法制審議会家族法制部会ウォッチ11(窪田委員と久保野幹事)
弁護士委員のリレーからの、民法研究者窪田先生のご登場✨
○窪田委員
窪田でございます。今日は委員,幹事の方々の御意見を伺いながら,申し上げる必要もないのかなと思っていたのですが,今,親権の概念の話も出ましたので,こういうふうに議論ができたらいいなということだけを簡単に申し上げたいと思っております。今回,資料1の第2の1(2)離婚後の子の養育の父母の関与,態様についてという形で法務省でまとめていただいていますが,この部分は,ともすると離婚後共同親権を認めるか,認めないかという形での議論として扱われがちであった部分ではないかと思います。そうした議論にならないような形で議論ができたらいいなというのが私自身の希望ですし,また,この資料でもそういうニュアンスが出ているのだろうと思います。そのことを少し確認しておきますと,先ほども原田委員からも触れられていましたが,親権という概念については,パッケージとして親権という概念を認めるのかどうなのか,これはそれほど普遍的な話ではないのだろうと思います。ですから,外国との比較で,日本のような形の制度ではなくて,離婚後共同親権が普通だといっても,そこで,本当に親権という概念を持っているのかどうなのか,あるいは親権という概念に類似するものを持っていても,それがどこまでの範囲を射程としているのか等々,随分違いがあります。今言ったような形での大ざっぱな議論はある意味で分かりやすいのですけれども,避けていくことが望ましいのだろうと思っております。そのためには,親権の内容とされている部分についても,やはり個別に具体的に分けていって,そして,この部分に関してはこういう行き方が望ましいのではないかというのをもう少し丁寧に見ていく必要があるのではないかと思います。
そして,それとの関係で,資料1の4ページの(4)子の養育に関する法的概念の整理についてという点についても,これは分かりやすく法律家以外の人に啓蒙的に概念を教えてあげるといった,そんな趣旨ではなくて,むしろ,ここでこういうことを検討していくにはこういう概念がやはり必要なのだとかということを,作業していきながら,それを明確にして伝えるということが必要なのだろうと思っているということです。
ごく簡単でございますけれども,以上でございます。
○大村部会長 ありがとうございました。資料に即した形で2点,御指摘を頂いたかと思います。3ページの(2)については,共同親権の是か否かという形でない議論の仕方があるだろう,その際には,親権という形で各種の権能をセットで考える必要は必ずしもないということも考慮に入れる必要がある。そうしたこととの関連で,4ページ(4)について,親権概念その他を整理するということですけれども,これまであるものを整理するというよりも,この議論の中で新たに位置付けをしていくということが必要ではない。こうした指摘かと思って伺いました。
久保野幹事
幹事でございますが,発言を失礼させていただきます。今,親権法の在り方
という御発言がございましたので,少し関連する感想を持っていましたので,発言をさせていただきたいと思いました。
まず,私は,先ほど自己紹介をさせていただきましたとおり,民法という分野を専攻していますけれども,立法との関係では,今回の参考資料1-8の研究会に参加させていただいていたのと,平成23年,2011年の親権法改正のときに研究会と法制審に参加しておりました。また,児童福祉法の改正に関わる検討会に参加させていただくというようなこともございます。そのような背景でございますけれども,親権法についての大きな視点の観点から一つと,あと,細かい点で少し気になっている点を3点,述べさせていただきます。
大きな点なのですけれども,平成23年改正というのも,もちろん子の養育についての法改正でありましたけれども,一般的規律の検討というものはできなかったわけでございまして,子の養育に関して一般的規律の検討の機会がこのように設けられているということ自体に非常に大きな期待を持っております。やや具体的に言いますと,平成23年というのは児童虐待防止に向けたという社会的問題に規定された検討であったわけでありまして,その点のある種,限界があったと思っています。実際に実現した改正は,既に理念的には子の利益のための親権に舵を切るものだったと思っておりまして,具体的には親権喪失の要件が,親権者の行為態様ではなくて,子の利益の観点からの基準に変えられたりですとか,820条に子の利益と入るなどしたという意味で,無視できない大きな意味を持っていたと思っているのですけれども,しかし,先ほどの制約があって,一般的に親権法ですとか子の養育に関する法を全体的に見直すということには至らなかったのだと思っています。そういう意味では,特別養子制度についての改正もやはり目的による制約があったのだろうと思っています。今回,子の利益に立脚した親権法というものを実現していくための重要な一歩になるのだと感じているところです。
その観点から,一つの視点としまして,必ずしも離婚というものに関連付けることだけではなく,より一般的に,子どもの養育ですとか親権行使に課題が生じているときに介入していく,しっかり法的に対応していくということについて,手当てができるということが大事ではないかと思います。もちろん前提としまして,先ほど,観念的にするのではなくて,具体的にどういう問題が生じていて,先ほどの小学校のようなケースにどう対応するかといったようなことを想定しながらということではありますけれども。
それで,今回,参考資料1-4を見ますと,外国では離婚のときに子どもの養育について決めるという必然的な結び付けというのはもうなくしている国も多いと紹介がありまして,それは私の理解によりますと,子どもの利益について問題が生じたときに的確にルールに基づいて介入するべきなのであって,離婚のときにというのは必然ではないというような発想なのだろうと思うのです。ただ,それはやはり柔軟に,問題が生じたときに親権行使なりに介入できる枠組みがあるからこそ,そういう制度にできるのだと思いますので,その点の一般的な親権行使ないし子の養育に関しての問題を解決する枠組みを作っていくということの重要性というのが,視点として申し上げたいことでありました。
この関係では,資料1の第2の1(4)の概念のところも大事だと思いますけれども,766条というものの位置付けが,766条は日本の民法の場合,離婚の章の中に入っていまして,親権の章には入っていないということをどう考えるかという辺りも,議論できるといいなと思っています。
あと細かい点で3点の方なのですが,一つが,養子との関係では,是非,連れ子養子について検討できるといいと思います。これこそ父母の婚姻状態との関係で子の立場が左右されるというものになっていると思いますので,しっかり議論ができたらなと思います。
2点目が,先ほどから,家族の中の暴力の問題に社会が関与していく必要性について指摘がありますけれども,児童保護法制で対処すべきものですとか,親権制限をしっかりやっていくべきケースといったものについては,先ほどから,どのようなケースを念頭に置くかということで議論されているものの一角ですけれども,そのような対処をしていくべきものというのはしっかり振り分けてと申しますか,児童保護法制等の枠組みでの介入の可能性も視野に入れて,一般的な親権の在り方を考えていきたいというふうに,2点目として,思います。
最後に,3点目ですが,養育費について先日,家族,社会と法学会というところでシンポジウムがありましたときに,生活保護との関係が実務家の方を起点に様々議論されておりまして,どこかの段階で社会保障法制との関係で御意見等を伺える機会があると有り難いと思います。
以上です。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございました。大きな検討の方向について,平成23年,2011年の親権法改正との関連で,あのときには,御指摘があったように,児童虐待関連の親権法の改正を行うということでしたが,今回はそのような制限なしに,より広く,さらに,離婚に限定することもない形で議論できたらよいのではないかという御指摘を頂きました。
個別の問題については,連れ子養子の問題,それから,他の関連領域との切り分けないし協同といったことについて御指摘を頂きました。児童保護法制ですとか社会保障の問題ですね。社会保障などについては,少し御意見を頂くこともあるべしといった御指摘があったかと思います。ありがとうございます。
平成23年の法改正が部分的だったのだとわかる
今回は本気、のはず!
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