたかというようなことが、リマインドとして入ってもいいのかなというのは、ちょっと思ったところでございます。
○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から大きく分けて二つで、補償の問題、ずっと議論があるところですが、それと、居住用不動産の問題について、直前の池田委員の御指摘と同方向の御指摘を頂きました。池田委員も触れておられましたけれども、子どもの利益に間接的に寄与するということを考えるべきだという御指摘だったかと思います。
 それから、今まで余り意見が出ていませんでしたけれども、財産分与の期間制限について、3年という案を支持するという御発言があったかと思います。
 大石委員の後、水野委員、青竹幹事、そして杉山幹事、細矢委員という順番で伺いたいと思います。

ひとり親貧困すぎる・・・単独親権制の産物だろう

○大石委員

 千葉大学の大石です、ありがとうございます。私も、離婚後の財産分与までの期間を3年に延ばすというのは賛成です。5年というのは多少長いように思えまして、3年程度の期間が望ましいと思います。
 それから、扶養ないし補償のところに関して申し上げたいのですが、やはり婚姻期間中のアンペイドワークを何らかの形で評価した上で、財産分与に臨むということが必要であろうと考えています。例えば、アメリカの労働経済学の教科書などにも書かれているような事例ですが、世界同時多発テロの犠牲者のコンペンセーション(補償)を行うときにアンペイドワークの評価が問題となりました。フルタイム労働者であったお母さんが亡くなったときに、その賃金だけを考慮するのではなく、その人がしていた家事労働の分も考慮したコンペンセーションをしたのです。このように、家事労働、育児、介護などを金銭評価して考慮することは重要であろうと考えます。
 あと1点だけコメントさせていただきたいのは、先ほど話題に出た出産前後の継続就業の話です。継続就業率が5割程度と言いましても、それは出産前に仕事を持っていた人を100%とした場合の継続率でありまして、第1子を産んだお母さん全体から見ますと、継続就業率はまだ4割程度にとどまっております。また、就業しているといっても、それは扶養や補償を必要としないということを必ずしも意味するわけではありません。女性については、就業していても賃金が低い、得られる収入が少ないというところが一番の問題です。日本のひとり親の場合、就業率が先進諸国で一番高いにもかかわらず、貧困率も非常に高いという特徴があります。したがって、仕事を持っているかどうかだけで扶養や補償の必要性を判断するのは、問題があると思います。
○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、期間3年を支持するという御意見と、それから、補償をめぐる議論については、家事労働の考慮ということが必要であろうという御指摘を頂きました。これまで財産分与の計算について、無形の労働が考慮されていないかというと、これを考慮して財産分与の制度ができているというところがありますが、そのことをより明確に書くべきではないかというのが、先ほどの戒能委員の御指摘なのだろうと思います。大石委員も、それを支持される御趣旨であると受け止めました。
 また、統計についての御指摘もありがとうございました。

お金に詳しい大石委員


○水野委員


 一言だけ、平成8年身分法小委員会のときの議論について申し上げます。先ほど落合委員から、半分くらいではなくて、3分の2が取れてもいいのではないかという御発言がありましたけれども、半分つまり等しいものと推定するのは、寄与の程度だけです。寄与の程度については半分とした上で、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入、その他の要素を考えますので、このときの議論では、たとえば主婦婚の場合は、もっとプラスアルファを妻にたくさん取らせるという議論をしておりました。当時、補償給付、Prestation compensatoireというフランスの補償給付も話題にでました。当時の数字では、フランスの離婚した男性の8割が全財産を渡して、かつ、借金を元女房に負って離婚するという、高額な補償給付で、そういう情報も前提に議論をしておりました。流石にそこまで手厚い離婚給付は日本では難しいだろうという大勢でしたけれども。ともあれ飽くまでも2分の1の推定は、寄与についてだけかかるというのが、この20ページの文章の趣旨でございます。
 身分法小委員会の生き残りとしての証言でございます。
○大村部会長 ありがとうございます。平成8年の提案の内容についての補足説明を頂いたと理解をいたしました。

