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法制審議会家族法制部会第11回議事録10~北村幹事・倉重関係官・落合委員・杉山幹事・棚村委員・武田委員・戒能委員・原田委員・北村幹事

気づいたら、11回目の議事録読み終了~
一巡目の終わりということに

いろいろ現状の問題から考えていったら、整理しないとすっちゃかめっちゃかになるねーということがよくわかる感じで、無理やり2巡目に突入していくかんじ

単独親権制の問題が暴かれていく


○北村幹事

 まず、離婚の際ですけれども、離婚の際に、元々婚姻によって氏を改めた夫又は妻につきましては、協議上の離婚によって婚姻前の氏に戻ります。親権者、例えば今お話がありましたように、母親の方が氏を変更していて離婚したという場合に、親権者を母と定めたとしても、直ちに子の氏が母の氏になるわけではございませんで、今回議論いただいております民法791条の1項での子の氏の変更の手続をしていただくことになります。そうしますと母の氏になるということになりまして、母の氏に変更した上で、家庭裁判所の許可を得て氏の変更をして、それで入籍届を出すことによって、母と同じ氏、そして同じ戸籍に入るという手続になります。ただ、この許可の手続自体はそう大変な手続ではないとは承知をしております。その点は以上です。  

○倉重関係官

 事務当局でございます。法定相続分の点につきましては、個々の事案における寄与というのは考慮しないで、やはり運用されているというか、規律上はそのようになっているところかと思います。他方で、先ほどございました、既に相続開始時には亡くなっている息子の方の配偶者の方の寄与等がどうなっているのだという辺りの御疑問につきましては、平成30年の相続法改正のときに特別寄与という制度を創設してございまして、そちらの中で考慮等もされるということになってございます。現状ではその限度ということになってございます。
 本部会の外縁との関係でございますが、相続分のところまで行くというのは、やや今回の諮問からは距離があるところかなとは感じているところでございます。
○大村部会長 よろしいでしょうか。

○落合委員

 はい、分かりました。相続のところは、でも、肝要ではあると思うのです、養子のところなんかと関係しますと。ですから、一番大事なところを外すような気もしないではありません。
○大村部会長 相続一般については、なかなかここでは議論しにくいのですけれども、養子縁組の効果をどうするかということとの関連で、養子になった場合の相続については多少検討する余地があるかもしれません。全体としての見直しは難しいのではないかいう今の事務当局の御発言とあわせて、このように引き取らせていただきたいと思います。
○落合委員 はい、分かりました。

○杉山幹事 

幹事の杉山です。私は第5の養育費と婚姻費用の関係のところについて、少しだけコメントをいたします。私も、既に御指摘があったように、養育費の部分だけ婚姻費用からうまく切り取ることができるのかという点について、やや疑問にも思っていますが、仮に切り分けられるとしても、その切り分けられた残りの養育費以外の婚姻費用などについて、今の制度を変えて一般債権のような扱いにしていくということ自体は避ける方向で議論していただきたいと思います。民事執行法の151条2とか、破産法の253条などでは、養育費に限らず、扶助の費用とか、あるいは婚姻費用の分担義務などについては、手続が比較的容易に開始できるようにしたりとか、あるいは免責されないという形で特別な取扱いがされています。これは、これらの婚姻費用などについての額が低いということ、さらには毎月定期的に発生するというような性質に着目するとともに、生活の維持に必要な費用であるという配慮に基づいているからであると理解しております。養育費などを有利に取り扱うといった場合に、その有利の意味が何によるかと思いますけれども、仮に養育費だけ今の制度よりも更に簡易な回収方法を認めるという形になったとしても、婚姻費用については現状維持にしてほしいと思っておりますし、そうしますと、かえって手続が多層、複雑になる可能性があるので、一括して有利な取扱いを認める方向で検討してもいいのではないかと考えているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。出発点として、婚姻費用についての取扱いを現在よりも不利にしようという議論は、多分、今のところ出ていないのだろうと思いますけれども、その線は仮に維持するとして、養育費の方を更に有利にしたという場合には、養育費だけそうするという余地もあるけれども、併せて婚費についても同様の扱いをするというのが手続上、違うものを作らないという意味で簡便なのではないかという御指摘を頂いたかと思います。ありがとうございます。

