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法制審議会家族法制部会第34回会議議事録読む8~水野委員・菅原委員・棚村委員

コツはある

ごきげんな親が有利

そんなことを盛り込めそうな共同親権合宿はもうすぐ

議事録読み進めとく

○水野委員

 委員の水野です。ありがとうございます。池田委員が子の意見表明権について発言なさいましたので、また自動的に、すみません、私も一言、申し上げます。こどもの意見を書き込むことは本当に危ないと思っております。将来的にこどもが責任を感じてしまうことも深刻な弊害ですが、それだけではなしに、こどもが聴かれる前に両親がどういう働き掛けをするかということまで考えますと、こどもの意見で決まるという枠組みを作ってしまうことは非常に危ないと思います。もちろんこどもの様子、こどもが何を望んでいるかということは慎重に確実に把握して理解しなくてはならないのですけれども、それは条文に書くことではないだろうと思います。落合委員がこどもの代理人のことをおっしゃいましたけれども、オーストラリア法と比較いたしますと、私はまた少し違う感想でして、確かに揺れ戻しはあったのですけれども、それでもやはり共同親権についてこれだけ積極的な線を保っているのかというのが私の改めての読後感でした。それから、同時に共同親権かどうかと言う点だけではなくて、背景にある様々な行政的な支援、育児支援がオーストラリア法は日本の現状とは全然違っていますので、そういうところまで全体像を考えて比較しないといけないと思います。
 そして、この改正法の全体像につきましては、沖野委員が最初にきれいに説明してくださいました枠組みの理解に、私も賛成です。原田委員が急迫性の要件として、時的なもののほかに暴力、つまり具体的なモラハラのような例を挙げられて、そして、それがこういう事態では救われないとおっしゃったわけですけれども、そういう事態が本当に非常に悲惨であり深刻であることは確かで、日々それと闘っていらっしゃる原田委員の御意見は説得力があると思います。ただ、この事態については、こういう事態そのものを問題にする姿勢から、対応する設計を考えなければならないと思います。一番問題なところであることは確かなのですけれども、でも、ここで議論しているのは、親権行使一般についての規定です。今までの議論を伺っておりますと、念頭に置かれているのがもっぱら一定の場合、つまりDVから母が必死で逃げて、そしてこどもを一人で育てている場合というのを想定した上で議論をされているような気がします。逆に、少数派であるかもしれませんが、DV父に子を取り上げられて追い出された母もいるはずです
 拒否権という言葉が取り上げられておりますけれど、私は前回の会議で拒否権という言葉を使った自覚がございます。このような場面で、こどもの利益に資するのは、DVから逃げた母が単独で親権行使している状態を想定して、その状態を安全に保つことが一番こどもの福祉だと断定する議論があるわけですけれども、当然のことながら、そうではない事態もあるわけで、条文を書くときには、全体的にあらゆる場合を配慮に入れて書かなくてはならないだろうと思います。
 もちろん家族の自律と家族に対する国家介入との関係は永遠の二律背反で、そこは非常に矛盾に満ちている微妙なところなのですけれども、日本では家族内の暴力に対する公的な介入が足りなさすぎることは、これは誰も否定しないだろうと思います。そして、その限界を、戒能委員は何とかこの条文の文言で突破できないかと問題設定をされたのですが、私は条文の文言だけではどう書いても難しいだろうと思います。ここは何とか実務によって突破してもらいたいと思うのです。この会議にはこども家庭庁をはじめ行政担当官も参加しておられます。家庭裁判所による支援のイメージも、やはり今の家庭裁判所のイメージを固定化して、それで議論を進めている硬直性が見られるような気がいたします。
 最近、家庭裁判所物語という戦後の家庭裁判所の創設期からのルポルタージュを読んだせいもあるのかもしれないですけれども、そこに固有名詞で出てくる家庭裁判所の判事たちがどれほど今の家庭裁判所を作り上げるまでに努力をされたか、そして、戦後の膨大な数の戦災孤児たちがいるような状況から、今の家庭裁判所まで、どうやって形作られていったかということを考えますと、今の家庭裁判所を固定化して考える必要はないのだと思います。児童相談所との協力とか、それから判事や家庭裁判所調査官の増員なども図ることによって、託された任務をきっと果たしてくださるような突破口を開いてくださるのではないでしょうか。ここでいろいろ現状を固定化して発想するよりも、やはり実務によってこの限界を突破してもらいたいと思います。そして、そういう突破口に対して、今御提案になっている文言は、十分その力になるものだと思います。むしろそれを下手にいじりますと、たとえば暴力などを書き込むと、そのこと自体の立証で弊害がむしろ大きくなってしまうこともあり得るような気がします。暴力対応は現状よりずっと幅広く行われなくてはならず、そういう救われるべき場合が救われないことがないように、(注)などでは一生懸命書き込んでいただきたいと思うのですが、文言そのものは原案のものが妥当であるという印象を持っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは幾つか御指摘を頂きました。参考資料へのコメントもありましたが、それを置くとして、子の意思について池田委員から御発言がありましたので、それについて、子の意思で決まるということは避けなければいけない、条文に書くことではないという御意見を頂きました。他の点については、部会資料32-1で出ている現在の原案に当たるものの文言を維持した上で、家庭裁判所や児童相談所、その他様々な機関の協力によってこの文言を運用していくということを考えるべきではないか、こうした御意見を頂いたと受け止めております。ありがとうございます。

さすが研究者の視点!

