見出し画像

法制審議会家族法制部会第15回会議議事録10~棚村委員・杉山幹事・細矢委員・久保野幹事・原田委員・小粥委員・落合委員・北村幹事

昨日は、本屋で正論を買ったりした

共同親権ポジティブ発信が増え始めた

 闇も感じるが

養育費ピンハネ撲滅宣言

オンライン登壇情報も公開された!

さて議事録15最終日

○棚村委員 


私自身は、1996年の答申というのは積み残しということなので、基本的には実現する方向ということでいいと思います。
 ただ、財産分与については、それをバージョンアップして、そこでの議論を現代的にやはり修正しなければいけないと思います。例えば、赤石委員が言ったことで、私も、全く賛成でして、ほかの国でも未成年の子及び監護親の居住を確保するというような考慮要素は、非常に重要なものとして使われていますから、そういう住まいをきちんと確保するというのは、お子さんの養育への配慮や保護にもつながると思います。
 ただ、私も大村部会長がおっしゃったように、民法754条については、確かに積み残しではあり、あまり異論はないかもしれませんが、若干気にはなっております。つまり、民法754条の規定自体は、適用を制限する方向で弊害も実質的には縮小していて、死文化していることは間違いありません。しかし、私も、夫婦財産契約とかで、むしろ合意でもって、結婚前も婚姻中も含めて、契約でもって多様な経済事情とかいろいろな取決めをして、紛争の予防とか解決のために使うというようなことについても併せて検討しながら、この規定が機能する場面があるのかどうかを検討しながら、夫婦財産契約という制度との関係で、夫婦間の契約の取消しや解消、変更などという規定をどう位置付けるか考えてもよいのかなとも感じました。さらに、今回はそれまで入れてしまうと少し広がってしまうのではないか。それでなくともこの部会での審議内容はいろいろ広がっているので、お子さんの養育に関わるというので、先ほど赤石委員がおっしゃったように、財産分与も経済的なお子さんの養育のための大切な制度であるという趣旨で、いろいろと現代的な目的とか理念とか考慮事情を入れていくということでバージョンアップはできるのでは。もちろん、1996年の積み残しではあるのですけれども、契約取消権の問題は、判例でも最高裁昭和27年判決で離婚給付を決めておいて取り消すことはできない、それは対象外だということになっていて、そういうようなこともあるので、これ以上いろいろなものを広げられるかなと心配しているところです。先ほど居住不動産の処分制限とか、それから共有物分割とかも、実務上非常に大事で、私も取り上げるべきだと思ってはいたのですけれども、どうも限られた時間の中で、非常に重要な論点が結構山積みになっているので、できる範囲でやることには賛成なのですけれども、事務局が御提案を頂いているような形で積み残されて、水野先生は中に入っていた生き残りで、私は、大村先生ももしかすると、外にいながら生き残っているということなので、是非新しい形で、今の社会の現状とかこれからに向かっていろいろなものを修正して、そして、いいものにバージョンアップしながら提案できるのであれば、この機会に提案をして、立法化というか、改正につなげるということでいただくと有り難いと思います。
  内閣府の離婚と子の養育に関する世論調査とかでも、分けるときにどういうことを考慮したかというときに、先ほど子育てに必要な同居親の住環境の確保とかはとても多く、それから、夫婦間の公平というのも次に多くて、公平や衡平という言葉は、法務省の別のお子さんのいる協議離婚の実態調査のときも、どういう事情を考慮していますかというときに、一番多いのは、やはり夫婦間の公平、それから子どもの養育とか財産形成の寄与、貢献とか、お互いの資産とか健康などと続いていました。このような一般の人々の意識や認識としても、基本的に、こういうものを総合的に考慮して判断をしているという中で、夫婦の財産的な公平というのは結構重視されているようですから、余り広げないということを言いながら、事務局のご提案に対しては、これまで積み上げてきたものを基礎にして、どこまでできるか、どこまでいいものにできるかという、限界はあると思うのですけれども、賛成させていただきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。いろいろ御意見を頂きましたが、まず、棚村委員から、先ほど池田委員の御意見もそうだったかと思いますけれども、96年の案をベースにしつつ、現状に合わせて変えられるところがあれば変えていくということで考えるべきであるが、やるべき課題は多いので、優先順位を付けて考えていくべきではないかという御意見をいただいたと理解しました。
  直前の話題だった754条についてですけれども、これも96年の立法提案に含まれていましたので、もし大きな支障がないということが確認できるのであれば、それはそれで、今回併せて実現するということもあってよいのではないかと思います。そういうことで、取りあえず少し検討していただいて、何か問題がありそうだったらやめるけれども、そうでなければ検討を進めることにさせていただきたいと思いますが、この点についてそれでよろしいでしょうか。
  ありがとうございます。多少これまでの議論の外に出る問題かもしれませんけれども、そういうことで引き取らせていただきます。
  杉山幹事、細矢委員、久保野幹事、そして窪田委員、原田委員。以上の順番で伺いたいと思います。

