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法制審議会家族法制部会第34回会議議事録読む10~窪田委員・落合委員・原田委員・小粥委員・北村幹事・赤石委員

共同親権止まらない

期待はしている

そういうかんじで、議事録読みもフィナーレです

○窪田委員 

神戸大学の窪田でございます。最初に確認しておきたいのですが、ここで述べられている親あるいは父母という概念は、生物学上の父母ではなくて、法的な意味での父母ということになろうと思います。生物学的な関係があったとしても、まだ認知がなされていないという場合には法的関係はないという形になりますし、嫡出否認がなされない場合には、嫡出推定による父が法的な父とされます。その点はまず確認して、共有した上で議論を進めていく必要があるのではないかと思います。
 落合先生の御主張は十分に分かるのですが、その上で、かみ合った議論になるかどうか分からないですが、一応、法律家の立場から説明させてください。これらの規定に関していうと、一つは、この1というのが新しく何かとんでもなく重い責任を課するということで提案されているというようなイメージの御発言でもあったのかなと思いますが、基本的には1の中で示されていること、人格の尊重という部分は必ずしも明確ではなかったと思うのですが、生活保持義務を負担するといったことについては従来からも、それが法的な根拠は何であるのかということについての議論はありましたが、しかし一般的にはそうではないかと考えられてきた内容を示したものだということです。一方で、未成熟の子あるいは未成年の子に対する養育義務あるいは扶養義務というのは一体何を根拠とするのかということについては、複数の法律構成、説明というのが考えられてきましたが、しかし必ずしも明確ではなかったという状況がありました。そういう点で、1の①、②というのは、少なくとも法律家の発想からすると、これまでなかったようなとんでもない責任を親に課することになるのだというものではなくて、従来不明確だったものを明確にする規律ということになるのではないかと思います。
 あと2点ということになるのですが、もう一つは、これは義務だけではなくて権利という側面も規定しろということであったのですが、特に①の方で権利ということを規定すると、後ろの方にもあるのですけれども、親権者でない父母が監護及び教育をする権利義務という中で権利を有するという形になると、親権とのすみ分けということができなくなってくるのだろうと思います。この規定は、むしろ親権の有無にかかわらず、親である以上、ここでいうのは法的な親である以上、一定の義務を負うのだということであるのだとすると、ここのところに権利を書くというのは、それほど簡単ではないのではないかと思います。
 それからもう一つ、最後にということになるのですが、落合先生から御指摘のあったかなりの部分というのは、身分関係、親族関係に基づく、ここでいうと親の子に対する扶養という関係と、社会保障との関係ということになるのだろうと思います。この点は従来からも、親族間の扶養義務と社会保障がどういうふうな関係に立つのかという点について争いがあるところだったと理解していますし、その問題というのは、この1を規定したことによって、常に社会保障に優先するのだ、優先したこういう形で義務を負わせるのだということに当然につながるわけではないということを前提として、議論をしていくべきではないかと思います。
 うまく議論がかみ合ったかどうか分からないのですが、一応、法律家の立場として説明させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、ここで挙げられていることというのは、子の人格の尊重に関しては、昨年末の法改正も受ける形で新たに付け加えられておりますけれども、他の点については、これまで認められてはいたけれども、明文の根拠がないというものを明文化するという趣旨なのだという御説明を頂きました。それから、父母については窪田委員の御説明のとおりで、法律上の父母ということを考えていて、例えば養父母というのもここに含まれるという前提で規定はできていると思います。そして、1の①に権利を付け加えるというのが落合委員の目的にかなうかどうか分からないと私が申し上げましたけれども、窪田委員がおっしゃったのもそれと同じことなのだろうと思います。ただ、ここで書かれている権利義務は当事者間での権利義務、父母とこどもの間での権利義務を想定して書かれておりますけれども、落合先生は、先ほど資料中のドイツの条文にも言及されておられたかと思いますけれども、国についての権利ということを言いたいということでおっしゃっていたのだろうと思いますが、それはこの建て付けとはうまくなじまないところがある、うまくなじまないということを前提に窪田委員が発言されたということなのではないかと思って、承りました。
 落合委員、取りあえず以上のようなお答えになります。

