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法制審議会家族法制部会第32回会議議事録読み5~落合委員・佐野幹事

体験格差なんて問題にならないみたい


○落合委員 

委員の落合です。第2の1と2と3の全部について意見があります。今まで御発言されたことと重なることもあるのですけれども、確認のために簡単に申したいと思います。
 1(1)につきましては、石綿幹事がおっしゃったことと本当に重なるのですけれども、一応確認ということで申します。石綿幹事が御発言になる前、私はこのアの、他の一方が親権を行うことができないときというのに、赤石委員が挙げられたような無関心の例が入るのかどうかというのを聞きたいと思っていました。できないという表現があるので、どちらかというと、しないですよね、しないもできないと解釈されているのかというのを伺いたいと思っていまして、連絡が取れない人もここに入るのであれば、よいかなとは思うのですけれども、より明らかにしようとするのであったら、行うことができないとき、しないときとか、怠るときみたいなものを含めるということなのかもしれませんが、これも解釈で含められるのならば、結構だと思います。
 無関心になってしまう男親が多いという話を赤石委員がされたときに、少しだけ話がずれるのですけれども、私は江戸時代の人口学的な家族の分析をしているのですけれども、ひとり親でも、男親だけいる場合、女親だけいる場合を比べると、こどもの死亡率が違うのです。女親だけがいる場合は、二人親がいるのと死亡率は同じなのです。全然変わらないぐらい。しかし、男性の親しかいないときにはこどもが死ぬのです。どうしてこんなに違うのだろうといろいろ考えていましたけれども、私は基本的に育児に関わる態度は男女平等であると考えたいと思っていますけれども、それだけ無関心になる人がいるというと、その違いもあるのかなとも思いました。もちろん江戸時代と今と全然条件が違いますから、今についてそういう調査はありませんので何とも言えませんが、少し余談でした、すみません。
 それから、赤石委員からウを付けるという話がありましたが、それは私もやはり少し無理があるのではないかと思います。同意できないときというのを入れたら、何も共同でしないで済んでしまうというか、構成上やはり無理があると思うのです。そのときに例に挙げられていた、大学に進学させるかという話で、片方の親が進学に反対だったらこどもは大学に行けないのかというと、それはものすごいこどもの人権侵害だと思います。両方の親が大学に行くのに反対していたって、こどもは行ったらいいではないですか。それを保障するだけの奨学金とかが別にあるべきで、だから、そういう議論をするべきところだと思いますので、家族で閉じない、親の決定のままにこどもはならなくていい、特にそんな年齢になった子は、というのを一言付け加えておきたいと思います。
 2につきましては、(6)が重要というのはもちろん皆様と意見は一緒です。(注)の方に書いてあるような内容を本文の方に入れるという小粥委員からの御提案に私も賛成します。
 それから、3の監護者のところなのですけれども、私はこれは、監護者の定めをしないときに運用上一体どうなっていくのかというのが、そちらのプロではないので、少し想像がしにくいところがあります。もしかしたら何かもめるのではないか、混乱するのではないかという心配もしないでもありませんで、ですから、一方を子の監護者とするとするのもありなのではないかともいくらか思います。あるいは監護分掌についての計画を定めるとか何か、もう少し決めていないと、何しろ今まで慣れていないことですから、混乱が起きるのではないかという心配もしております。原則としては監護者を決めなくてもやっていけると思うのですけれども、今までからの変更になって皆さんが混乱するということを考えると、そうですね、例えば一定期限を切ってというのは難しいかと思いますけれども、またそこについて議論が出てくるまで、監護者を決めるのを原則とするみたいなことがあってもいいかもしれないともいくらか思っております。
 それから、(注1)の【P】になっている第三者を子の監護者にするということについては、今御意見が出ていないのですけれども、ここも言っていいのですかね。私はこれは賛成なのです。法人類学の方の議論で、核家族を前提とした今の考え方はとてもヨーロッパ中心主義的で狭いという意見が、いろいろな角度から結構出ています。そうすると、核家族以外の親族が関わるような余地をはっきり書いておくというのは大事なのではないかと思って、ですから、この規律の創設について資料を出していただきましたけれども、私はこれを入れることに賛成です。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは1、2、3についてそれぞれ意見を頂きました。1は(1)のアないしウについての御意見で、石綿幹事が先ほど御指摘になったことと重なる御意見だったかと思います。それから2(6)、あるいは(注2)については皆さんの議論に賛成だということ、3については、監護者指定を必須としないということについて多少不安があるのではないか、混乱が生じないだろうかという御意見を頂きました。それから、ペンディングのところがございますけれども、ここについては積極的に考えたらいいのではないかという御意見を頂戴いたしました。