今や疑惑の人


○杉山幹事


 幹事の杉山です。青竹先生のご発言とも重なりますけれども、6と8について簡単にコメントを述べさせていただきます。
 6の財産開示の義務ですけれども、これは規定するのがいいと思っております。案①と②がございますが、これらは排他的なものではなく、協議離婚があることを前提に①を規律して、それが案②の義務を基礎付けるということにもなるとは思います。また、義務の履行を担保するための制裁も考えられまして、実際課すかどうかは別として、過料のほかにも、(注)のところにある手続の全趣旨というのも制裁の一つになるかと思います。
 他方で、開示義務には、自分の財産を調査する義務ものも自然に含まれると思いますが、調査が難しいような場合もあると思いますので、制裁を課す場合には、例えば、執行法上の財産開示の制度に対する制裁と同じように、回答を一切しないとか、あるいは虚偽の陳述をした場合に限って制裁を課していくというのが考えられるかと思います。手続の全趣旨で判断することについては、そのような曖昧な形で判断することには、あまり積極的ではないのではありますけれども、ただ、一方当事者の主張にそれなりに理由があるけれども、相手方が何も資料を出さずに非協力的であるというときに、最後は手続の全趣旨で判断するというような一つの制裁手段を認めるというのもいいのではないかと思っています。
 8の破産についてでありますけれども、基本的には、この資料の立場は、問題提起だけをして、具体的な提案を設けないものでありますが、補足説明の中の提案に、自由財産の拡張について触れられていますので、その点についてのコメントです。この立場は、財産分与請求権は破産債権であるという判例の立場を前提として、拡張された自由財産から、事実上優先的に任意弁済の途を確保するものと理解しているところです。自由財産として財産分与の対象となる財産を取っておくというのは、現在の考え方を変えないことを前提に、実務上対応可能な方策かと思いますけれども、他方で、これも説明のところにありますように、自由財産としたところで、その財産分与請求権に優先的に分配されるという制度的な保証というものはありませんし、何より破産裁判所に判断できるのかという限界もあるとは思います。したがって、実務に委ねるというのも一つの方法であるかと思いますが、だからといって、現状のままでいいというわけではなく、財産分与請求権を破産債権とする判例そのものの見直しも必要であると思いますし、その一方で、離婚と財産分与、破産との時期的な前後関係を見て、時期によって保護の程度があまり大きく変わらないようにする配慮も必要と思いますので、詳細な検討と議論が求められると思います。この場でするかという問題もありますか、仮にこの会議の場でできないのであれば、今後、その問題について別のところで検討をする必要性があるというメッセージは、残しておいていただきたいと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございます。杉山幹事から2点御意見を頂いて、6の財産の開示については案が二つ出ているけれども、二者択一でない考え方もあるということと、それから、制裁について御意見が出ましたけれども、この書き方を少し注意する必要があるという御指摘を頂きました。さらに、8の破産手続については、いろいろなことを考えると、実務に委ねるというのも一つの選択肢だけれども、他方で、きめ細かい規定を置いて調整していくということも考えられる、後者が無理ならば、それをどこかでやるべきだということを示したらどうかという御指摘を頂きました。