ま、法律家としてのアンサー

○落合委員

 ありがとうございます。それなら、私の懸念を持たなくていいような文言というのを是非、プロの方から提案してください。ここではなじまないというような言い方だけではなくて、何とかうまい工夫を提案していただけないでしょうか。それで納得できたら、私も安心してここの委員の一員としてこれを提案できると思うのですけれども、既に言われていることだから、そんな大げさなことではないとおっしゃるなら、要らないのではないですか、今までどおりでいいのではないですか、とも思いますだから、あえて入れたいのだったら、やはりかなり目立つことだと思いますので、私が言うような懸念を持つ人がいないように、これは日本国が家族に責任を負わせようとしてこれを付けたのだとみんなが思わないで済むような、いい文言を是非提案してください。それを伺って納得したら、私も賛成します
○大村部会長 御意見として承りましたけれども、窪田委員を始めとする方々は、この文言で落合委員の言っているようなことが導かれるわけではないという御理解をされているということなのだと思います。ただ、落合委員がおっしゃっているような懸念を持たれる方というのはいらっしゃるだろうと思います。このことはこの部会の中でもずっと議論をされてきたことであって、今回、離婚後の養育について一定の規定を民法に置くと、それでおしまいかというと、そういうことではなくて、それ以外に様々なサポートが必要である、これは直前に水野委員がおっしゃっていたことですけれども、そういうことを皆さんは意識として共有されている、その上でこういう提案されているということではないかと思っております。ただ、御懸念が表明されたということは御意見として賜っておきたいと思います。

国家と親の関係性、大事な話してる!

○落合委員

 ゴシックに書かれていないと心配です。幾ら皆で共有しているとか言っても、これの(注)のところに書かれていることでは弱いのだというような意見も今日、出ていましたよね。ですから、やはりゴシックのところに反映される形で心配のないように書かれてほしいと思うのです。私が言ったような懸念を持つ人もいるとおっしゃいましたけれども、もう一つは、私が心配するような方向で利用する人もいるだろうということなのです。利用したい人が既にいるのではないのですか、それに押されてこの条文を入れるのではないのですよね、という辺りを、私は心配しています。だから、そういう意図で使われないような条文にしてください。
○大村部会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
 そのほかにはいかがでしょうか。

利権??

○原田委員

 1②ですけれども、人格を尊重するというのはいいと思うのですが、協力というところが、これは補足説明を見ると、子に対するDVとか虐待とか、そういうことが主に考えられているようには見えますが、協力しなければならないというのはフレンドリーペアレントルールに通じるのではないかという懸念も出されていましたので、そこはもう少し考える必要があるかなと思います。これをなくした方がいいのかどうかというのは、私はまだ確定的に言えないのですけれども、そういう意見が私に言ってほしいということで出てきておりましたので、考えていただきたいと思います。
 それと、子の利益というのが何なのかということについて、非常に抽象的な概念で、その時々によって違うのかもしれませんが、DVや虐待を排除するためにはどうしたらいいかということを考える上では、例えば8ページの3行目のところで、このような一般的な父母の人格尊重義務の規律に加えて、DV事案に対応するための更なる規律を設けるべきかについて、というところがありますが、それの一つとして、子の利益というのは子の安全と安心というのが非常に重要な要素であるということを明記していただきたいと思います。例えば子の安全、安心というのは監護親がDVや虐待を受けないということによって、あるいは父母間の紛争がこどもの前で激化しないということによって、こどもが安心できるということがあるので、子の安全と安心を含むか、中心としたとか、子の利益にそういう形容詞を入れることによって、8の3行目以下のところを表すことができるのではないかと考えます。
○大村部会長 ありがとうございます。1②の基本的な考え方については賛成だと受け止めさせていただきましたけれども、協力しなければならないという文言ですとか、あるいはその子の利益のためにというところについて、もう少し工夫の余地がないかという御意見として承っておきたいと思います。それでいいですか。
 ほかにはいかがでしょうか。

やっぱり、フレンドリーペアレントルールが盛り込まれてる?!