むしろ、子育て世代、婚姻財産築けていない問題とかどうなるのだろう

○青竹幹事

 4点ありますけれども、手短に発言させていただきたいと思います。
 1点目ですが、財産分与の期間制限を長くするということについて、賛成いたします。離婚における夫婦の状況が多様であるということを指摘されているんですけれども、何らかの事情ですぐに財産分与請求できないという場合に、一律に離婚時から2年が経過してしまうと、もはや請求できないと切り捨てしまうというのでは、不公平な結果を放置してしまうということになり、妥当ではないと考えております。3年か5年かということがあるのですけれども、不公平な事態が発生するおそれをできるだけ防ぐといった観点から、5年でも私自身は長くないのではないかという印象を持っております。
 2点目ですけれども、相手方の財産の開示義務について規定を設けることについても賛成いたします。対象となる財産を隠匿するという状況は、公平性を図る道をふさぐということになりますので、開示義務を明文化するということに意義があると考えます。ただ、井上委員もおっしゃったように、義務があると規定しただけでは、それを守るかどうか、当事者の意思に任されてしまいますので、実効性が少ないようです。そこで、井上委員がおっしゃったように、開示義務を怠る場合に、過料に処するといった義務の履行を促す規定を置くのがよいと思っております。例えば、民法1005条にも遺言書の提出義務を怠った場合の過料の規定がありますので、このような規定を民法に置くことは問題ないと思われます。
 3点目ですけれども、これは明文化しないという方向のようですけれども、破産手続において、一方配偶者の債権者に財産分与を優先する、他方配偶者を優先させるという可能性の検討について、基本的に支持できるというように考えております。特に清算的な意義を持つ場合には、債務者である一方配偶者名義の財産に他方配偶者が潜在的持分を持っていて、それを財産分与において取り戻すということであると、その潜在的持分については、他方配偶者の財産権と捉えられる面が大きいと思います。そうしますと、債権者が把握できるのは債務者の財産のみなので、他方配偶者の財産分与請求権を優先していいのではないかと考えられますので、方向性としては、これは支持できるもののように考えております。
 4点目ですけれども、離婚後の財産的衡平性に関しましては、財産分与だけではなくて、民法754条の規定に問題があると考えております。夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも取り消すことができると規定されています。この規定を適用すれば、一方が他方に清算の意味で婚姻中に贈与したところ、後で取り消すということもできることとなります。清算の意味で贈与されたものは、他方がいわば財産権のようなものを持っていると捉えることも可能ですので、これを一方が取り消すことができる、取り戻すことができるというのは、妥当ではないのではないかと考えています。
 その他の点についても、民法754条については批判も多く、平成8年の答申にも削除しますと明示されていますので、実際に適用される例は少ないと理解しております。それをこのまま残しておくのは問題があるというように思いましたので、発言させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。青竹幹事は4点おっしゃいましたが、1点目は期間について、3年に延ばすというのに賛成という意見がありましたけれども、5年でもよいのではないかということ。2点目は開示義務について、先ほどの井上委員の案に賛成するということ。3点目は、これまでに出ておりませんでしたが、8の破産時の取扱いについて、説明の中で触れられているような方向で考えるべきではないかということだったかと思います。4点目、民法754条の話が出ておりましたが、民法754条は、今回財産分与との関係では特に、事務当局の方からは検討対象に加えられていないと理解しておりますけれども、そこは何かお考えありますか。

夫婦取消権


○北村幹事


 そうですね。元々ここは検討対象に加えていなかったところではございます。ただ、今、青竹幹事が御指摘いただいたように、平成8年の法制審議会の答申の中には削除するという旨が含まれていたということで、明示的に御議論いただいていたわけではありませんが、平成8年の答申の内容に強く御反対ということがなければ、これも検討対象ということに入れさせていただいて、今後の議論の中に入れさせていただくということも検討したいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。
  水野委員、これに関して何かありますか。どうぞ。

離婚後の養育とますます関係なくなるが、結局婚姻制度の見直しへ

○水野委員 

 754条についてです。平成8年答申も、この条文は、削除案にしたのですけれども、この条文自体は、元々はちゃんと意味のあるもので、フランスの贈与取消権から来ていまして、ある種、遺言の撤回権と同じような機能を持っているものです。現在のフランス法では、元の贈与取消権は廃止されていますけれど、今でも忘恩行為とか、あるいは子どもが出生するとか、動機の錯誤の場合には効力を失うという規定などで、内容的には似たものが残っています。ただ、日本の場合には、何しろ協議離婚制度なので、判例に挙がるケースはほとんど事実上の離婚給付として約束され、それを取り消すという形でしか出てこないので、離婚給付以外の場合も含めて、破綻している場合には取り消せないとして、判例上意味のないものにされています。
 身分法小委員会でも、そういう判例法を前提に、残すかどうかという議論をいたしました。本来は意味があるものだということも意識したのですが、ただ、それが本来の意味を発揮できるような形で日本で運用できるかといいますと、それはやはり難しい。これは、公証人慣行が背景にある国の制度で、夫婦財産制も、贈与も遺言も、みんな公証人が関与してやるもので、かつ、公証人は法律家として関与しますので、内容についてもいろいろチェックを入れるのですね。そういう国で初めて有効に機能する条文です。日本法においてこれを残すとしたら、これを種のようにしてフランス法的に膨らませて広げると意味はあるのでしょうけれど、現実問題として、やはり公証人の数もフランスの方は日本の数十倍いますし、無理だろうと、結局はこれを機能させる方向は諦めるという判断で、日本では弊害の方が多いので、削ってしまおうということになりました。
 ただ、従来、一部では、家庭には法が入るべきではないという根拠で、この754条が置かれたと言われていますが、それは違うと思います。むしろ家庭にはせっせと法が入らなくてはならないという発想でこの条文を理解すべきで、けれども、日本では公的な司法インフラがないために法が入らない、その前提条件下では悪影響しか持たない、したがって、やむを得ず削るというような議論の経緯でございました。
○大村部会長 ありがとうございます。
 久保野幹事からも手が挙がっていますけれども、関連した御発言ですか。では、後で伺うことにして、青竹幹事からの754条に関する御指摘について、水野委員から、平成8年の提案の経緯についての御説明がありました。私自身は、婚姻前に夫婦財産契約をして登記しなければいけないという現行の規律との関係はどうなるのか、それは手当てしなくてよいのかとも思うのですが、答申が出ていて、悪影響があるというのも、水野委員がおっしゃるとおりなので、もし皆さんの方で御異論がなければ、検討のテーブルには載せてもよいかと思いますけれども、いかがでしょうか。

そうやって議論が拡大していってしまったのか

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