○菅原委員

 ありがとうございます。菅原でございます。では、手短にお話しいたします。
 まず、1番ですけれども、基本的に事務局がまとめてくださったたたき台の文言に賛成しております。今日の御議論でもいろいろ思うところはありましたが、特にイの子の利益のため急迫の事情があるときという部分で、子の利益というところをもちろん重視していただきたいと思います。
 それに連動しまして、4ページの急迫の事情の意義というところを書いてくださっているところで、以前の会議でも少し、この急迫の事情のところの説明は丁寧にする必要があるのではないかという意見を述べさせていただいておりましたが、今回、最後の方に具体的な例を幾つか盛り込んでくださっております。ここのところは、補足として最後まで残るとしますと、大変重要であると今日も感じておりまして、例えば順番として、一番最初に入学試験と出ているのですけれども、もちろんそれも重要なのですが、やはり私たちがたくさん議論してきたDVや虐待というのを最初に挙げていただいて、そして今日、北村幹事の方から少し触れられた医療契約のことも非常に重要な問題になりますので、医療契約のこともここに入れていただくなど、急迫の事情に関する具体的な例示についてもう少し丁寧に漏れなく網羅していただけると、特に法学以外の者にとってみれば、より分かりやすくなるのではないかと思いました。
 それから、もう1点、2の子の意思の尊重という点については、私自身、こどもの発達心理を研究している者として、こどもの最善の利益の観点からいつも一番大事に考えているところで、離婚もこどもは関係者であって意思や心情を重視されるべきであるという立場なのですけれども、これまでの実体法の先生方の御議論をじっくり聞かせていただきまして、子の意思について民法中に記載することの危険性について理解できましたので、既に手続法の中に盛り込まれている子どもの心情・意向の確認や尊重についてそれを充実するという方向に賛成します。
 そういう意味では、家庭裁判所のこどもに関する調査の力量アップということもとても重要になりますし、またこどもの手続き代理人という制度も日本の中でももっと充実させていくことが必要であると思います。両親間のDVのアセスメントもそうですが、離婚に関係する様々な調査の能力やスキルアップが今後さらに大事になってくると思います。
 先ほど池田委員の方から少しお話がありましたが、部会資料34-2の方で議論されることになると思うのですけれども、そもそも父母の親としての責務として子の人格を尊重することが重要であり、それぞれの親が自分の利益のためにこどもにいろいろな発言を託したり強制したりするというのは、もうそれ自体が子どもの人格尊重の観点から大きな問題になってしまいますので、そのようなリスクを避けるという意味で、ここに盛り込まれるということには私も反対したいと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。菅原委員からは1と2について御意見を頂きました。1については、たたき台とおっしゃいましたが、部会資料32-1の案に賛成するということで、ただ、補足説明の方について御要望を頂きました。2について、子の意思というのは重要だという前提に立たれつつ、弊害があるだろうという意見があるので、手続法での対応もなされていることであるし、池田委員が御指摘になった次の部会資料34-2のところでまた考えるということもあるだろう、こうした御意見を頂戴いたしました。

心理学の観点からも!