財産分与もテーマは細かいね


○細矢委員


 それでは、東京家裁の細矢でございます。私の方からは、実務の立場から、財産分与における扶養的要素の位置付けのところについて、少し補足させていただこうと思います。
 今回の部会資料では、財産分与における考慮事情として、主として扶養的要素に関する事情とされるものも含めて記載されております。同時に、一読目の議論におきまして、財産分与の法的性質の中心的なものが、清算的要素であるということについて異論がなかったということも記載されております。そして、実務上も、そのことを前提としまして、扶養的要素を考慮すべき必要がある事案においては、適切にその点を考慮しようとしている一方、一般的には補充的に考慮されることもあるにとどまっておりまして、扶養的要素については明示的に審理されるということは多くはないと承知しております。仮にこの財産分与の判断過程で、部会資料に今回あります①から⑥までの考慮要素、考慮事情を考慮するとした場合ですけれども、清算の観点から①の財産の額と②の寄与の程度で割合に基づく算定を基礎とした上で、その上で③から⑥までの事情も考慮して、総合的に考慮して、裁判所に与えられた裁量の範囲の中で、扶養的要素について適切に判断するということであれば、現在の実務上の審理の在り方をイメージ、つながってしやすいと思うのですけれども、先ほども一部の委員から御指摘ありましたように、例えば、稼得能力の喪失を、逸失利益を算定するときのように非常に細かく算定しなければいけないとしますと、これまでの実務の在り方とは非常に乖離が大きいということと、審理が複雑となって、審理期間がやはり相当長期化してしまうのではないかなという懸念をしております。
○大村部会長 ありがとうございます。財産分与、特にこの扶養的な要素、補償的な要素の取扱いについて、現在の取扱いと、それから今後裁判所として対応がしやすい方向はどのようなものであるかということについて、御意見を頂戴いたしました。
 終わりの時間が迫っていますが、久保野幹事と窪田委員と原田委員から手が挙がっていたのですが、窪田委員は手を下げられましたか。
○窪田委員 はい、結構です。
○大村部会長 それでは、久保野幹事、原田委員、小粥委員から手が挙がっているということなので、できればそこまででまとめたいと思います。

実務の実情、大丈夫かしら


○久保野幹事


 すみません、幹事の久保野です。補償的な要素について、議論の中で出てきたであろうことを、別の言い方をするだけなのですけれども、これは、労働マーケットの状況が変わったり、ケア、家事労働の男女間での分担の在り方が変わっていけば、問題にならないようなものかといえば、必ずしもそうではないということが指摘されたと理解しています。婚姻をしたら、2人で協力し合って生きていけばいいので、その中で稼働やアンペイドワークやその他の精神的感情的なもの、様々なことを考慮し合って、分担等して生きていくというのが婚姻で、それを解消したときに、リスクがどちらかに生じることがあり得る。そのようなリスクに当事者があらかじめ手当てしておくのが一番かもしれないけれども、なかなかそういうことが期待できないのが婚姻であるので、予想外に解消となったときのリスク、現実化したリスクを補償すると考える。そのことによって、翻って婚姻中の協力、扶助が様々な形で円滑に自由にできることになる、離婚時の補償が婚姻中のそういうものを支えるものだということがあるのではないかと思います。抽象的ですけれども、専業主婦の問題に限らず、より広い視野で見ていくものではないかということを、一言付け加えさせていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。雇用市場の在り方ということとは別に、婚姻の性格から導かれる補償的要素というのがあるという御指摘だったかと思います。ありがとうございます。