○棚村委員 

 私も第5の養育費と婚姻費用との関係について意見を述べたいと思います。今までも各委員から出ているように、養育費というのは766条1項の監護費用の分担というふうに理解していますけれども、この監護費用の分担と婚姻費用についてはかなり密接な関係があって、一体的に扱った方がいいだろうというような側面が多いのではないかと思っています。ただ、そうはいっても、今の条文での請求の当事者とか、それから手続というようなことを考えると、要するに請求の当事者や法的方法も異なってはいるわけです。その中で、算定の方法などについては、できるだけ合理的で簡易なものをというので、算定表みたいなものが修正されたりして用意をされている実情があります。
 ただ、注意すべきところは、金銭の算定などは、基礎収入をベースにしてどう按分するかとかそういう話なので、それから、義務の程度とか分担の程度みたいなものについては、割合と共通のところもあるのですけれども、やはり若干、大人と子供というのですか、夫婦と子供との違いみたいなのがあって、これも有責性をどの程度考慮するとか、それから、婚姻関係の破綻の程度をどういうふうに考慮して、分担の割合、生活保持から、例えば扶助程度になるかという違いもありますので、子供の養育費とか監護費用に相当する部分と、それから、妻なり夫なり配偶者としての生活費の問題については、若干違うところもありますので、それについて配慮する必要はあるのではないかと思います。基本的には現在の監護費用の分担とか婚姻費用の分担については、その仕組みなり条文を維持しながら、場合によっては二重取りみたいなことについての調整みたいなことはあり得るし、大人の夫婦の問題と子供の問題というのはやはり分けて考えて、夫婦の何か有責性とかいろいろな問題と絡まないように、子供の部分はきちんと確保できるような配慮が必要だと思います。そこで、一番問題なのは、877条での扶養との関係は、少し整理し、監護費用と扶養との間は、請求権者とか請求の手続、それから算定とか義務の内容も含めてですけれども異なっていますので、少し整理をしていく必要があるのかなと思っております。
 ですから、第5の養育費、監護費用と婚姻費用の関係については、現状をベースとしながら、請求する当事者の問題もありますし、それから密接な関連性もあるので、できる限り現行規定を維持しつつ、要素ごとに、誰がどういう請求をしたときにどのようなものを分担したのかということを少し考えなければいけない、違いも配慮する必要があるだろうということで、皆さんの意見とほぼ同じです。もちろん、一括して、子供の養育費とか婚姻費用とかというのが、統一して条文を設けるべきだという考え方もあるかもしれませんけれども、私はどちらかというとサテライト型で、場面に応じて紛争を解決するための合理的な方法や規定として、婚姻費用分担の中に、監護の費用とか教育の費用とか子供の医療とか、そういうものが含まれている場合には、その要素をきちんと明確にしながら具体的な算定をし、請求ができるような仕組みというのは合理性があると思います。
○大村部会長 ありがとうございました。2点御意見を頂いたと思いますが、一つは、婚姻費用と養育費の関係については、共通の取扱いをすべき面も多いけれども、しかし、親子、夫婦の違いというのはやはりあるので、その点を勘案する必要があるという御意見だったかと思います。それからもう一つは、877条の扶養義務の問題と養育の問題ということで、これは前の概念整理の方の問題かもしれませんけれども、この点も整理しておく必要があるという御指摘を頂いたと理解をいたしました。