はっきりとツッコミいれている

○佐野幹事

 幹事の佐野です。佐野の方から意見を言わせていただきます。5点ありますけれども、最後に先ほど御指摘がありましたペーパーについて御説明させていただければと思っています。
 まず1点は、2(1)イの部分です。この急迫の事情というのは、一般的に受ける印象からはかなり狭くとられる可能性があるかと思います。今の実務の扱いとの関係、具体的にどのような事案がどのように扱われるのかという辺りをもう少し議論する必要があるのではないかと思っています。私は、先ほど原田委員から出ました、子の利益のために必要やむを得ない事情があるときというように、もう少し広く捉えられ得る文言が適当ではないかと考えています。それが1点です。
 それから、2番目、第2の2(1)ですけれども、(注1)で、親権者の指定の審判又は調停の申立てを、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができないとすることについては賛成いたします。弁護士会で議論したときには、相手方の取下げ同意でもよいのではないかという意見もありました。しかし、やはりDV事案などで取下げ圧力が掛かるというケースもないわけではないですので、取下げが真意に基づくものなのかを確認する、チェックする必要性からは、家庭裁判所の許可ということでよろしいのではないかと思いますので、賛成いたします。
 それから、2(6)です。これも先ほどから議論がありましたけれども、やはり共同決定で一番こどもの生活に多大な影響を及ぼすのは、父母にて決定ができない結果、決定が遅延するという場合になります。こどもの時間というのは大人の時間と異なり、遅延そのものの影響が非常に人生にとって多大となります。そもそもこの裁判所で決めるという事案では父母の合意がないケースですので、そういったケースを共同親権にすることは、もともと慎重に判断されるべきではないかというのは前にも申し上げたとおりです。仮に共同親権とした場合には再三法廷に決定を持ち込まれるようになり得るような高葛藤事案は、(6)の「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害する」ものとして、適切に共同親権から排除されることは必要ではないかと思います。そういう趣旨であれば、この規定ぶりに賛成ということになります。
 また、「また」以下の部分ですが、これは原則、例外の例外を定めるものではなくて、つまり、それを立証しなければ共同になるというものではなく、飽くまで共同にすべきではないものを排除するという趣旨が明確になるような規定ぶりにしていただきたいと思います。
 それから、3(4)、ここの趣旨なのですが、親権を行う父母で監護者と指定されなかった者についても、1(2)で、一応、日常の行為を行うことができるとなっているのではないかと思われます。そうだとすると、「上記1の規律に従って監護及び教育に関する日常の行為を行うことができる」というよりは、むしろ日常の行為を行うにつき、子の監護をすべき者の行為を妨げてはならないというような規定にしていただいた方が分かりやすいのではないかと思います。そういったような規定ぶりは児童福祉法47条の4項でもありますので、そういう形の方が、より趣旨が明確になるのではないかと思います。
 その上で、弁護士委員の方からペーパーを出させていただきました、親以外の第三者による子の監護に関する規律の創設について、少し御説明させていただきたいと思います。こちらは弁護士委員の連名で意見を出させていただきました。その趣旨ですけれども、子の利益のために必要があると認めるときには、現に監護をしている子の親族を、当該子の親族の請求によって、家庭裁判所は、第三者を監護者に指定することができるようにするというものになります。