○棚村委員

 早稲田大学の棚村です。皆さんのいろいろな御意見をまた聞かせていただいて、私としては基本的には民法の先生方、特に、沖野先生からの御意見に近い立場でして、また、事務当局の示した原案のところに賛成をしたいと思っています。34-1の部会資料についてですけれども、五つほど簡単に申させていただきたいと思います。長らく法制審議会での法改正の議論にこれまで関わらせていただいて、どういう手順で、どういう目的でどんな形で考えていったらいいかということにつきまして、三つほど考えてまいりました。先ほどから各委員や幹事の皆さんから出てきたように、まず第1はその手順ですけれども、法改正については、立法の目的が正当なものか、それから2番目に、その目的達成のための手段、方法が相当かどうか、そして、最後にその立法によってどういう結果、影響がもたらされるか、この3点から議論をするということを行っていまいりました。
 2番目に、法改正や立法の目的で、大きく分けますと、ある一定の理念を実現するために立法を行う理念実現型というのがございます。それから、実務とか裁判ではもうある程度ルールというかが示されていて、実務でやっていることを追認するというのですか、確認をするという実務確認型という立法もございます。それから、規律が曖昧なために、もう少し明確にしたいという規律明確型というものもあります。そして、手続とか制度の利用を促進したいということで、手続制度利用促進型という類型があります。そのほかにも政策形成型とか立法があり得るのですが、ある意味では、主としてこの四つの型があります。今回の改正で議論させていただいているところは、それぞれの論点ごとに、理念実現型、実務追認型、規律明確型、手続制度利用促進型など、いろいろな立法の目的を達成しようとする各類型が併存している御提案であると思っています。
 3番目に、この当てはめのところで、やはり一番議論が出てしまっているのは、離婚後の共同親権の導入の可否についてです。現行民法の離婚後の単独親権というものを改めて共同親権の可能性とかその選択肢を入れるというのは、ある意味では新しい制度を導入すること、先ほどの説明で言うと、理念実現型というもので、その理念そのものに対してもいろいろ御意見があるかと思いますけれども、慎重にとか時間を掛けてとか、あるいは反対ももちろんあるということも今日の議論を伺っていても明らかです。
 しかしながら、重要なのは今、法改正の手順とか目的ということを踏まえた上で、この改革の提案というものが理念の面でどうなのだろうか、運用した場合にどういうところに注意しなければいけないのか、それから、この制度や立法を本当に機能させるために支援の面でどんなものが必要かという具体的な当てはめの部分では、正にその理念がどういうもので、運用がどうなって、改正の結果どういう影響がでてくるのか、果たして動かせるのだろうか、それから、そのための支援では何が必要かということで、大きく分けると、以上のこれまでの手順や方法で、慎重かつ丁寧な議論をさせてきていただいてきたと思うのです。もちろん完璧ではありませんけれども、十分な議論が相当程度尽くされてきたことは事実です。大きな方向性の議論の中で、最初の共同親権を離婚後も入れるか入れないか、親権とか監護という用語とか概念もある程度明確にしながらやっていくということで、大きな判断枠組み、具体的な規律の仕方、それから、事務局が提案をされていることの内容や当否についても、民法の研究者だけでなく、さまざまな立場や専門の委員・幹事の皆様が、これまでの法制審議会の部会と比べましても、時間、回数だけでなく、ヒアリングや調査の範囲や程度でも、かなりの程度議論を尽くすことができたのではないかと思っています。
 4番目に、特にオーストラリア法の改正のことで、外国法の参照の仕方とか取り入れ方ですけれども、やはり大陸法と英米法の違いがあって、落合委員からもありましたけれども、具体的にどこまで規律に盛り込んでいくか、どこからは解釈運用に任せるべきかということについて難しい問題があります。また、民法それ自体としても体系性とか、ほかの法律との整合性とか、民法の内部での統一性ということを考えると、民法改正には専門的、技術的な問題があるということを指摘させていただきたいと思うのです。
 最後に、5番目のところですけれども、委員、幹事の御意見をいろいろ聞いておりますと、今まで議論してきた効果とか運用とか、要するに理念もそうですし、運用面でも支援面でもいろいろな問題があるという指摘がさまざまな角度からされてきました。ただ、私どもは、ゴシックの対象が正に改正すべきかどうかの議論の本丸というのですか、論点整理とかこれまでの経緯を述べていただいて、それで補足的検討とか説明というところは、その表現振りは、ある意味では今後、立法が実現したりしたときの参考にはなるので、重要なのですけれども、私たちはやはりゴシックで提案をされている部分が妥当かどうかということに議論を絞ってゆくべきだと思うのです。論点整理や補足説明のところで妥当かどうか、表現が適切でないという御意見は承り参考にさせていただくけれど、ゴシックの部分での要綱案の議論にしていただければ幸いです。しかも、問題があるとか、賛成できないだけでなく、具体的に事務局提案をどのように修正するかという御意見を述べていただきたいと思います。今後は以上に述べた形で、時間の制約もありますので、検討を絞っていきたいと考えております。
 私自身は、民法の多くの先生がおっしゃっていたような形で、部会資料34-1で御提案され、論点として絞られて議論しているところについても、一つ一つ言うと、また同じことの繰り返しになりますので、基本的には沖野委員がおっしゃったように、第三者の監護者指定については、やはり必要性を非常に感じて、私自身もそういう論文を書いたりしてきたのですけれども、要件と効果の絞り込みということをしないと、条文にする場合には、なお問題もいろいろあるので、基本的には事務局の御提案を支持する考えであるということです。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは冒頭に、原案、部会資料32-1で示されたものに賛成だということで、最後におっしゃったのは、第三者の監護者指定は必要だとは思うけれども、立法するのはかなり難しいという御意見をおっしゃっていただきました。併せて、法改正の在り方について一般論と、それから、これまでの作業についての評価を述べていただき、議論の対象についても確認をしていただいたと理解を致しました。
 それから、原田委員でしたね。短くお願いします。

拙速ではないってことよね

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