○武田委員

 ありがとうございます。親子ネット、武田です。今も棚村先生が触れていただきました第5に関してと、第7の氏の変更ということに関して、少し申し述べさせていただければと思います。
 今、棚村先生から、帰責するケースということに関して、配慮という表現をされたのだと思うのですけれども、非常に私どもの中ではよく報告されるケースでございます。一方の親が不貞による有責の場合ということで、私の理解では、権利の濫用として、婚姻費用でなく養育費相当という決定が出る場合、中には一部減額になるケース、全く考慮されないケースといろいろあると、そんな理解でおります。この事例の中でやはりよくお聞きするのが、いわゆるこの不貞行為が他方配偶者に発覚した後、すぐに子供を連れてどこかに行きまして、婚費請求、離婚請求がなされる、このようなケースがございます。とはいいながら、そういう状況で当然、不貞を理由とした損害賠償請求の訴訟を提起しても、判決が確定するまで優に1年以上掛かると、ではこの婚費の合意はどうするかというと、まずは算定表どおり合意するという形かなと思っています。一部の声として、養育費相当ならまだしも、なぜ生活保持義務まで負うのだという声もございます。したがいまして、養育費相当になるか否かは婚姻の破綻の程度とかとよく言われますけれども、個別に裁判官が判断していると理解しています。ただ、この決定の基準や帰責性が判断された後の、暫定的に払ったことになるのでしょうか、婚費の一部精算など、この辺も分かりやすくしていただきたいなというところを少し、この帰責性という点に関して述べさせていただきます。第5に関しては以上でございます。
 第7に関してです。氏の変更ということなのですが、氏の変更、これは申し上げるまでもなく、子供にとって非常にインパクトのあることなのだろうと思っています。非常に身近すぎるヒアリングで恐縮なのですけれども、子の氏の変更に関して、今、私の一緒に暮らしている高校生の長男、正にこういうことになりかねない経歴を持っている子供でございます。彼が言うには、名前を勝手に変えられるのは絶対嫌だと、小さい頃なら何も分からずに変えられてしまうと思うけれども、一定大きくなったときに、なぜ名前が変わったのだということに気付くと、その際、この別居に至ったタイミングの、全く僕たちの意見を聴いてくれなかったということを思い出すと。これは、15歳になったら、13歳になったら、自分の意思で変えられるからよいと、そういう問題ではないと、これが私の長男の意見でした。なので、そもそも氏の変更、原田先生からも、この氏というのが本当にこれから将来どう位置付けられるのかという話も当然あると思いますし、この変更ってそもそも誰のためにやるのでしょうか。家庭裁判所の許可を不要にした場合、子供の意見聴取というのはどこでどういう手続が残るのでしょうかということに対して、非常に懸念を感じています。部会資料には簡易なチェックとかという記載もありますけれども、やはりこの子供の意思に関しての手続、ここが具体的に明示されない状況で、手続としてこれを進めるのかということに関しては、消極的な立場であるということをここで述べさせていただきます。
○大村部会長 ありがとうございます。婚姻費用の問題については、有責性の問題と関わりがあるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。それから、氏の変更については、それが誰のための変更なのか、子供本人の意見を聴取する手続なしで家裁の許可を不要とすることについては消極的だという御意見として承りました。

○落合委員

 落合です。私、子の氏のことなのですけれども、今いろいろお話を伺いながら考えてきまして、家裁の許可を不要とするのに賛成です。それをはっきり申したいと思って今、また手を挙げました。しかし、お母さんの再婚の場合だけではなくて、離婚のときのもということにしたらいいと思うのです。氏なんて、軽い感じで変えられるようにした方がいいだろうということです。理由としては、親権という概念、これからどうするか分からないですけれども、親権者と同じ氏にするには家裁の許可は要らないとか、例えばそういうのはどうですか。そうすると、離婚した後、母親の氏になるのに何の問題もなく、母親が再婚するなら、またそのときに許可が要らなくなるわけですね。それで、15歳以上で、また変えたければ変えたらいいし、子供も15歳でなくて、もっと低い年齢でもいいと思うのですよ、12歳ぐらいとか、あるいはもっと低い年齢でも。子供が自分で変えたいと思ったらいいというようなことで、家裁の許可が要るなんていう大仰なことにしないという方がいいのではないかと思うのです。という意見です。
○大村部会長 ありがとうございます。全体として氏の変更についての規律を弱めるという方向で考えるというのがよいのではないかという御意見として伺いました。