 この部会の議論検討内容というのは、日弁連内でもなかなか意見の集約が難しいのですけれども、この規律の必要性につきましては、中間試案時においても意見の集約が図れていたところです。それだけ実務的な必要性が高いと感じています。なお、中間試案に対する日弁連意見書のときには、その要件について、「親権者の親権の行使が不適当であったり、監護体制が整っていなかったりするなどにより、親権者に子を監護させると子の健全な成長を阻害するおそれが認められること」との考え方を示しておりましたけれども、むしろ今回、より明確な要件で濫用的申立ての余地を狭めつつ、親が親権を行使してこなかったというネグレクト事案、親権の消極的な濫用事案を、子の利益の観点からきちんと対象として取り込むという観点から、現に監護をしている親族に申立権者を限定するという方向で御提案をさせていただきました。
 委員、幹事の皆様が民事法の御専門の先生方だけではありませんので、少し背景を説明させていただけたらと思います。児童相談所による児童虐待相談件数というのは、毎年過去最高を記録していることは皆さん御存じかと思います。現実にはネグレクト、虐待事案で児童相談所の関与前に既に親族が監護していたり、児相が関与して、親族方なら家庭復帰をさせられるということで、親族が、子を監護するという条件で家庭復帰をし、親族が子を監護している事案というのが少なからずあります。その一例が、資料の方で提示させていただきました、東京弁護士会の「子どもの人権110番」の相談件数としても表れているわけですけれども、毎月100件ほど入ってくる相談の中でコンスタントに2件ぐらいはそういった事案が入ってきています。私たち弁護士、実務家が比較的よくぶつかる事案といってもよいかと思います。
 弁護士、実務家の間で比較的共有できている感覚として申し上げると、典型例というのは、親のネグレクトとか不適切監護によってこどもが親族方で監護されてきていて、そちらで安全・安心な生活をしてきたところ、突然、親権者が子と一緒に生活すると言って引渡しを求めてくるといったような事案になります。親権者が再婚をきっかけに子を引き取ると言ってくる事案も結構あるという印象です。
 こどもの側からすれば、慣れ親しんで安心できる親族の下から突然引き離されて、虐待されていたり、それまで養育放棄されてきたにもかかわらず、その親と突然一緒に暮らすということを求められることになります。ましてや全く知らない親の配偶者との生活を共にすることを求められることもあります。これをこどもが激しく拒否するというような事案も少なくありません。こうした子の心情に配慮し、第三者監護者の方から子の監護を当面維持したいという形で相談等をしてくることになります。
 こういう場合に従前、家庭裁判所の実務としては、子の利益の観点も踏まえて、現実的必要性から、現行の民法766条1項の適用又は類推適用によって、第三者である監護者申立てによって当該第三者を子の監護者として指定することを行ってきました。ところが、令和3年3月29日の最高裁の決定は、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が家庭裁判所に上記事項を求めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はないと判示し、この766条適用又は類推適用による第三者による監護者指定の申立てを否定しました。結果、現在、親権者が第三者に子の監護を委ねることを反対する場合には、この手段をとる道が事実上閉ざされたという状況にあります。
 確かに平成23年の民法改正で、親権喪失には至らない比較的程度の軽い事案などに、一定期間の親権制限が必要に応じて適切にできるようにと、親権停止の制度が創設されました。しかし、既に監護者となっている者は親権者の実方親族であることが多く、一定期間であっても実子である親権者の親権を完全に剥奪する、つまり親権者に取って代わることを望んでいるというわけではなくて、子と親権者が円滑に関係できるようになるまでの当面の監護の維持と、その間の親権者との関係調整を望んでいるという場合が多くあります。その間に子も成長するため、親子関係を客観的に見ることができるようになることもあります。ところが、親権停止は一時的とはいえ親権を完全に剥奪する大きな効果を持つ制度であり、審理の中で、親権者の親権行使の困難さとか不適当であることで子の利益を害することを主張立証していかなければいけないために、親権者と監護者である親族との関係、さらには親子関係の悪化すら招きかねず、結局、子の利益に反する結果になりかねないという構造があります。また、親権制限が戸籍に記載されるということもその利用をちゅうちょさせる一因となっています。