婚姻って何、が語られていく


○原田委員


 婚姻中の不動産の処分の制限について、今回は取り上げないというような提案もありましたけれども、非名義人が離婚したくない場合、仮処分ができないんですよね。離婚することを前提に、財産分与請求権を被保全債権としてしか仮処分ができないので、名義人の処分を止めることができないというところがあります。なので、やはり居住用不動産に限っては、何とか保全する方法、処分の制限をする方法を、できれば研究者の皆さんにも考えていただきたいなと思います。
 もう一つは、財産の開示の問題と、先ほどちょっと申し上げましたけれども、婚姻前から有する財産をなぜ開示しなければいけないかというところについては、後で制裁に賛成する御意見も出てきたというところもありまして、処分の対象ではない場合も多いわけですので、なぜここで婚姻前から有する財産及びということを入れないといけないのかということについては、議論が必要ではないかと、私は消極的に考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。処分制限の必要性ということと、それから、開示義務の対象についての御意見を頂きました。
  小粥委員、落合委員、もう時間になっていますので、すみませんが手短にお願いできればと思います。

居住用不動産概念は、連れ去り別居と対局?
連れ去りがあると、不動産は不要物になっていく

○小粥委員 

財産分与に係る期間制限について一つだけ。協議離婚を念頭に置けば、期限
の延長というのは何か分かるような気がいたしますけれども、裁判離婚まで念頭に置いての議論になるでしょうか。少なくとも、そのことをはっきりさせた上で、これから議論した方がいいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど財産分与の期間を延ばすということについて、賛成意見が続きましたけれども、裁判離婚の場合を考えたときにどうかということも考慮する必要があるのではないかという御意見を頂きました。

期限の延長があるか


○落合委員


 手短になんですけれども、今の補償というのを入れると、手続が大変になるということですけれども、一人一人について計算すると大変だと思うんですけれども、正社員を辞めた人はどのぐらい逸失利益があるというようなことを、これは全体的に計算しておいて、そういうケースだったら、それを考慮せずに今まで算定したものの、例えば1.5倍とか1.3倍とかを女性の方に与えるとか、何かそういうようなことを決められたらいいのではないかなと思うんですね。それによって、結婚するときに相手の仕事を辞めさせたら、後でどういうことになるかというのを、きちんと分かった上で辞めさせていただくというような意味です。だから、結構簡便にすることができると思います。何か今も、寄与分が半々ということだと水野先生に教えてもらいましたけれども、実際は何か半分に分けちゃったりしているんですよね、持っているものを合計して。それと同じような感じで、持っているものを半分に分けて、それに、例えば1.5とか1.3とか、何か掛けると、やった仕事を片方辞めさせたときは、何かそういうのを慣例にしていただけるといいなと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。補償的要素について、定型化はできないのかという御意見として承りました。
 まだ皆さん御意見があると思います。また、部会資料14以外のことについても時間があればと申し上げたんですけれども、残念ながらもう時間がございません。そこで、最初に申し上げましたように、中間試案の取りまとめに向けてのたたき台を、次回以降出していただくということになろうかと思いますが、それについて議論する中で、なお御意見があるところについては御意見を頂ければと考えております。
  ということで、今日もまた、皆さんまだ言い足りないとお考えになっていると思いますけれども、部会資料14についてはここまでということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  ありがとうございます。
  それでは、次回の議事日程等について、事務当局の方から説明をしていただきたいと思います。

なんか深すぎる議論になっていってしまう

○北村幹事

 次回の日程は、6月21日火曜日の午後1時30分から午後5時30分まで、場所につきましては、共用会議室6・7を予定してございます。
 次回は、事務当局から中間試案のたたき台をお示しさせていただいて、それに基づいて御議論していただきたいと思ってございます。ただ、養子、財産分与については、今日様々御意見いただいたところですので、現状のまま全体像を見ていただく形がよいのか、それとも、少し修正すべき部分は切り離した上で、できるところまでをお示しさせていただいた方がよいのかは、部会長とも御相談させていただきながら、御提示させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○大村部会長 ありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。それでは、法制審議会の家族法制部会第15回会議、これで閉会をさせていただきます。
 本日も熱心な御議論を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。
-了-

ここまでで、次から中間試案論~そんな流れだから見送りになっていく


親子に優しい世界に向かって,日々発信しています☆ サポートいただけると励みになります!!いただいたサポートは,恩送りとして,さらに強化した知恵と工夫のお届けに役立たせていただきます!