○戒能委員

 最後の第7、その他でもよろしいですか。2巡目の議論に是非取り上げていただきたいということで、父母の離婚等に伴う子の養育に関する紛争における家裁の、DVや虐待とか、高葛藤ケースの対応の実際といいましょうか、その辺をもう少し詳しくお話を聞きたいし、議論をした方がいいのではないかという、これは私の要望です。
○大村部会長 ありがとうございました。DV等の場合も含めて、高葛藤の夫婦に対する家裁の対応の実情について、もう少し知りたいという御要望として承りました。
 今、戒能委員からは第7についての御発言がありましたけれども、他の委員幹事から、第7についての御意見もあれば、併せて頂きたいと思います。

○原田委員

 弁護士の原田です。家裁の氏の変更に関しては、チャットに今の状態を書かせていただいて、家裁の許可というのもほとんど有名無実化している現実があります。だから要らないというのか、だからあってもいいではないかというのは、少し意見が分かれるかもしれませんが、どちらにしても、今は子供が15歳になっていると、子供の名前で申立てをしますけれども、親が子供にこれを書いてと言ってやるような場合もありますし、逆に、子供が氏を変えたくないというから婚氏続称している人も多いという実態があると思います。
 それから、議論していない部分についてという点については、今、戒能委員がおっしゃったような、私も同意見なのですけれども、子供の意思をどう確認するかという点は、全ての手続に関連するとして一つの議題として議論されましたけれども、DVや高葛藤があるケースについて、それは別としてというような形で横に置かれてきたと思うのですけれども、虐待とかDVとかをどういう範囲で考えるのかという問題と、それから、それがあると誰がどう判断するのかという問題と、ではそれをどのように扱うのかという問題が、手続的な問題も含めて、あるのではないかと、そういうリスクがある場合をどのように扱うのかという点についての議論がやはり必要なのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。1点、家裁の許可について、実態についての御紹介ないし御意見を頂きました。それから、もう1点は、DV等について戒能委員の意見を受けて、議論する機会があった方がよいという御要望を頂きました。1点目、チャットで送っていただいたということなのですけれども、その内容について事務当局の方から、今、かいつまんで御紹介を頂きたいと思います。

○北村幹事

 今書き込んでいただいたのは、原田委員からは、氏の変更は家裁の許可が要るのですけれども、福岡では申立書の書式に当事者名を書いて、理由として父母の離婚にチェックを入れられれば無審尋で許可が出ていると、郵送で申し立てて1、2週間で結論が出る、東京家裁では1、2時間待てば決定をもらえるそうだということでの御意見を頂きました。
○大村部会長 ありがとうございました。今のような形で記録に残させていただきたいと思います。
 そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日用意いたしました部会資料11「残された論点の検討」という資料について、御意見を頂いたということにさせていただきたいと思います。これで1巡目の議論が終わりましたので、次回会議からは2巡目に入るということになるかと思います。事務局においては、これまでの議論を踏まえまして、2巡目に向けての論点を整理した資料を御用意いただくということになるかと思います。
 本日の審議はここまでということにさせていただきたいと思いますが、次回の議事日程等につきまして、事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。
○北村幹事 次回の日程は、令和4年2月22日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は改めて御連絡いたします。
 次回は、先ほど部会長から御指示いただきましたように、1巡目の議論を今日終えましたので、それを踏まえた資料というのを御準備させていただいて、2巡目の議論に入りたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。
 次回以降、2巡目の議論に入りたいと思っております。本日のところはこれで終了ということにさせていただきたいと思います。
 法制審議会家族法制部会の第11回会議を閉会させていただきます。
 本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。
-了-

 

 

 

 

 


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