 代理人の側からすると、親権停止が創設された趣旨からすれば、親権者が親権を行使していないような場合についても、行使をしてこなかった事情や子の状況に鑑み、停止が子の利益の観点から柔軟に認められるべきであろうと思いますが、そのような事例で、なかなか親権停止の要件である、親権行使の困難さ又は不適当であることにより子の利益を害するものとして家庭裁判所になかなか認めてもらいにくいという実感を持っております。実際、先の令和3年の最高裁の事案ですけれども、こちらも監護者指定の審判の前に、監護していた祖母が親権停止を申し立てたけれども、それが認められなかったため、監護者指定の審判を申し立てるに至ったということのようです。
 他方、そのような事案では社会的養護、例えば親族里親の枠組みを活用すべきという御指摘がこの部会でもあったかと思います。ただ、そもそも親族による監護が既になされており、こどもがそこで安全に生活している事案では、児童相談所は介入する契機がありません。親権者が親族に対して引渡しを法的に求めてきたときには、児相としては、もう裁判所の判断によるべきものとして、その段階では更に介入を控えることになります。児相が介入して、親権者方ではなくて親族方に家庭復帰をさせた事案であっても、現状、親族里親委託はとられていません。そのような親族方家庭復帰の事案は事実上、親権者の同意をもって親族によって監護委託をされているにすぎないため、親権者の翻意によって子の安心・安全な生活が容易に脅かされる状況にあります。その結果、児相からは親族方では守り切れないとして、こどもは結果的には施設にて生活することを余儀なくされてしまいます。児相が介入した事案において、児相が親族監護であれば家庭復帰させるような事案では、親族里親を積極的に活用するというような現実があれば、それが第三者監護者指定に代替し得る可能性はあるとは思いますけれども、そうではない現状や、児相介入前から親族が監護している事案についてはそもそも児相が関与しないという現実に照らすと、やはり第三者の監護を法的に裏付けるために、第三者への監護者指定というのが必要になります。
 こういった実情を踏まえた上で、現在、法令上の根拠も存しないものとして、事実上申立てができないという状況に追い込まれている監護者指定について、この機会に法令上の根拠として新設することを御検討いただきたいという趣旨で、意見を出させていただきました。その際、申立権者、監護者となり得る第三者の範囲は、明確化かつ濫用予防という意味で、現に監護をしている者、親族と限定した上で、その効果についても、児童福祉法上の児相長や施設長の権限と同様、監護教育に関し子の福祉のために必要な措置をとることができるという範囲にとどめるものとして、親権者の権限の制約の限度を最小限にするという御提案でございます。
○大村部会長 ありがとうございます。佐野幹事から、5点ということでしたが、最後の1点は池田委員、佐野幹事、原田委員の連名で提出されている資料についての御提案と御説明ということとして承りました。それ以前の4点について、第1点と第3点は、既に出ている意見と同趣旨の御発言だったかと思います。第2点は、2(1)について、(注1)の取下げに関する規律に賛成という御意見、それから第4点は、3(4)について文言を整理した方がいいのではないかという御意見だったと理解を致しました。
 その後、菅原委員、青竹幹事、それから最高裁、柿本委員ということで、オンラインの四方からお手が挙がっておりますので、御意見を頂いて、原田委員に行きますので、待っていてください。ということで、菅原委員、お願いします。

第三者の監護者論ね
これが監護者指定の廃止も躊躇させる混乱の原因か

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