○小粥委員

 事務局へのお尋ねになるのですけれども、一つは、この部会資料34-2の提案というのは、できたばかりの民法第821条の改正を含むことになるのだろうかということが一つ目のお尋ねで、もう一つは、全然違うことなのですけれども、かつて私はこの部会で、こども家庭庁の方からお教えを請いたいということを申しましたけれども、その件についてはどうなっておるのかというのが二つ目のお尋ねでございます。
○大村部会長 ありがとうございます。御質問を二つ頂きました。第821条というのは、先ほど少し触れました昨年の立法に係る規定ということで、それとの調整はどうなるのかということについての御質問でした。それからもう1点は、こども家庭庁に関する御質問を前にしていただいたということでしたけれども、それはどうなっているのか、この2点を御質問いただきました。

こども家庭庁召喚?

○北村幹事

 事務当局でございます。1点目でございますけれども、まずこちらの本体が決まってから、どうするのかということを検討になるのかとは思っております。ただ、昨年改正していただいた条文、非常に大事な条文だとも思っておりますので、その点も踏まえながら、こちらのゴシックが固まって、検討するということになろうかと思っております。
 2点目については、なお検討中だと伺っております。
○大村部会長 ありがとうございます。
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、一通り御意見を頂けたようですので、これを一応まとめさせていただきたいと思います。1の①、②、それから2についてですけれども、2については特に大きな御異論はなかった、ただ、具体的にどうするか法技術的には考えなければいけない問題もあろうかと思います。それから、1の①については、子の意思というのを何らかの形で書き込むことはできないかという御意見を頂戴しました。1の②については、やはり子の利益、それから、協力という文言を少し直すことはできないかという御意見を頂戴しました。それから、落合委員からは文言上、これが親にのみ義務を課すという趣旨ではないのだということを示せるような工夫はできないのかという御要望を頂きました。こうした御要望を頂きましたけれども、そうしたものを含めて、更に事務当局の方で御検討を頂きたいと思っております。この部会資料34-2については、そういうまとめでよろしいでしょうか。

こども家庭庁検討中

○赤石委員

 申し訳ありません、部会資料34-2について、きちんと意見をまとめてこなかったので、次回お伝えできたらと思い、発言しなかったのですけれども、まとめと言われたので、少しだけ意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほど認知と共同親権のところの条項でも言ったのですけれども、父母の義務などの規律というところを考える上で、未婚のひとり親が認知した場合もここに当てはまるということをどういうふうに考えるのかというのは、少し課題がありそうな気がしております。自分のこどもはこの子ですというのを認知届出することが、それで責務が発生するということになるときに、一体この意識というのはどこで生まれるのだろうかとかいうことがあるので、少し考えて、またお伝えしたいと思っている意見表明です。申し訳ございません。
○大村部会長 ありがとうございます。今、この部会資料34-2について、取りあえずまとめて引き取らせていただきましたけれども、なお検討を頂く点もありますので、次回以降に他の部分と併せた形で資料等を用意していただくということになるのではないかと思いますが、それを検討する際に、また認知について、他の先ほど御指摘の部分と併せて御意見を頂戴するということになろうかと思いますが、そういうことでよろしいですか。
○赤石委員 はい。
○大村部会長 ということで、本日はここまでにさせていただきたいと思います。繰り返しになりますけれども、少し進行を急がせて申し訳なかったのですけれども、お陰様で部会資料34-2の最後まで御意見を頂戴するということができました。
 それでは、次回のスケジュール等について事務当局の方から御説明を頂きたいと思っております。
○北村幹事 事務当局でございます。次回の会議は、令和5年12月19日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までで予定しております。場所は改めて御連絡いたします。
 次回の会議では、たたき台(2)の御議論と本日の補足的な御議論も踏まえて、要綱案の取りまとめに向けた御議論をお願いしたいと考えております。次回会議に向けて、部会長とも御相談の上、頂いた御意見を踏まえて改めて整理した資料を準備させていただきたいと思ってございます。  
○大村部会長 ありがとうございます。次回のスケジュールは12月19日ということで御予定をお置きいただければ幸いです。
 それでは、法制審議会家族法制部会の第34回会議をこれで閉会させていただきます。
 本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。閉会いたします。
-了-

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